《 そばに居たくて T 》

 

 

「本当に大丈夫なのか…?アムロ…」
「もう…今朝から何度言わせるんだか…全然大丈夫だって!」
「しかし私はまだ心配なのだが…」
「カミーユにもDr.ウォルトンにもちゃんと許可を貰っているよ?」
「だが万が一、という事もある…後1日くらいはっっ」
「…ああっもうーっっ!ほらっっいつまでも待たせては駄目だろう?早く行ってらっしゃい!」
緋色の軍服が包む大きな背中を無理矢理に押して…アムロは何とかシャアを送り出した。
「ったく…本当に心配症過ぎるよ…もうっっ」
起床時から、朝食の席から、ずっとこんな台詞の繰り返しだ。本当にシャアにはもう少しネオ・ジオン総帥の公人としての自覚を、ちゃんと此処から持って欲しいっ…としみじみ思う。
ふと後ろから感じる気配。朝からの2人のやり取りを見てて邸の使用人達は「笑っては駄目だ」と必至で堪えている様子…それを敏感に感じ取り、久し振りに気恥ずかしくなったのだが…。

夫君を送り出したその30分程後に、ギュネイが公邸に迎えにやってきた。
「おはようございますっっ!!アムロ少佐っっっ!!」
久し振りの送迎とあってか、その敬礼する姿に大変張り切っている様子が伺える。
「おはようギュネイ…久し振りの朝だね」
その優しい笑顔をこうして間近で見るのも久々で…ギュネイは思わず目が潤みそうになった。
「…はいっっ10日ぶりですっっ!それより少佐…本当にもう大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって、これ以上皆に迷惑かけられないからね。さあ行こうか」
「い、いえっっでも…万が一って事がありますし…もう1日くらいは休まれても…」
突然アムロの後ろに控えていたメイド達が笑い出した。「すみませんすみませんーっ」と謝りながら。よく見れば他の使用人達も何やら笑うのを我慢している様子で…ギュネイは「ええ??俺、そんな可笑しい事言ったか??」と目を何度もパチクリとさせた。
「…何も…同じ事を言わなくても…ね」
軽く溜息を付きながらのアムロの本当に困った様な苦笑いもあって、ますます疑問を持つしかないギュネイである…。

 

 

「ああーっ…本当に此処は落ち着くなあっ!」
「……この部屋がですかあ?」
MS隊総本部の自分専用オフィスに着くなり、大きく伸びをしながら寛いだ声を上げる上官に、ギュネイは素直に疑問を投げかける。不衛生では無いがアヤシゲな部品が所狭しと並べられたこの部屋は…絶対にアムロ以外は落ち着く事は出来ないだろう。まあ専用オフィスだから好きな様にするのは仕方ないとしても…この部屋の中身の実態を知っているのは、自分と総帥閣下だけ…なのだ。はっきり言って最重要情報機密である。…絶対に外部に漏洩してはならない。ネオ・ジオンの民衆が描くアムロ少佐のイメージの為にも…。
「あ…10時からミーティングあるんだったね」
時計を確認しているアムロにギュネイは頷く。
「はい、久し振りですから…小隊長以上、全員集まるハズです」
当然ギュネイも出る事になるので、2人は余裕を持って専用オフィスを出た。
本部のエントランスに入ると…アムロはふと気になる事がある。軍部の厳つい内装とはあまり似つかわしくないものが、いくつも並べて置いてあるのだ。
「…?…ギュネイ、何だい?この…花」
それは…お祝い用の花籠や生花の鉢植えなのだった。
「あ…ああ、コレですか?…えっと…アムロ少佐宛に民間人から送られてきたものですよ」
「えっ?!…も、もしかして…お見舞いとかなワケっ?!」
「…まあ…そんなモノですかね…」
自分はそんなに住民に気を遣わせてしまってたのか…と少し胸が痛む気持ちが沸き上がってくる。『総帥夫人』としての立場を確かに時々忘れてしまうのではあるけれど。長く休んだというだけでこういう状況になってしまうのか…?
「アムロ少佐!」
思考を遮ったのはレズン中尉の元気な声だった。
「今日から復帰ですね!本当に嬉しいし、ありがたいですわー」
「あ…レズン中尉。本当に色々と迷惑かけたね…すまなかった」
「いえいえ、ちーっとも迷惑なん……って?何か元気無い様に見えますよ…まだ御加減が?」
心配そうにアムロの顔を見つめる彼女に、首を軽く振ってアムロは花籠達を指差した。
「これがね…余計な心配かけちゃったかな…って」
「あーコレですか?ふふふ…アムロ少佐が愛されている証拠ですわねっ…ミーティングルームや他のオフィスにも分けて置いてるんですけど…結構な量、届いちゃって」
「えっっ…そうなのっっ?!…うわー…何だか申し訳ない…」
心底すまなそうな上官に、レズンはふふふ…と綺麗な笑顔を見せた。
「まあいーんじゃないですか?私はこーゆー『ノリ』好きですよー」
「…??……うん…まあそうだね……じゃあミーティングルームに行こうか」
踵を返すアムロの後ろ姿に付いて行きながら、レズンは隣のギュネイに耳打ちした。
「…ちょっと…もしかして全然気付いてないのっ?」
「……少佐の天然ぶりを考えたら…有り、だろ?」
「まあ…そーだけどねえ」

確かにミーティングルームも…花だらけであった。

 

打ち合わせを終えたアムロは、そのまま久し振りのMSドッグへと向かう。
「ああ…此処も落ち着くんだよなあ」
本当に嬉しそうに佇むMS等や作業中の整備士達を眺めているので、本当に好きなんだなあー…とギュネイは苦笑せざるを得ない。
アムロは通路を少し歩いて…ふと上の方から聞こえていく声に気になった様子で顔を上げた。
「…あー…やっぱりこの数値は直らないなあ」
「0.04も照準値狂うぜ…おかしいなあ…いったい何処から影響されてんだ?」
一体のギラ・ドーガのコクピットに張り付いている2人のメカニックマンが、接続した外部端末をカタカタと弄くりながらぼやいていた。
そのやり取りを暫く聞いていたアムロは、トンっと床を強く蹴る…とそのままフワリと上がってゆく。MSドッグは当然軍港と同じように重力値が少し調整されていた。アムロが技術者達に混じって何やらMSを弄くるのは良くある事なので…ギュネイは取り敢えずその様子を見守る。
「何の問題?良かったら相談に乗るかい?」
「わわっっ?!アムロ少佐っっ!」
いきなり下から上がってきたMS総隊長に一瞬驚いたが、「良くある事」なので彼らは相談しようと口を開きかけ…と、いきなり2人でハッとした顔をお互い見合わせる。
「あっっ…アムロ少佐ーっっっ!!!ダメですよっっこんな高い所まで登ってきてはっ!!」
「そーですよっっっ!!何かあったらどーするんですかっっ?!!」
「???…あ…病み上がりの心配?此処はいきなり落下する事は無いから…大丈夫だと思うけど…?」
きょとんとした表情のアムロに、凄い剣幕だった2人はもう一度顔を見合わせる。
「え…?あ…アレ?…あ、そーか…」
「あー…俺も今、本気で心配した……それは無い…んだよな?」
「…??」
「あーっっ今のは何でもナイんですっ少佐っ!…そ、それよりこの照準値なんですけどぉぉ…」
色々と疑問が残ったが…その後はいつもの調子のメカニックマン達の話を聞くことにした。
下でそのやり取りを見ていたギュネイは額を押さえる…。
「…バカ共めが……何を信じているんだよ…」

 

 

ネオ・ジオン艦隊司令部はMS隊本部の隣の建物である。
演習の事前打ち合わせを2回も飛ばしてしまった事になるので、アムロはライル司令に取り敢えず謝っておこうと、司令部にやってきた。ライル司令は立場上総帥府に居る事もあるのだが…今日は此処に居ると事前アポイントで確認済である。
司令部に足を踏み入れた途端、「アムロ少佐…!」と良く通る響く声に振り返る。なんとライル司令その本人が、わざわざ出迎えてくるではないか。うわっっ…と驚きを隠せないアムロとお供のギュネイである。カツカツと規則正しい軍靴を響かせて、こちらに近付いてくる。
「アムロ少佐…わざわざこちらへのお気遣いを痛み入ります」
「あ…いえ…あの…」
深々と頭を下げるライルにアムロは本当に困ってしまう。よく見れば側に控えている彼の副官まで一緒に頭を下げているではないかっ!思わずギュネイも焦って、2人で釣られる様にこちらも頭を下げた。そのまま案内されて、司令部専用の来賓用応接室へと入る。
「こちらの方からご挨拶にお伺いしようと思っていた所なのですよ…本当に申し訳ない事です」
…何だか必要以上に気を遣われている感じがして、アムロは本当に困惑してしまう。いつもそうなのだ…彼は自分に敬語を使うのだ。階級はライル中佐…なのに…彼の方が上官なのに!ネオ・ジオン艦隊司令官で旗艦レウルーラの艦長も務める、この見るからに生真面目で真摯な軍人を絵で描いたような彼は…総帥であるシャア・アズナブル大佐を心から敬愛している。唯一無二の忠誠を誓っている、と言っても良い。…その気質からか、彼にとってアムロは「MS部隊総隊長アムロ・レイ少佐」より「総帥夫人アムロ・レイ・ダイクン」の方が当然優先されるべき立場なのである。…はっきり言ってこれはアムロにとっては…正直言って少々疲れてしまう事例なのだが。
「…こちらこそ…色々とご迷惑をおかけしました。明後日の会議はよろしくお願い致します」
「迷惑など…!それより少佐のお体の方が心配です。もう大丈夫なのですか?」
「はい、もうすっかり…。部下達にも迷惑かけましたので、次の演習では人一倍働いて、彼らと共に立派な模擬戦を披露してみせますよ」
「…模擬戦に…まさか少佐も参加なさるのですか?」
「え?…ええ…総隊長として当然の仕事ですが…」
いきなり驚愕の表情をライル中佐がするので、逆にアムロの方が驚いてしまう。MS総隊長の俺が出る事が、何故そんなに驚く事なんだ?
「少佐っっ!そのお身体でモビルスーツに搭乗するなどっ…いったい何を考えて…っっ!!」
「はあ…?!!」
更に怒鳴られてしまったので…もう何が何だか解らない。身体って…もう大丈夫だって話しているのに…ライル中佐はいったい何の事を言っているのだ?!一瞬パニック状態のアムロを見て
「ライル中佐…!!」
「司令…!!」
…とギュネイと中佐の副官が同時に叫んだ。はっとしてライル中佐は自分の副官を振り返り、その首を振る様子を見て、彼は大きく溜息を付いた。そしてアムロに対して再び大きく頭を下げる。
「申し訳ございません!少佐っっ!…実は少し頭が混乱してしまいまして…!!…その…有り得ない事なのだと解っていても少佐を見た途端に…何とも恥ずべき事をっ!!何とお詫び申し上げたら良いものか…!!」
アムロは相変わらず??マークだらけの状態で、頭を下げっぱなしの目の前のライル中佐を見つめていた。良く解らないけど…取り敢えず誤解は…解けた?
「あ…頭を挙げてください、中佐…あ…そのあの…」
「ライル司令…アムロ少佐が困っておられますよ」
副官の声でようやく彼は姿勢を元に戻したが…沈痛極まりない表情のままである。
「…えっと…取り敢えず…詳しい話は明後日の会議で、と言うことで…よろしくお願いします」
アムロがやっと笑顔を見せたので、少しは落ち着きを取り戻したかに見えるライル中佐であった。その様子に安堵して、では戻ろうか、とギュネイに声を掛けて立ち上がる。
「あ!…アムロ少佐っ…お待ちください!」
は?と振り向くと…ライル中佐が、いつのまにか小さな白い花籠を手にしていた。
「私事で大変恐縮なのですが……その…妻がどうしてもこれを少佐に渡して欲しいと…」
ああ、とアムロは頷く。数ヶ月前に彼を家族共々公邸のディナーに招いた事があるのだ。真面目で冗談も言わなさそうな中佐が、実は大変な家族思いな上に子煩悩だったので微笑ましかった事を思い出し、アムロも自然な笑顔になる。
「奥様は…お元気ですか?…あっ…そういえばお子さんが…?」
「はい…お恥ずかしながら、先々週に3人目が無事に産まれまして…」
そう、あの時奥方はお腹が大きかったのだ。本当に照れくさそうだが幸せ溢れる彼の様子が自分もとても嬉しく感じる。
「それは本当におめでとうございます…奥様に本当によろしくお伝えください」
「ええ…あれが『少佐は私に何でも聞いてくれれば…』などと言うものですから…私もつい…」
「…??…何でも…?」
「あっっいいえっっ!…単なる勘違いなのですよっっ!…アムロ少佐…こちらこそお気遣いを本当にありがとうございます」
今度は軍人らしい会釈をアムロに送ったライル中佐であった。

MS本部への帰り道…
「ライル司令って…まだ若いのにもう3人のお子さん居るんだね…あ、そうそう!上は双子なんだよねっ…それでね、もの凄い子煩悩なんだよ?何だかイメージ変わったんだー」
笑顔で話すアムロに相反して、ギュネイは眉間に思いっきり皺を刻んだ表情なのだった。
「ど、どうしたの?その顔…ギュネイ?」
「…いえ……ライル司令とあろう人まで勘違いするなんて…色々と問題だなっと思ってっ!」
「…?…だからさ…何の話?」
「えっ?!…あーうー…えっと……俺の口からはとても……」
アムロは言葉を濁す部下に対しても、ますます疑問符だらけになってしまった。

 

 

…今日は何だか変な1日だったなあ…周りの態度が良く解らなかった……
病み上がりの自分を心配してくれるのだろうけど…過保護過ぎやしないか?という反応だった。公邸まで帰宅するリムジンカーの中で色々と考えてしまう、アムロである。
……俺が『総帥夫人』だから…余計なのかなあ……?
そこまで考えてふと、窓の外に彼の目を止めるものがあった。
「あ…ギュネイ、ちょっと寄り道してくれる?」

アムロが寄り道の場所に選んだのは、街の子供専門の玩具屋…であった。
とても可愛らしい雰囲気のショウウインドウに惹かれたのである。
「うわあ…今の子供のオモチャって…いっぱいあるんだね」
心底関心している様子のアムロに…何故かギュネイは恐る恐る質問してみる。
「…少佐…あの…此処に何の用が…?」
「あ…うん、ライル司令へお祝いをね…お子さんに何か、と思って」
花も戴いてしまったし…と呟き、色々と手に取っているアムロに…ギュネイはホッと溜息をついた。良かった…俺まで一瞬「恐ろしい想像」を信じそうになったっっ!
「色々とあって迷うね…ああでも、こんなに子供用のものが充実しているのは良いことなのかな?」
「ああそうですね…経済が安定している証拠です」
笑顔のアムロはきっと内心で自分の夫君を誇らしく思っているのに違いない…とギュネイは考えた。それは思いっきり当たっていたのだけど。
……ライル司令宛には…もしかしたらシャアがもう何か送っているのかもしれないけど…
ウサギのぬいぐるみを手に抱えて…あ、産まれた子が男か女か聞かなかったっ…としまった!…と考えた時、軍服の右袖を引っ張る感触がある。
え?と思い顔を向けると…それなりに妙齢のご婦人が自分の袖を引っ張っていたのだ。
「ねえねえ…アナタもしかして…アムロ・レイ少佐、じゃないの?」
「え…はい…そうですけど…」
「きゃーっっっっ!!やっぱりそうねっっ!!ちょっとーっっ!レイコさんっっ!ノリちゃんっっ!やっぱりアムロ少佐本人だったわよぉぉーっっっ!!」
「まあーっっっっ!!やっぱり?!本人っ?!…まあまあ実物の方がなんて可愛いらしい方なんでしょうっっ!まあいやだホントっっ」
「いやだっっ本当にアムロ様?!なんてラッキーなのかしらねっっアタシ達っっ!!」
いきなりいわゆる「オバチャン達」にあっという間に囲まれてしまった。その様子にはっと気付いたギュネイも、間に合わない程に素晴らしいスピードである。きゃあきゃあと騒ぎながら矢継ぎ早に色々と話しかけてくるその勢いに…アムロはすっかり固まってしまった。
「…そうそうっアムロ少佐っっ!アレっっ!!おめでとーございます!!」
「ああっそうよっっお祝い言わなくちゃねっっ!!皆で一緒に言いましょっ♪…せーの」

「アムロ少佐ーっっ!
ご懐妊、本当におめでとうございまあ〜〜す!!

「…………………………………」

………………は……?………

………………なに………??………

………なん…て…言った……んだ………???

「……ちょ…ちょーっっっ!ちょっと!!オバチャン達っっ!何て事をーっっっっ!!」
心底青ざめて、彼女達からアムロを引き離そうとするギュネイをモノともせずに、「オバチャン達」は再び捲し立て始める。
「どうなのっ?つわりとか酷くないのっ?身体大事にしなきゃダメよ…あ、コレ食べてねっ栄養高いのよーっっ美味しいのよーっっ」
バッグから取り出した何やら…袋に入った食べ物?をアムロに手渡す。
「そうそう、身体は冷やしちゃダメよっっ!…あ、アタシからはコレ、プレゼントするわねっっコレねーっホント温かいからっっ」
…毛糸編みの…コレはいったい何だ?それも手に握らされた。
「アタシ達、産まれてくるのは男の子か女の子か、どっちかしらねーって、毎日言ってるのよー」
「いやアタシはあの総帥だからーーっっ…絶対男の子だって言ってるのよねーっっ!」
「あらやだっもうヨシコさんたらっっ…本当にえっちよねーっっ!ほほほほほほほほ!!」
「アムロ少佐、頑張って良い子を産んでねっっ!応援してますからっっ…アタシ達!」
彼女達は次々とアムロの手をギュッと握り締めて、本当に悪意の無い笑顔を向けてくる。
「アンタも頑張って少佐をちゃんとお守りしなさいよっ」
そう言って中の一人が、ギュネイに何かを手に握らせた。…見れば飴玉が3個ほど。オバチャンは何故かいつもカバンに飴玉を持っているのが常識!という言葉を思い出したギュネイである…。

 

嵐の去った後…アムロはまだ呆然として動かない。だが頭の中は、完全なパニック状態からは脱して徐々に思考を始めている。
……そうか……そうだったんだ………
…届けられた花……今日の皆の態度……どれも………俺が……俺がっっ

何でそーゆー事になっちゃってるワケ〜〜〜〜〜??!!!

「………ギュネイ……」
「はっっ…はいーっっっ!!」
固唾を飲んでそんなアムロを見守っていたギュネイは、何故か直立不動の体勢を取ってしまった。何故ならば…こちらに背を向けているその身体からは、恐ろしい程のプレッシャーを感じる凄まじい怒りのオーラが立ち登っているからである。
「……皆…面白がっているの…かな…?」
「いやそれはっっ!!ち、違うと思いますっっ!!純粋に信じちゃってるだけですよっっ…多分っっ!!」
「…ならば……尚更…タチが悪いじゃないか……」
先程「オバチャン」がくれた毛糸のモノ(どうやらハラマキ…しかも苺柄)をぎゅーっと強く握りしめ、アムロはやっとギュネイに顔を向けた。
「……ところで…こんな噂が流れている事…………シャア総帥はご存じなのかな?」
にっこりと自分に向けられる、この世で一番恐ろしい綺麗な笑顔に…ギュネイは心底身震いした。ここまで怖い少佐は初めて見るーっっっ!!
「え…えっとぉ……俺は…よ、よく解りませんっっつ!!」
いや、絶対に知っているハズだろうけど。そうはとても答えられない雰囲気なので…。
「……もし…面白がっているんだったら………もうぜーったい許さないからなっっっ!!」

…どうやら行きようのない怒りの矛先が、大佐個人に行ってしまったようなのだが……
ギュネイは心の中で『ああ大佐…どーかネオ・ジオンの未来の為にも独りで犠牲になって下さい…』と十字を切るのであった…。

 

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BIRTHDAYなのにこんな話かよ…ごめんなさいっっ!
ライル中佐を子持ちにしてしまったのもすみません…ヨシコさんには私が乗り移ってます。
(2008/11/4)