2002第11戦フランスGP

ミヒャ最多タイ5度の王座決める

2002年7月21日 マニクール

(1/43モデルカーの2001-2002を撮影)

<フリー走行>フィジコ大クラッシュ

土曜フリー走行でフィジケラが大クラッシュ。右コーナーへのアプローチでフロントウィングが外れ、それに乗っかったまま直進、タイヤバリアに激突した。本人は無事だったが、大事をとって予選を欠場。

ジョーダンは前戦で琢磨のノーズが外れるなど、強度の問題が多い。

<予選>モン5連続PP、年間最多まであと2

マニクールはセクター1が高速コーナーと長いストレート、セクター2が2つの低速ヘアピン、セクター3が中速シケイン2つからなる。

モントーヤPPのポイントはTVで言われていたセクター3ではなく、実はセクター1だった。

0.023秒差でミヒャ下す

上位6人のタイムアタック推移。

前戦までモントーヤは最終アタックの大逆転を演じて来たが、今回は最初から予選をリードした。2度目のアタックこそM・シューマッハに遅れたが、他の3度はトップだった。1度目のタイムから最終アタックまで0.729秒縮めた。

M・シューマッハは1回目のアタックの最終シケインでコースアウトしたが、本人いわく3度目と最終アタックでもミスしてしまった。予選一発に賭けるモントーヤの集中力がまさった。

今回健闘したのはライコネン。バリチェロと接戦を演じ、R・シューマッハを抑えて自身最高の4番グリッドを得た。これでクルサードとは7勝4敗になった。

R・シューマッハはアタックのたびにチームメイトとの差が広がった。最適なセッティングをみつけられず、最終アタックも失敗した。モントーヤに5連敗し、4勝7敗となった。

予選においては3強6台が0.5秒差の中に入った。マクラーレンは前戦で1秒以上あけられた差を挽回してきている。

キミがセクター3でトップタイム

セクタータイムの各自ベストをモントーヤ(中央横軸)との差で比較。

M・シューマッハは2つの低速ヘアピンからなるセクター2で圧倒的な速さを見せたが、セクター1と3では劣った。

セクター1は高速右旋回コーナーの出口がポイント。長いストレートの初速に影響する。一方、セクター3は高速シケインの突っ込みがポイント。モントーヤは見事に決めた。モントーヤが尊敬するセナのPP記録(65)にM・シューマッハ(46)を近づけさせない。モントーヤこそセナの後継者かもしれない。

セクター3の最速はモントーヤではなく、ライコネンだった。ライコネンはセクター2も2番手と速かった。セクター1はメルセデスのパワー不足で劣るが、ドライビングで最もがんばったのはライコネンだった。
5戦連続PPのファン・パブロ・モントーヤ(コロンビア)。

ヨーロッパ0.009秒差、イギリス0.034秒差、フランス0.023秒差と僅差だが、これだけ続くと運だけとは言えない。

年間PP数では6回となり、M・シューマッハ3回の倍になった。あと2回とれば年間最多PPになれる。

モントーヤの狙いはセクター1

セクター別にモントーヤとM・シューマッハのタイム推移を見る。

セクター1はモントーヤが3度目と最終アタックでタイムアップを果たし、M・シューマッハよりも速くなった。これに対しM・シューマッハは横ばいだった。

モントーヤは後半にセクター1にポイントを絞って高速向けのセッティングを施してていったことがうかがえる。
セクター2はM・シューマッハの独壇場で、モントーヤは横ばいだった。モントーヤはFW24の特性から、低速ヘアピン2つからなるセクター2は捨てたものと見られる。

M・シューマッハ得意のセクター2だが、4度のタイムアタックで0.121秒しか上がっていない。ここで0.2秒以上、差を広げることができなかった。
セクター3ではモントーヤが2度目のアタックで0.287秒も改善した。4度目のアタックは少しダウンしている。モントーヤは後半、セクター3を腕でカバーした。

M・シューマッハは最初のアタックでコースアウトし、3度目と最終アタックでもミスしたと言った。どうもマニクールのセクター3が苦手なようだ。2001年(予選2位)は3番手、2000年(予選PP)は2番手に甘んじている。
M・シューマッハはセクター3でコースアウトするなどミスが目立った。PPでなくても勝てるが、第一人者としてPPを獲らねばという意地が焦りとなった。

今年チャンピオンになっても、年間最多PPをモントーヤに奪われれたらシャクだろう。過去2年連続最多勝・最多PPでの王座だった。

ちなみに、年間FL数では、前戦までM・シューマッハ、バリチェロ、モントーヤの3人が3回で並んでいる。

決勝は苦しいウィリアムズ、期待のマクラーレン

フリー走行初日は決勝のタイムペースを占うポイントになっている。初日前半(Free1.1)・後半(Free1.2)とも好調だったのはマクラーレン。これに対し伸び悩んだのはウィリアムズ。

初日前半は満タン時、後半は軽くなった時のタイムに相当する。満タン時はフェラーリもそれほど差がないが、軽くなってからはウィリアムズが1周で1.5〜2秒は離されることになりそうである。

日曜朝のウォームアップでは、フェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズの決勝での序列がはっきりと出た。路面温度31度とはいえ、フェラーリが速すぎる。ミシュランとしては、路面温度が45度に上昇することが頼みだ。

2001年ピットイン
M・シューマッハ 25,45周目
バリチェロ    21,36,54周目
クルサード    26,51周目
R・シューマッハ 24,44周目
モントーヤ    30,50周目

 

<決勝>ミヒャ王手一発決める

M・シューマッハがここでチャンピオンを決めるには、自身が優勝し、かつバリチェロ、モントーヤが3位以下、R・シューマッハが2位以下である。この条件は厳しいと思われた。

フォーメーションラップ バリチェロがスタートできない。2戦連続の悪夢。今度は発進できずDid Not Start。M・シューマッハ王座決定の4条件のうち、まず1つがクリアされた。

それにしても、なぜバリチェロばかりにトラブルがおこるのか。フェラーリはシューマッハ優先と疑われても仕方あるまい。

やや曇り、気温29度、路面温度40度。72周のレース開始。

スタート モントーヤが左に寄せ、1位を守った。

1コーナを回って、モントーヤ、M・シューマッハ、ライコネン、R・シューマッハの順。

後方では、琢磨がパニスに追突し、両者サンドトラップへ。

1周目 アデレイドヘアピン。3位ライコネンにR・シューマッハがアウトから仕掛けるが成らず。

2周目 1位モントーヤにM・シューマッハがアウトから仕掛ける。2台が交錯するスキに、3位ライコネンもうかがう。

このあと3台は接近戦だが小康状態。

9周目 ユーンがスピン。

10周目 マッサが2度目のドライブスルーペナルティ。1度目はフライング、2度目は白線を越えたというもの。

白線越えは、この日4人が犯した。まさかレース展開を大きく左右するとは・・・。

20周目 2位ミヒャがブレーキングで白煙を上げる。モントーヤの後ろでペースが上がらない。このことが後半の接戦を生むことになる。

ルノー勢が相次いで1回目のピットイン。上位陣もその時が近づく。

23周目 5位R・シューマッハが先にピットイン。

24周目 1位モントーヤも続く。8.4秒。

琢磨が最終コーナーでコースアウト、リタイヤ。リアが滑ってカウンターを当てているが、コントロールを失い、グラベルへ埋まる。オーバースピードが敗因。今回のGPはいいところなし。

25周目 M・シューマッハが1分15秒311のファステストラップを記録。

27周目 M・シューマッハがピットアウトでモントーヤの前に出る。

だが白線をまたいでしまった。

30周目 3位ライコネンが2位モントーヤを攻め立てる。フリー走行からの流れ通り、ウィリアムズは苦しく、マクラーレンが好調だ。一方、1位M・シューマッハはモントーヤより1.5〜2秒速いペースで差を7秒に広げる。

パニスはリタイヤ後、エディ・ジョーダンの所へ行き、琢磨に対するクレームを言う。「ちゃんと教育しろ」

35周目 M・シューマッハがドライブスルーペナルティ。ライコネンとR・シューマッハの間、3位で復帰。今度は白線ぎりぎりでまたがなかった。

この時点でM・シューマッハの王座は決まらないかに見えた。

36周目 ビルヌーブが止まり、ホンダ勢は全滅した。

39周目 1位モントーヤ、2位ライコネン、3位M・シューマッハの接近戦。モントーヤはタイヤがつらく、早めにピットインせざるを得なくなった。ミシュランのデュパスキエ、ウィリアムズのヘッドも心配顔。

41周目 周回遅れのマクニッシュに詰まったライコネンは、M・シューマッハにあやうく抜かれそうになる。

43周目 モントーヤがピットインで11.6秒かかる。クルサードの後ろ4位にダウン。モントーヤのペースは遅くなり、優勝争いから完全に脱落。ウィリアムズはタイヤを生かせないために、レースに勝てない深刻な状態になった。

48周目 2位M・シューマッハが2回目の交換、8.8秒。ライコネン、クルサードの後ろ、モントーヤの前の3位で復帰。ブリヂストンもフロントタイヤがスリックに近くなっている。

49周目 ライコネンも2度目の交換、8.7秒。M・シューマッハをわずかに抑える。

ライコネンは交換直後の周にシューマッハを必死に抑えきった。初優勝の可能性が見えてきた。

53周目 アーバインの恐怖体験。時速300kmでリアウィングがはずれてスピン。グラベルで止まって事なきを得る。モチベーションが上がらないときにこういうことがおこると、辞めたくなるもの。

54周目 1位クルサードがピットアウトでM・シューマッハの後ろ3位で復帰。だが白線をまたいでしまった。それでも4位モントーヤとは17秒の差があったため、ドライブスルーペナルティでも3位は安泰だった。モントーヤはそんなに遅れてしまったのかの方が驚きだった。

クルサードは62周目に1分15秒045のファステストラップを記録。ペナルティがなかったらM・シューマッハを苦しめていた可能性があった。

62周目 残り10周、1位ライコネンはM・シューマッハを抑え切るか。28戦目初優勝、新フライングフィン誕生かに見えた。

67周目 4位モントーヤはR・シューマッハに追いつかれる。ラルフも白線またぎで大きく後退していたのに、モントーヤもペースダウンしてしまっていた。モントーヤは意地で4位を守りきるが。

ウィリアムズはマクラーレンに勢力を逆転されたことを感じているだろう。

マクニッシュがアデレイドヘアピン手前で止まる。この時、オイルを撒き散らした。その直後・・・。

1位ライコネンはオイルにのってブレーキが利かず、大きくふくらんでしまう。

トヨタの広告の上で止まるマクニッシュの前を通り過ぎる。

すかさずM・シューマッハが抜いていく。

ロン・デニスもがっかり。マクニッシュのオイルに気をつけろと伝えるのが間に合わなかった。

1位M・シューマッハはアデレイド手前の黒い筋を避け、イン側を走る。

これで一気にM・シューマッハの王座決定が近づいた。モントーヤとR・シューマッハは4・5位に低迷している。すべての条件はクリアされている。

チェッカー M・シューマッハ優勝、そして5度目のチャンピオン決定。ファンジオの記録に45年ぶりに並んだ。

11戦目の決定は16戦以上(1976年以降)では最短。

M・シューマッハ 96
モントーヤ     34
バリチェロ     32
R・シューマッハ  32

ステアリングを左右に振ってジグザグ走行しながら喜びを表す。F2002の上に乗って歓声に応える。ジャン・トッドと抱き合う。

3年連続チャンピオンもファンジオ以来のこと。何度王座についても、感動はひとしおなのだろう。ドイツ国歌が流れる中、涙をこらえるM・シューマッハ。トッドからシャンペンを浴びる。

2003年、ファンジオを抜く6度目の王座という目標ができた。達成すれば名実ともに史上最高のドライバーと呼ばれる。シューマッハのファンだけでなく、われわれF1ファンにとって、歴史的光景を目にしていると言えよう。