1999回顧・チーム別

英AUTOCOURSEの年鑑から。


マクラーレン

エイドリアン・ニューウェイ(テクニカル・ディレクター)

「MP4/14はオイルタンクと油圧システムを改善した。新しいギアボックスは短くなった。リアサスペンションにも初めてトーションバーを採用した。」
「シャシー全体から重量を削減し、バラストを効果的に配置した。」
「バンプを越える時や、直線とコーナーでの剛性はMP4/13と初期挙動で同じだ。だが限界上ではMP4/14はその先を行く。」
空力の優位性はマクラーレンの鍵である。広いフロントとリアのウィング、改善されたバージボード。
サスペンションの開発も多く試みた。バランス、スプリング、ダンパー、アンチロールなど。ひとえにハンドリングの安定のため。

 

フェラーリ

ロス・ブラウン(テクニカル・ディレクター)

「マクラーレンは序盤にブリヂストンタイヤ経験のアドバンテージがあった。サスペンション・ジオメトリー、重量配分など。」
「シューマッハ欠場中に開発の努力を怠ったのではない。スパとモンツァの不調をよく言われる。スパはドライではここ数年苦手だった。高速のモンツァがなぜホッケンハイムの1−2を再現できなかったか、ホッケンハイムも予選は悪かった。」
「F399は基本的には良い車だとエディーも言っている。ただ、ダウンフォースが小さい時に改善が必要だった。」

 

ジョーダン

マイク・ガスコイン(テクニカル・ディレクター)

「コンストラクターズ3位は最低限で、トップ2に近づくことが目標だった。予選で4位以内、レースでは表彰台、そして勝つことができるマシンを作ろうと思った。」
「スペインでドライブシャフト・ベアリングが壊れ、直したら、次のカナダではブレーキディスクが壊れた。技術面では最大のピンチだったが、次のフランスで優勝できた。」
「ベストレースはニュルブルクリング。われわれが一番速かったからだ。」

 

スチュワート

ゲイリー・アンダーソン(テクニカル・ディレクター)

「オーストリアGPから油圧デフを導入すると、ハーバートのパフォーマンスが良くなった。ジョニーはスロットルを勢いよく踏む。ルーベンスは経済的だ。」

 

ウィリアムズ

パトリック・ヘッド(テクニカル・ディレクター)

「ブリヂストンは誰にでも平等に接した。だが、グッドイヤーに比べて縦よりも横の負荷が良くない。コーナーにブレーキングするとき、リアが良くない傾向にある。コーナーに深くブレーキングするためのセットアップが難しい。」
「冬に低重心化に成功したが、タイムに結びつかなかった。原因は剛性。ブレーキング時とコーナー進入時に問題となった。」
「イギリスGP前にボディワークとディフューザーを変更し、改善できた。高速サーキットで効果があった。だが治療というほどではない。」
「トップチームに比べて50〜60馬力不足していた。ジョーダンにも40〜50馬力不足した。」
「ザナルディ不振は、F1カーがタイヤに鋭敏であるためだ。低速ではグリップしない。グリップはダウンフォースから得られる。高速から低速に移る時、適応が難しい。」

 

ベネトン

パット・シモンズ(テクニカル・ディレクター)

「空力のトラブルに悩まされた。風洞トンネルのテスト値を信じたのに、サーキットでは効果がなかった。風洞トンネルでは解決しない問題があった。」
「パワー不足を補うためのFTT(フロント・トルク・トランスファー)とツインクラッチ・ギアボックスは想像以上のトラブルが起きた。重量増から予選でのシングルグリッドも失った。」

 

プロスト

匿名チームスタッフ

「プジョーエンジンは信頼性を上げる代わりに、性能が少しずつ低下していった。770馬力は中間グリッドには十分だが、上を狙うには力不足だった。」

 

ザウバー

ジャン・アレジ(ドライバー)

「なぜ予選で遅く、レースで速かったか。それはマシンが最低重量ぎりぎりまで重かったからだ。他チームはマシンが軽く、予選ではバラストを積んでいる。バラストを重心近くに積めば速い。レースでは重い燃料を積むため、バラストは積まない。だからレースでは勝負ができる。」

 

★アロウズ★

マイク・コグラン(テクニカル・ディレクター)

「デ・ラ・ロサは良いドライバーだ。トップチームではもっと良くなるだろう。」
「高木は時折速いラップを見せるが、レース距離では続かない。車の挙動に彼のスタイルを合わせる前にコースアウトしてしまう。」

 

ミナルディ

グスタフ・ブルナー(テクニカル・ディレクター)

「F1のレベルは昨年1年間で過去30年間より多く進化した。ウィングカー、ターボを含むすべてよりも。」
「われわれの最大の不足は、ダウンフォースだ。空力面は資金不足で強化できなかった。風洞トンネルを持っていない。空力担当が1〜2人しかいない。部品も多くは作れない。トップチームは空力専門に30〜40人いて、たくさんの部品を作っている。」

 

BAR

クレイグ・ポロック(チーム指導者)

「買収したティレルからスタッフは誰も来なかった。これが問題となった。チームは多くの異文化の集合だった。他のF1チーム、インディカー、F3000など。まとめるのに多大な力を必要とした。」

スティーブ・ファレル(チーフエンジニア)

「スーパーテック・エンジンの振動の問題に悩まされた。ウィリアムズやベネトンは経験を持っていたが、われわれにはなかった。振動はシーズンが進むほど悪くなった。その影響でリアウィング、ウィッシュボーン、油圧系など、次は何が壊れるかわからなかった。」