◇◇ HEAVEN KNOWS 1 ◇◇
「貴方はいったいこんなところでっっ何をやっているんですかーーっっ!!!!!!!!!」
カミーユはテーブルをバンっ!と思いっきり叩きガバッと身を乗り出す。食って掛かっている相手…当のシャア、いやクワトロ・バジーナ大尉は、そんなカミーユの迫力も全く意に介さぬ様子で優雅な仕草でマグカップを口元に運んでいた。
此処はアーガマの士官用ラウンジ…幸か不幸か2人の他には誰も居ない。…カミーユの異常な怒張を感じて他の者が避難したから…というのが正しいのだが。
「何を…とは?ご覧の通り、この小惑星接近の原因を突き止めるべく調査を進めているのだか」
「ほぉーっっ!ホント戦争好きの貴方らしい調査方法ですねっっ!!!!」
やれやれ、相変わらず沸点の低い若者だ。そんな些細な事で腹が立つのか…理由を聞きたがっているクセに結論を全部決めつけているところも変わらんな…
「売られた喧嘩を買っているだけだ。君も同じ様な方法で解決策を見つけていたのだろう?」
あの時代と同じ様にクワトロ・バジーナ大尉は濃いスクリーングラスのせいで表情が解らない…が、自分に向けられる感情などカミーユには簡単に想像出来た。
「まあ少しは落ち着きたまえ。君はアーガマに合流したばかりなのだし…疲れているのだろうから」
「そーーーんな事はどーでもいいんですっっっっ!!!!!!!!!!!」
形ばかりの労いなど自分には不要っっ!とばかりに更に身を乗り出し叫ぶ。
「俺が…俺が言いたいのはですねぇぇっっっっ…!!!!!!」
バンバンと何度も拳で机を叩き付けるカミーユを見つめて、クワトロ=シャアは『ほぅ…正確に同じ場所を叩いている…そーいえば空手の有段者だったな…グラスファイバー製の机でもヒビが入るかもしれん…』と呑気に考えていた。
「なーんだってアンタがっっっ…またアムロさんと一緒に居るんだっ??!!…てぇーー事だぁぁーっっっ!!!!!!!!」
……ふむ…やはり言うと思ったよ。
コーヒーをまた一口運びながら、まあ感心する程のカン、ではないな…とも考える。
どこの時代でもどの並行世界でも…カミーユのアムロ大好きオーラは健在だからだ。時にはMSパイロットやニュータイプとしての憧れなぞ飛び越して、シャアには面白くない感情が交じっているのも感じている……全く危険な子供だ。少し釘を刺す必要性があるな。
「まあったくっっ!どーぉしてどの世界に来てもっっ!!!何だってアンタはアムロさんにくっ付いてるワケさーー!!!??…アンタはアムロさんの敵なんだからっっっ!!!共闘はもういーかげんに止めて思いっきり敵方で出てこいよっっ!!!!そーしたら俺がコテンパンに熨してやるのにぃぃーーっっ!!!!」
(…別ルートならそういう選択肢も無いわけではないのだがな…若者よ)
「…そんな文句はこの世界を作っている『●ーエー』とかいう神様にでも言ってくれ。私に言うのはお門違いだと思うが?」
怒りで顔を真っ赤にし、ふーふーっと鼻息も荒いカミーユにサラリと言ってのける。
「他の世界…というと…あの常識外れの巨大ロボットがわんさか出て来て、異星人やら別次元の敵と戦ったりした…アレか?」
クワトロ姿のシャアは顎に指をかけ、記憶の糸を辿っている。
「…まあアレはアレで楽しい世界でもあったな…アムロが囚われの姫君になったり…それが私の枷になったり、アムロが私の出自の心配をしてくれたり、アムロが私を常に気をかけてくれたり……アムロが…」
「しゃーらっぷーっっっっ!!!…いーかげんにせいーーーーっっっ!!!」
叫び声と共に出された修正鉄拳を難なくヒョイとかわしながら、シャアは明らかに…スクリーングラスを外してなくとも…ニタついているっっ!鼻の下伸ばしてやがるっっっ!…とカミーユにはイヤになるくらい判ってしまうので、更に沸点高騰なのであーる。
「まあ仕方がないのだよ、カミーユ。永遠のライバルの共闘…というものは誰もが一度は見たい…と夢見る舞台なのだ。ましてやアムロと私は愛憎が完璧に混ざり合った『宿命』という言葉が他の誰よりも相応しい関係なのだし…な」
いーかげん、ニタつくのを止めんかっっ!この脳内煩悩垂れ流し男っっ!!!!…とカミーユ心の叫び。
「アンタがアムロさんのライバルなんて絶対に認めないーっっっ!!!ただのストーカーのクセにーーーーぃぃ!!!!!」
キーキーと喚きながら繰り出す修正鉄拳は相変わらずシャアに全て避けられ…その時。「俺がどうかした?カミーユ…」
水晶の台の上を転がる鈴の様な美しい声が響く。(あくまでもカミーユ私感)
そこには柔らかい陽光のような微笑みを浮かべた彼のミューズが立っていた。カラバの時のスタイルだった。年相応には見えないそのあどけない表情も、柔らかそうな赤い巻き毛も、スラリと細い足も、キュッと引き締まった細腰も…カミーユの記憶そのままで。「ア…アムロさんっっっ…」
思わず瞳がじわっっと潤む。
ああ…アムロさん…どんなに貴方に会いたかった事かっっ…会いたかったですぅーっっっっっ!アムロさぁぁぁんーっっっっ!!!!!!!!
…感動の再会の抱擁を求めて、アムロの元に走り出そうとした瞬間、机の下からシャアの長い足がバツグンのタイミングで延びてきて、カミーユの行動を遮断する。
どったーんっっっ!…と派手な音がしてカミーユは思いっきり顔から床に落ちた…。
「わーっっっ!カミーユさんっっ!!!大丈夫っっ!??」
アムロの後ろから彼より先に駆け寄って来たのは、年下の生意気なヤツ…。
「もうっっカミーユさんったら見かけより案外ドジなんだよねーっっ♪…ソコがまた可愛い…フガッッ!!!」
起き上がるついでに繰り出したアッパーは、綺麗にジュドーの顎をこの上もなく反り返させる…オーバー・ザ・レインボゥー………敢えてその様子をシャアとアムロは完全無視を決め込む…。
「カミーユ…大丈夫かい?やっぱり疲れているんじゃ…」
シャアに対して激しい殺意のプレッシャーを放出していたカミーユは、アムロの声でパアーーッッと嬉々とした態度へと一変する。…全く現金な見え見えの小僧だ…と心の中でシャアは舌打ちをした。
「だっ大丈夫ですよっっ!アムロさん!……そ、それよりっっっっ!!!!」
「…?…それより?」
キョトンとしたアムロを『ああっ!なんて可愛いっっ!!!!』と思いながら、右手の人差し指を文字通り、シャアに対してビシッと向ける。「なーーーんでっっ!このっこのケダモノと別れないんですかぁぁーっっっ??!!!」
それはそれはもう…この上ないくらい魂からの声で、心の底からカミーユは叫んだ……。
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※…いきおいだけ書いてます…情けないっっ(2008/6/12)