ウナ
-今日は、人気タレントのウナさんのお宅にうかがっています。ウナさん、こんにち
は。
「はーい、ウナでーす」
-ウナさんは、今うなぎに夢中だとか。
「もう、私の生活そのものなの。うなぎは人間と同じくらい知性の高い生き物で、昔
から人間のお友達だったのよ」
-昔から人間の食糧だったのでは。
「ひどーい! こんな愛らしい生き物を、殺したり食べたりするなんて、絶対許さな
い!」
-すみません。
「見て、こんなに可愛いんだから」
-リビングは水槽だらけです。うなぎの首にみんなリボンが巻いてありますけど。
「キュートでしょ。このピンクのリボンがキムタク、ブルーのがトヨエツ、グリーン
は反町、レッドは竹野内……」
-全部、雄なんですね。
「あら、そうね」
-毎朝、うなぎを連れて散歩をなさるそうですが、水から出しても大丈夫なんですか?
「一時間や、二時間は平気よ。知性の高い生き物だから」
-はあ、そうですか。ウナさんがうなぎと街を歩いたら、目立つでしょう。
「うふふ、そうなの。男の人なんかいっぱい寄ってくるの。猫も寄ってくるけど」
-あっ、一匹逃げ出して、床を這ってますよ。
「触っちゃだめ! それ、電気うなぎ」
-うわっ
「番犬の代わりだから」
-危ないなあ。さて、こちらはウナさんのベッドルームです。ここにもうなぎの水槽
があります。このうなぎは、少し形が違いますね。
「うふふ。八目うなぎ」
-おや、これで噂の恋人に精力をつけさせるのかな。ああっ、やっぱりうなぎを食べ
るんじゃないですか。
「食べません! うなぎは人間のお友達なのよ。なめるだけです!」
-なめる?
「あのヌルヌルが効くのよ。彼にこのヤツメちゃんをなめさせてるの。彼ったら目が
血走って、すごいんだから」
-なんだか壮絶ですね。なめる方も、なめられる方も。
「お風呂でーす」
-はい、つぎはバスルーム。ウナさんはうなぎと一緒に入浴するそうです。さっそく
準備していただきました。
「うなぎのヌルヌルがお肌にとてもいいの。今日のお相手は、ピンクのリボンのキム
タクちゃんでーす」
-水着を着たままなのがちょっと残念ですけど、バスタブのうなぎとピチピチギャル。
きわどくて、そそられますね。
「あなたって、オヤジね」
-すみません。
「そこの、小瓶を取ってちょうだい」
-はい、これですか。
「これは、私が二十種類のハーブをブレンドして作った、特製の乳液なの。うなぎも
私もとってもリラックスできるのよ。うなぎは人間のお友達だから」
-わかってます。
「こうやって、お風呂の中で溶かすと」
-へえ、ずいぶん濃い色をしている。あ、いい匂いですね。とても美味しそうな。
「あっ、まちがってタレ入れちゃった」
(完)