※※この話をお読みになる前の…ご注意※※

※設定など深く考えないで読む方が吉です。
※作者の可哀想な妄想癖に付き合ってやるかー☆…くらいの
…かっるーーいお気持ちで、お読みになるのが大吉★です。

 

---- Day when love arose ------------------

 

 

 

夢をみていた……
淡くて綺麗で切ない夢……
このまま覚めたくない…
ずっとこの夢を見ていたい……
そんな夢だった……

 


オキロ〜〜〜!!カミーユ〜〜〜!!!

突然枕元で響くけたたましい電子声。
『カミーユ〜!オキロ〜〜!オキナイトドカントバクハツスルゾ〜!!』
ばいんばいんっ…と自分の頭の周囲で「目覚ましハロ」が叫びながら跳ね回っている。
…この凄まじいやかましさ…起きないわけがない。
「ああーーっ!もうっっうるさいなあっっハロ!起きりゃいーんだろっっ!!」
飛び起きて、ハロを掴み取り停止スイッチを押すと…
『おはよう、カミーユ…』
自分の最も愛する人の優しい声が突然聞こえてきて、思わず目を見開く。
『HAPPY BIRTHDAY カミーユ…おめでとう…貴方が生まれてくれたこの日に心から感謝を捧げます』

この日は…カミーユの13歳の誕生日であった。

 

 

今日はもちろん朝から晴天の設定……
コロニー内の人工太陽が爽やかな朝の光を演出している。
邸の長い廊下に降り注ぐその光を浴びながら、カミーユはモーニングルームへと急いでいた。
「おはようございます。カミーユ様…お二人ともお揃いでございますよ」
入り口のドア付近に佇む執事に笑顔で告げられて「おはようっありがとうっ」と短く応えて、開けられたドアを慌ててくぐる。両親より先に朝食の席に着く事を目標にしているのだが、それが実行出来ない日の方が多いのだ。
「おはようございますっっ!今朝も遅れてごめんなさいっっ!!」
柔らかな朝の光の中…カミーユがこの世でもっとも愛する人物が近付いてきた。
「おはようカミーユ…大丈夫、今朝は全然早いよ」
そう言いながら少し屈んで、カミーユの額と頬に優しいキスを落としてくれる。癖のある赤毛が光に透けてとても綺麗だと思う…。
「誕生日の朝くらいはきちんと起きられないのかね?…我が息子は」
この邸の主人が座ったままで嫌味な言葉を掛けてくるが…表情は優しく柔らかだった。それでもムスっとしてしまう息子に気を遣って
「もう…相変わらず素直じゃないお父様だね…さっカミーユ、朝ご飯にしよう」
と優しく促した。テーブルまでの短い距離の間に、そっと囁かれる。
「ハロ…早起きの効果あるみたいだね?」
「うん、アレじゃ絶対起きるよ……今朝は母さんの声が入っててビックリした」
「驚かせようと思って昨夜こっそり設定しておいたんだ…上手くいって嬉しいなあ♪」
悪戯が成功した子供の様な表情を嬉しそうに浮かべて、母…アムロはカミーユの頬にもう一度キスをした。

ネオ・ジオン総帥家族の朝がいつもの様に平和に始まる……

 

カミーユは、サイド3を中心としたスペースコロニー群で形成される「ネオ・ジオン」という独立新興国…その総帥夫妻の一人息子である。
本名をカミーユ・ズム・ダイクンといい、何でもセカンドネーム以降は祖父から受け継いだ大変偉大な名前だ…と良く言われるのだが、そんな事は自身はどーでも良く……何で女みたいな名前付けたのかっ…の方が余程気になるお年頃である。
その名付けの理由も
「だって本当に女の子みたいに…すーっっごく可愛い天使だったんだよ?」
…と母に哀しそうな顔で言われて…もう腹立つ理由がそれ以降は無くなった。

父の名はシャア・アズナブル…本名をキャスバル・レム・ダイクン、という。
何故わざわざ2つの名前を使っているのかは、色々と複雑な理由があるようなのだが、カミーユには解らない。(というかコレもどーでも良い…)
この「ネオ・ジオン」という独立国を統べる総帥であり最高権力者…という立場にある。早い話が「王様」である。21歳の若さでこの国を起ち上げたとか何とかで、大変な苦労をして地球連邦から独立を勝ち取った、素晴らしい偉大な指導者なのだ…と周囲から幾度となく、それはそれはウンザリする程聞かされている。ちゃんと「勉強」としても習わされた。

母の名前はアムロ・レイ・ダイクン。
ネオ・ジオン全軍の統括司令官で(最高司令官はもちろん父だ)モビルスーツ部隊総隊長と…そして勿論総帥夫人も兼任する。母の活躍なくしては独立は有り得なかった、という話も良く聞かされるが、こちらの方は幾らでも聞きたい話である。16歳の時にその年にネオ・ジオンを起ち上げた父と結婚し、以来ずっと公私の面で彼を支え続けている。
ちなみにこの年にカミーユは産まれているので、ネオ・ジオンが起った年と父母が結婚した年とカミーユの産まれた年は全て同じである。
「結婚式の日はホントもうすぐ産まれそうだったんだよ」
と以前母が笑って話してくれたのだが…母は歴とした「男」なので、「どーやって僕は生まれたんだろう??」と常に思う不思議があるが……
その辺りはネオ・ジオン国民も他のスペースノイド達も、はたまた懸命なるそこの読者の皆様もっっ…暗黙の了解で解ってくださる腐女子…いや大人の事情なのであるっ!!

 

「カミーユ…昨日告げた通りに今日の軍事式典にはお前も参加して貰う…お前の誕生日に合わせた式典だ。この意味が解るな?」
父の言葉がいつも以上に重たく感じた。頬に走る緊張感…父の隣に座る母の表情が一瞬沈んで見えて……
「着替えたら私の部屋に来るように…アムロ、後は頼む」
静かにコーヒーカップをソーサーに戻してシャアは立ち上がり、妻の頬に軽くキスを送った。頭を下げる使用人達の間を抜けてモーニングルームを出て行く…そんな姿でさえも彼は本当に様になるのだ、と後ろ姿を見送りながらカミーユも思う。
「もう一杯、カフェオレをお願い」
いつもと変わらないマイペースな母アムロの言葉と自分に向ける変わらぬ笑顔に、少しだけ緊張が和らいだ。

 

 

「まあまあ、なんてお素敵なんでしょう…カミーユ様」
「やはりお顔立ちが綺麗でいらっしゃるから…何を着てもお似合いなのですわねえ」

自分の周囲を取り巻くメイド達の明るくはしゃいだ様子とは裏腹に…少年カミーユの心情はモヤモヤと曇っていくばかり、である。

……ああうるさいなあ…もうっっ…何だってこんなモノ着る羽目になったんだっっ…

今日初めて「軍服」というモノを着せられた。
少年の小さな身体にオーダーメイドの…正式なネオ・ジオン軍の軍服である。その濃紺の色は此処ではカミーユだけに許される特別な色となるらしい。そしてこの軍服のデザインそのものも一般兵士とは微妙に違う…彼が特別な地位に居る事を証明するものであった。
「終わりましたわ…アムロ様」
着せ替え人形よろしくの扱いを受けていたカミーユの周囲からメイド達が一斉に離れると、自分の目の前に既に同じ様にネオ・ジオン軍の特別な軍服へと着替えたアムロの姿が現れた。赤いフワリとした癖毛の髪とは対象的な鮮やかな空色に近い青色…である。
「ああ本当に似合うね…いい男だよ?カミーユ」
ゆっくりと自分に近付いて膝を折って視線を合わせてくれる。いつもと変わらぬ母の優しい綺麗な笑顔。カミーユの大好きな顔だ。
「直ぐに大きくなっちゃうだろうから…何回も作り直さないとダメだろうけどね…」
母の手が軍服の襟や肩を優しい仕草で整えている。
「母さん……僕は…」
思わず息子の口から出てしまった不安と不満が混じった言葉を、アムロは優しく受け止めた。
「カミーユ……今日だけは我慢して…ね?」
その膨らんだ頬に優しいキスを幾度か落としてくれた。
……母さんには…嘘がつけない……
あまり口に出さなくとも通じる事がほとんどだ。それは母の持つ能力を正しく受け継いだから、しかも親子だから繋がり易いのだ…という事を「父」から何度か聞かされた。
この能力の高さが、人々を導く為に大いに役に立つとか何とか…父や周囲の大人達が言うのだが、カミーユにはそれが何の事なのかは解らない。
解るのはその大人達の言い分が今の自分には「鬱陶しい」という事だけだ。
「さあ…お父様に見せに行こう」
立ち上がりカミーユの肩に手を置いてアムロは、相変わらず不機嫌な表情を隠さない様子の息子を優しく促した。

 

父の書斎に入るのが苦手になったのは…いつ頃からだろう?
かなり小さい時分は此処で良く遊んだ。机の上や本棚とかをメチャクチャにして女中頭のミセス・フォーンに怒られていた記憶がある。…父は怒らなかったけれども。
いつの間にか、此処に入るのが嫌になり……いや、正確には「嫌」なのは書斎に入る事ではなく…シャアと話す事なのだ。
嫌な気分のままで、その父親の前に立つ。不機嫌さは顔に出ているに違いないのだが…
「ほう…さすがに良く似合っている」
彼の満足そうな言葉がカミーユには意外にも思えた。
「来年はこのサイズもう着られないよ…今、凄い勢いで背が伸びているから」
絶対自分は追い越されるよなあ、とアムロがさり気なく呟く。
「初めてネオ・ジオン軍の軍服を着た感想は……聞くまでもないか」
ムスっとしたままの息子の表情にシャアは苦笑じみた表情で唇を吊り上げた。
「…俺は…まだ早いと思うけど」
「私も15くらいまで待てばよいと思っていたさ…しかし周囲があまりにも煩いのでね…仕方がない」
他人事の様にも聞こえる台詞に、アムロは傍らのシャアに冷たい視線を送る。
「何事にも『独裁的』な貴方にしては、随分と消極的なご意見だね〜」
「そう言ってくれるな…奥様」
妻のキツい言葉と冷たい視線に心底困った様な表情で、その細腰を慣れた手付きで抱き寄せた。
「確かに政治的な思惑が絡む事が君には許せないのだろうが…幼いうちに体験しておく事も貴重かと思う…だから機嫌を直してくれ」
そう言って愛しい妻に幾度かのキスを送る。

……あーあ……またかよ……
物心ついた時…何だって父さんはこんなに母さんにくっついてばかり居るのだろう??と素直に疑問に思った。
この邸の中では、シャアは重要な仕事をしている時以外は…大抵アムロの側に居る。自分がアムロと2人で何か遊んでいる時もほとんど割って入ってくるし(…とカミーユには思える)…アムロの膝に乗りたくて母の元を訪ねると、既に父が枕として独占したりしてたりして…泣きながらそれを奪い返した事もある。父の事は嫌いではない…はずなのだが、幼いカミーユには大好きな母と2人だけにさせてくれない「敵」となっていたのだ。
ある程度成長してくると、もう容赦するつもりは無いのか、父は何事に於いても自分に対してとても厳しくなった。新興国の強い指導者として、常に冷静で全く隙も甘さも見せない、と言われている男だ。自分の息子にも厳しいのは当然だろう。
しかし…母の膝の上で甘えるあの鼻の下の延びた姿(…とカミーユには見える)…国民が見たらどう思うだろーか??と考える若干13歳のカミーユ少年である。
ああ…どうして最近、こんなにも父親にムカつくのだろう?
大好きな母が絡むトコロが…自分は嫌なのか…??

「謝るならカミーユに謝ってよ」
ね?とカミーユに問い掛けるアムロである。
「そうだな…」
と言ってアムロから離れるとシャアはカミーユの目の前に立った。
端正な顔の中でも一際目を引く蒼氷色の鋭い視線と、その逞しい体格を包む緋色の軍服姿…本当に威圧感がある。息子であっても緊張するのは仕方ない。ずっと見上げているのも首が痛いしっっ。
「カミーユ…お前にとって今日という日は、ネオ・ジオン次期総帥としての自覚を持つ日だ。その意味を身をもって知ると良い…男なら目を背けるなよ」
シャアはそう言うとカミーユの濃紺の頭に軽く手を置き、その大きな掌で幾度か撫でた。
………それだけ?……ぜんぜーん謝ってないじゃないかーっっっ!!
抗議の言葉を言ってやろうかと思った時に、出発の時間が来た、と執事が告げに来たのだった。

 

階下には父と母…それぞれの副官であるナナイ大尉とギュネイ中尉が待っていた。
「まあーっっ…カミーユ様、とても良くお似合いですわっっ」
(いやーんっこの歳にしてこんなに…?!将来はきっともっと……ああっやはりとーっても良い男になりそうっ♪)…と少々アレな感動もして素直にナナイが声を上げる。
しかしムスっとしている表情がいつもに比べて尋常で無い様子に見えるカミーユに、ギュネイの方は首を傾げた。
「いつも以上にご機嫌ナナメですねー…カミーユ様」
彼がそっとアムロに耳打ちすると、クルリと振り向いたカミーユが
「うるさいぞっっギュネイっっっ!!」
と叫んでギュネイの向こう脛に思いっきり蹴りを入れた。
「こらっっカミーユっっ!」
アムロが怒ってもツンと向こうを向いてしまう。軽く溜息を付いて、アムロは自分の副官に詫びを入れた。
「ゴメンよ…ギュネイ」
「い、いやっっ…全然大丈夫っス!…カミーユ様の蹴りには慣れてますからっっ」
痛みに必死で耐えているギュネイは、普段からカミーユの遊び相手を務めている故…こういう攻撃も全く珍しくは無いのでそれは気にならなかったが、いつもはあまり感じられない種類の苛立ちを「王子様」から感じて、それが少々不安となったのだが…。

 

父を見送ってから、別のリムジンエレカに母と一緒に乗り込む。
カミーユはピタリとアムロに身体を寄せてきた。小さい時はいつもこんな様子だったが…最近ではここまで甘えてくるのは珍しい。
「……母さん……何だかイヤなカンジが…する…」
微かに震える息子の身体を何度も撫でて、アムロは落ち着かせようと殊更優しく囁いた。
「大丈夫…カミーユ……俺がちゃんと付いているから」
大好きな母アムロに抱き締められても、キスをされても…心が全く落ち着かない。それが自分には信じられない。こんなに「不安」で「怖い」のは初めてだ……とカミーユは吐き気さえ覚えてきた。
そんな息子の様子に、アムロもカミーユとは別の「不安」を感じてくる。
……やっぱりまだ早過ぎるんだ……これじゃ「あれ」の全てを受け入れてしまう…耐えられるのか?カミーユに……

不安な様子の母と息子を乗せたリムジンエレカは、ただ静かに目的の場所に向かって行くのだった……

 

後半へ

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カミーユが本当に2人の息子だったらどーなんだろう?と軽い気持ちで書いてみたら…
何だか楽しくて…情け無い妄想が止まらんのですっっ!笑って下さい!(泣っっ)
後半を11日にUPして完結させますーはい… 
(2009/11/9 UP)