※このお話はパラレル物です。これまた男同士のカップルが
普通に成立している、痛々しいやおひワールドで暴走中なので…
「可哀想な作者っ…」と諦めて下さいっっ
Can't Help Falling in Love
「やあこんにちわ。今日は良い天気だね」
実に爽やかで完璧な笑顔の挨拶…とでも言うのだろうか?
「あ…は、はい、そうですね」
この端正な顔に見つめられるのはいつまで経っても全く慣れない。
優しくてセクシーなその声も…そのきちんと整えられたプラチナブロンドと切れ長の蒼い双眸も…そして彼の為に誂えた様な高級な服装も…どこを取っても完璧な美形とはこういう人を言うのだろうな、と本当にしみじみ思う。
「これを…プレゼント用に頼むよ」
差し出されたのは一冊の幼児用の絵本だ。
「ありがとうございます…リボンは前と同じ種類ので…ピンクで良いですか?」
「ほう…流石だ。良く覚えているね。ああ、同じので頼むよ」
優しい笑顔で褒められて少し頬が熱くなった。レジを終えてから、子供向けの可愛らしい包装紙でラッピングを始める。その間もずっと彼が手元や顔を見つめている…どう考えても熱い視線だ…なので、ますます頬が熱くなる気がする。…そんなに見つめて来る原因は、一つしか考えられないのだが…。
「あっ…あの……シャア…さん…」
「何かな?アムロ君」
「……そ…そんなに…見つめて…いるのは…」
「…見つめているのは?」
「……そっその……似ているから……ですか…?」
「…………」
やはり彼は黙り込んでしまった。図星だからだろう。
「ふむ……やはりそう考えるか…」
口元に指を当てて、そう呟いた男に…アムロと呼ばれた青年、いや少年の域だろうの彼は努めて優しい笑顔を向けた。
「そう思っちゃうの仕方ない、と思いますよ。だって…そっくりの兄弟だって言われてますから…」
「確かにね…君は10代の頃の『アムロ』に瓜二つだな」
「…実際僕は今、10代の『アムロ』ですけど…えっとカード…付けます?…お名前、何でしたっけ?姪御さんの…」
「ああ、彼女の名前は…」
その時。
凄まじい音を立てて、さほど大きくない店の扉が開かれた。同時に大声で叫ぶ声が響き渡る。
「シャアァァーーっっっ!!!!」
ふるふると全身を震わせながら仁王立ちで睨み付けてくるのは…この店の店主である。
「…なっ何でココに居るんだっ?!アンタは一生立ち入り禁止だって宣告しただろうぅっっ?!」
あーあ…と「小さい」アムロは急激な頭痛を感じた額に手を置く。
「やあ、留守中にお邪魔しているよ。此処でないと手に入らない絵本を所望されてね…仕方なかったのだよ」
「ひっ開き直るなーーっっっ!!何でアンタはそんなに図々しいんだっっ!今直ぐに出て行けよっっ!!」
慌ててラッピングされた本を差し出すアムロに、礼を言いながらそれを受け取ってシャアは不敵に微笑む。
「まあ…用は済んだのでね…そんなに怒るな、可愛い顔が台無しだよ?『アムロ』」
投げキッスをしながら店から出て行く男に、アムロは店頭にあった本を投げつけようとし…それを慌てて「小さい」アムロが止めた。
「お兄ちゃんってばっ…落ち着いてよっっ!!」
「何でっあの男を店に入れたんだっ?!アムロっっ!!」
「…ちゃんとしたお客様だもんっ…お兄ちゃんこそっいーかげんにさあっ」
「ったく…!いつも俺の居ない時を狙って来るんだからっ!本当にもうっっ…あーっっ憎たらしいったらっ!!」
真っ赤な顔をしてゼェゼェと粗い息を吐きながら捲し立てる「兄」に向かって…「小さい」アムロは大きな溜息と共に呆れた口調で呟く。
「…もっと大人の対応すれば?」
「アイツにそんな態度取る必要なんてないっっ!!」
本当に大人気ない、としみじみ思いながら…
「でも……仮にもさ……元旦那様なんだし」
「!!そっ…その話はもうするなって言っただろうーっっ…!!」
14歳も年下の弟に相変わらず呆れた視線を送られても…異様に腹立つ気持ちは抑えられない「大きい」アムロ…でなのある。
落ち着いた街中に佇む小さな店「白い木馬」は、主に児童書や子供向けの絵本を取り扱う本屋である。小さいながらも評判の良い、この本屋を始めた母親が7年前に亡くなってからは、長男のアムロが店主としてその跡を継いでいる。母が亡くなった時に末っ子のアムロはまだ8歳になったばかりで…母親代わりとしても当に鬼籍に入った父親代わりとしても…アムロは店の方も「小さい」アムロの子育ても頑張ったのだ。
2年程前から弟のアムロも、学校が終わった後や休日には自ら店番を手伝う事にした。
そして彼はその頃から…よく店の中をそっと覗っている男性の姿を見かける様になる。最初は不審者かと思ったが、悪い感じはしなかったし、とても洗練された紳士だったので。
兄アムロの正しい教育のお陰で、それはそれは良い子に育っていた弟アムロは、ある日思い切って外に佇む男に「良かったらお店の中…ご覧になって下さい」と笑顔で声を掛けてみた。
彼はその言葉に大変感激した様子で…
「…大きくなったね…アムロ君…」
がその第一声であった。アムロも確かに…何処かで見掛けた記憶が微かに…あったのだが、その時は思い出せなかったのだ。それからその男は度々店に来てくれるのだが、何故か自分が一人で店番をしている時だけなのである。
そんなある日の事。
「小さい」アムロがその彼といつもの様に店で談笑していると、早めに帰ってきた兄のアムロが…その姿を見て大変驚き、そして怒り、凄い剣幕で男を追い出したのである。
兄のこんなに怒っている姿は初めて見たし、あの男を決して店の中に入れるなっと怒鳴られて…わけが判らず思わず泣き出してしまったのだが。
その様子にハッとした兄はただ謝ってきて…「あの男は悪い人間なんだ」とだけ告げてきた。
しかし、兄がそう言ってもアムロには「悪い人」には全く思えず、逆に「お兄ちゃんは何か隠している…」と確信する。その後に案の定再びこっそりと訊ねて来たその男に、兄との秘密を話してくれる様に頼んだ。
そして…その秘密と兄の部屋の机の引き出しに隠してあったたくさんの証拠の写真を見つけて(そこにあるだろう、と男が言った通りだったのだ)…彼と兄アムロが自分が6歳の頃に結婚していた!…という事実を知る。何故二人が別れたのかは解らないが…今は「赤の他人の関係」らしい。
もう29歳になる兄のプライベートな事に口出すつもりはないが…こんなやり取りが1年も続いてきたので、だんだんと馬鹿らしくなり、子供の自分もかなり冷静になってきた。
ハイスクールに進んだ今では「お兄ちゃん…素直になって縒り戻せば?」と言えるくらいになって、兄を心底驚かせたのであるが。
「俺のアムロがいきなり可愛くない事を言い出したーっっ」
とかなりのショックの様子で嘆いていた。
…僕だって…少しは大人になったんだよ…お兄ちゃん…
実は弟のアムロにも…兄には内緒の秘密が出来ていたのである。
バスで20分程揺られる処に、大きな大学の在る街がある。
そのバスから降りた「小さい」アムロは、その街中で評判の落ち着いた欧州風のカフェに入り、ある人物と待ち合わせをしていた。
程なくして待ち人が現れて、アムロはとてもとても嬉しそうな笑顔で…その相手を迎える。
「すまない…待ったかい?アムロ」
「ううんっっ!全然っっ」
アムロは隣に座った彼の肩に、自分の頭をコツンとぶつけて甘える仕草を見せた。相手の見事なプラチナプロンドの髪も揺れる。
「…2週間ぶりだ…やっと会えて嬉しいよ…アムロ」
「うん……僕も嬉しいよ…キャスバル…」
そう…「小さい」アムロは…今、15歳の年齢に相応しい…恋をしていた。二人は半年程前にある場所で偶然知り合って、互いに一目惚れで…恋に落ちた。
そして付き合う様になってから知ってしまった、驚愕の事実があったのだ。
アムロは確かに「シャアさんに良く似ているなあ…」と彼に対して思っていたのだが。
アムロより5つ年上の大学生…キャスバルはシャアの実弟である。
二人が付き合っている事は兄のアムロは元より…シャアも知らない秘密であった。
「アムロさんは優しくてとても素敵な兄嫁だと子供心に思っていたが…確かに7年前に本家の邸を出て行ったな…」
自分にとってもその出来事はとてもショックで、かの長兄に何故?と問い詰めた記憶がある。
…しかし答えは当然あの長兄が返してくれるわけもなく…。
「…お母さんがその頃…亡くなっているんだ…何か関係があったのかな?」
自分達の兄の秘密や関係が確かに気にはなるが…今はこうして一緒に居られる事の方が大事な若い二人である。
「アムロ…」
そっとその端正な顔を近付けてくるキャスバルの…その顔をもっと眺めていたいけど…でも…とアムロはゆっくりと瞳を閉じた。こうしてキスを交わす事はまだ…とてもとてもドキドキする…。
「遅かったね…アムロ…心配したよ」
予想通り、兄のアムロが少し不機嫌気味に自分を迎える。
「…ごめんなさい……ちょっと友達と盛り上がっちゃって…」
嘘を吐くのは心苦しいけれど、でも。
「うん…まあアムロもそういうのが楽しい時代だからね…仕方ないだろうけど、でもちゃんと連絡は入れてくれよ?…ホント心配だからさ」
「うん…ごめんね…お兄ちゃん…」
そんな素直に謝る様子にちゃんと笑顔を見せて、ご飯は食べた?お腹空かない?珈琲でも入れようか?…と色々と聞いてくる自分の保護者に…本当にすまない気持ちでいっぱいになるのだが。
「…あの…さ…お兄ちゃん…」
珈琲を入れる手を止めて、何?とアムロは弟に向かって振り向いた。
「……シャアさんと……ずっと…このまま…?」
途端に眉間に思いっきり皺を寄せて、兄はキッパリと言い放ってくる。
「…このままも何も…もう関係は無い人間だろうが…」
「お兄ちゃん…でもさ…シャアさんは…」
「もう口を出すんじゃないっ…アムロっっ」
強い口調で窘められた。
「…俺は…もうアイツ自身にも…アイツの一族にも絶対に拘わりたくない…そう決めたんだ…だからアムロもそのつもりでなっ」
「………」
その一族の一人と今付き合ってます…なんて言ったら…どうなるんだろう?
兄が入れてくれた珈琲は砂糖もミルクもたっぷりだったけれど…とても苦く感じた……
「キャスバルと…こうして会ってるの知ったら…お兄ちゃん、凄く怒るだろうな…」
緑豊かな公園の中を手を繋いで歩きながら…アムロは大袈裟気味な溜息と共に呟いた。主にわざわざ離れた彼の大学のある街で、こうしてデートを重ねているのだけど。
「やはり理解してはくれないのかな?…兄上とそんなに酷い確執が出来たとは…私には思えないのだがね」
「何も話してくれないし……でも時々しか会えないけど…僕にはシャアさんはまだお兄ちゃんが好きな様に見えるんだよね」
「私はここ最近兄上に会ってはいないのだが…その考えは間違ってない様に思えるな」
アムロはキャスバルの腕にぎゅっとしがみつく。
「やっぱり…大好きなキャスバルとの事…大好きなお兄ちゃんにもちゃんと認めて貰いたいよ…」
「アムロっっ…」
キャスバルは感動で舞い上がりそうになった。本当にアムロは可愛い…ああ…君は何故こんなに可愛いのだろうかっ?!
そのまま小さなアムロの身体を抱き締めて…その髪に頬にへと幾度もキスを贈った。優しい愛情を感じるキャスバルからの愛撫が嬉しくて…アムロからも彼の頬へとぎこちないキスをした。
「…大好き……」
「ああ…私もだ…」
嬉しくて優しくて切なくて身体が熱くて…もうどうしよう?とアムロが困ってしまった時……
「……アムロ…っっ…」
え…?
…この…声……って…
……まさかっっ…?!
キャスバルと抱き合ったままで振り向いたその視線の先には……
絶対に此処に居るはずがない、と信じていた存在が…確かにそこに…
「お…お兄ちゃんっっっ…?!」
「…アムロさん…?!」
何故この公園に兄が居るのかは解らないが…完全に色を失った表情で、若い彼等をただ凝視し立ち尽くしていた。
「……お久し振りです…アムロさん…」
先に口を開いたのはキャスバルである。小さいアムロの手は握ったままで…頭を下げた。
「…やっぱり…キャスバル君…か……」
震える声。深い怒りに満ちているのは誰が見ても解る姿だろう。
「…何を…しているんだ……俺の大事な弟にっっ…」
アムロのその非難には、正面から向き合うキャスバルである。
「アムロと…弟さんと……お付き合いさせていただいてます…真剣な交際を…」
予想をしていた言葉だが、やはりアムロはカッとなった。
「兄弟揃ってっっ!…何処まで人を傷付けたら気が済むんだっっ!…許せるかっっそんな馬鹿げた事を…っっ!!」
勢いよく二人に近付いてきた兄のアムロは、弟の腕を掴むと、そのまま強く引っ張って二人を引き剥がした。
「おっ…お兄ちゃんっっ!…待ってっっ!…あのっっ…!」
「言い訳無用っっ!もう二度と会う事は許さないよっっ!!」
弟を引っ張ったまま、ズンズンと早足で歩きその場を去ろうとした。
「アムロっっ!…待って下さいっっっ!!アムロさんっっ話をもっと…」
「聞かないっっ!どうせっシャアの…差し金だろうっ?!」
「違うよっっ!…お兄ちゃんっっ…キャスバルの話…聞いてっっ!!」
全く聞き耳を持たない兄に引き摺られる様にして、アムロは公園を出る事になる。駐車場で無理矢理に兄の車に押し込められた形となり…彼は思いっきり抗議しようと運転席に乗り込んで来たその表情を見て…
思わず何も言えなくなってしまう。
「…頼むから……アムロ……」
本気で泣きそうなその顔……どうして良いか解らずに…小さいアムロもただ泣きたくなってしまった……
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すっかりお待たせしたリクエストは「2015!ロミジュリ設定で!」…でした
…あああ…パラレルでないと今の私には無理でした…ゴメンナサイ!!
結局は3429な話かっ?!…と予想容易い続きは直ぐにUPシマス!
某映画の設定をちょこっとだけ拝借しましたが、ちーっっとも活かせてない
…シリアスのよーなラブコメのよーな…?? (2010/2/6UP)