病は気から

その5

「はあああ、あああ!いやあぁ〜〜〜あ〜〜!!」

プブブプ〜〜〜〜!ブフォブビチブチッ!!ブ〜〜〜〜〜ッ!

まことの目の前で、爆音と共に始まった下痢便脱糞。
まことにも、あかりにも信じられない結末。

まさか、自分の家で、お漏らしという結末を迎えるとは、
そんな醜態を友人の前で晒してしまうとは、
そして、そんな友人の醜態を見てしまうとは。

「ああああ〜〜〜っ!…ああぁ。はあ…、はあああ…」

いくら叫んだ所で、脱糞を止めることは出来ない。
それを隠すこともできない。

ひとしきり叫んだ後は、もうなす術もなく、
あふれる汚物の生暖かい気色悪さと、
脱糞を耐えまくった苦痛からの解放感という、
相対する感覚に身を任せながら、その終わりを待つしかなかった。

 

ブブブプッ!ブジュ!ブビブジュジュブッ!

一気に噴出した下痢便は、あっというまにブルマの中のパンツ一杯になる。
なおも止まることなく下痢便を噴出させる肛門を、
尻の割れ目に溜まった下痢便が塞ぐ形となり、
それでも噴出しようとする下痢便がパンツの中で、より一層醜い音を奏でる。

ヘソまで隠れそうな大きめのパンツも、
その上からブルマでピッチリと押さえつけられていると、
下痢便をいつまでも溜めておくことは出来ない。

まず、下痢便に多く含まれる水分が、パンツに染みていくのだが、
下痢便の噴出はそれよりも早く、
尻に溜まっていた下痢便が、後から噴出する下痢便に押し出され
横から腰を進み、そして、下から股間にも進んでいく。

このまま、あわやアソコにまで、
陰毛にまで下痢便が進んでしまうかと思われたが、
それは、下痢便と同時に漏らしてしまったオシッコが、それを防いでいた。

ようやく、下痢便がパンツを茶色く染め始めたときには、
あかりのパンツの全面は、既にオシッコが完全に染み渡り、
もはや渇いている箇所は無くなっていた。

 

下痢便と同じく、勢い良く放たれたオシッコは、
せき止めたダムの水を解放したかのように、激しくパンツ内に溢れかえり、
すぐさまブルマにも染み、
シャツにまで、スカートにまで、染み上がっていく。

やがて、完全にオシッコを吸い取り、
グショグショになったパンツとブルマとスカートは、
それぞれがピッタリと張り付き、あかりの尿にも完全に密着、
容易にオシッコの進出を許すようになった。

ジワ〜…、ボタ、ボタボタボタ…ダ〜〜〜〜、ダバダバダバッ、

スカートの股間のあたり一面に、オシッコが染みていき、
やがてそこからチョロチョロとオシッコが噴き出し、床に雫が垂れる音がするや、
すぐにオシッコが勢い良く放物線を描いて飛び出し、
床に落下する音が下痢便の音に混じって響くようになる。

スカートからオシッコを出しているだけでなく、
大量のオシッコがブルマから溢れ、幾筋もの雫が太股を濡らし、
白い靴下を、黄色く染めていく。

 

その間に、パンツの中に溜まりに溜まった下痢便も、
すでに外へ向かって染み渡り、ブルマの尻をしっとりと湿らせる。
ブルマが吸いきれない下痢便の水分は、
やはりオシッコと同じく太股を伝わり、所構わず垂れるオシッコの雫と交わる。

もうブルマに染みることもできず、太股を伝わっていくこともできない、
行き場を失った水下痢便と、大量の下痢軟便が
今度はパンツを、ブルマを膨らませていく。

ブシュシュ、ブブプブッ、ブブ、ブヒィ…

今もなお、醜い音を響かせながら溢れでる下痢便が、
もうそれでいっぱいのパンツの中に、吐き出される。
パンツからブルマに染み出すだけでは追いつけない、下痢便の溜まる早さ。

きつめのブルマとはいえ、これ以上
下痢軟便を押しつぶしているのには限界がある。
ついに下痢軟便の量が、ブルマの生地を伸ばすほどになったのだ。

見るだけではほとんど分からないが、
確実に、ゆっくりと、
下痢便が染みて、より黒くなったブルマが膨らんでいく。

最も膨らんでいくのは、尻の下側あたりである。
やはり、そこが一番隙間があるからであろうか。
まるで、尻が大きくなっていくかのように膨らんでいくブルマ。

やがて、後ろに膨らんでいくブルマは、
今度は、溜まった下痢便の重みに耐えかね、下に落ちていく。
ずっしりとした、見ただけでその重みが分かりそうな
重量感のあるブルマの垂れ下がり方である。

オシッコのグッショリした湿り気と、
下痢便の、ドロドロとも、グチャグチャともした感触。
あかりの腰は、すべてが不快感に犯されていたが、
あかりには、その不快感が分からなかった。

 

下痢便とオシッコがついに放たれ、
なす術が無くなったあかりは、もう何も考えることが出来なくなっていた。

果てしなく続く脱糞放尿。

あかりは、無意識に、何もかも考えないことによって、
トイレ以外の場所での脱糞という恥ずかしさと、
高校にもなって、トイレに間に合うことの出来なかった
情けなさという無力感から、逃れようとしていた。

そうして、その意識が薄まるにつれて、
ようやく開くことの出来た肛門から感じる解放感が、
あかりの意識を支配していった。

目に浮かんだ涙、ゆがんだ口元。
今にも泣きそうであった表情が、元に戻っていく。
嗚咽のような声も徐々に治まり、
呼吸が静かになっていく。

ぼんやりと半開きなままの口は、脱糞という行為が、
いつのまにか快感に変わっていることを示していた。

他人にとっては、ほんの少しの時間であるが、
あかりにとっては、下痢便を我慢していた、あの苦闘の時間は、
とてつもない長さに感じていたはずである。

トイレの目前で、お漏らしという形とはいえ、
ようやく肛門を、尿道を開放することが出来た今は、
その苦闘の時間が長かった分、
受ける快感は、その苦闘に報いるかのように大きかった。

その快感を、ようやくあかりは気付いてきた。
羞恥心から逃れようとすることによって、
何も考えないことによって、
快楽という、人間の本能を素直に感じることが出来たのである。

さすがに、微かに残る自制心が、
快感に顔を緩ませる事をさせなかったが、
全くの空白となったあかりの頭の中は、
恍惚感のみが存在してるのであった。

 

プルプルと、身体を小刻みに震わせているのは、
その恍惚感を示しているのであろうか。

だが、その姿は、周りから見れば、
悲壮感しか受けることは出来ない。

まるで何も着てないかのように、下半身をあらわにして立ち小便をしてるかのように、
スカートの股間のあたりから、一直線に放たれるオシッコ。
服を着たままオシッコをしているあかりのその姿は、
あまりにも悲しく、哀れで、悲惨。
そして、あまりにも情けなく、無様で、マヌケでもあった。

 

あまりの悲惨な光景と音に、完全に動きが止まってしまったまこと。
何かを言いたくても、開きかけた口がピクピクと動くだけで、
伸ばした手も、治まるところを失い、痺れたように震えている。

一歩、二歩、階段を後ずさりする。
そして、後はそれ以上足も動かなくなってしまう。

顔を背けることもできない、目を伏せることもできない。
もはや、完全に体の神経は止まってしまったかと思われたが、
その目は、首は、動かなかったのではない。
ある一点に、
廊下で脱糞しつつ、オシッコを放っているあかりの姿に、
すべての意識が集中していたからなのであった。

何も思わない、何も分からない。

その目は、あかりの顔から足下まで、脱糞中のその行動を
何一つ見逃さないと見つめ、
首は、見たくない、見ちゃいけないというまことの微かな意識を無視し、
顔を背けさせることをしなかった。

しかし、それこそがまことのしたかった、本能の行動なのかもしれない。
なぜならば、無意識のなかでまことはその光景を、
頭の中に完璧に刻み込んでいるからであった。

まことの理性が、その事実を無視してはいるが、
その記憶は、確実に刻まれていくのである。

 

そうして、二人しかいない静かな空間に、
あかりの下痢便の音のみがこだまする時間が、延々と続く。

しかし、腹痛をいつまでも堪えることが出来ないように、
下痢便もまた、永遠に続くものではない。

ブプブッ、ブブブゥ…、ブピ…

すでにオシッコの流れは止まり、
濡れたスカートから雫が垂れるのみだった頃、
ようやく下痢便を出し尽くしたあかり。

二人に、本当の静かな空間が訪れたとき、
あかりは、突如正気に返るのであった。

「…………!!」

恍惚から一変。我に返り、
自分のすぐ下の水たまりを、腰に残る不快感を、
そして、すぐ横で、呆然とした表情で自分を見ているまことに気づき、
いままで何とか逃れていた羞恥心に、一気に火がついた。

(お漏らししちゃった…!ウンチを…お漏らししちゃった…!)

ただ漏らしたというだけではない、
他人にその姿を見られてしまった。
たった一人とはいえ、あかりには、その恥ずかしさが劣る事はない。

(ああ…、ああ…あぁ…)

カーッ!と音がしそうなぐらい、あかりの顔があっという間に
耳まで真っ赤になっていく。

まことの方へ向けていた顔を背け、訳も分からずに正面を見る。
どこを見ればいいのか分からなかった。
いくら視線をそらしても、まことの視線を痛いほどに感じる。

今すぐ逃げ出したい。
穴があったら入りたいとは、このことを言うのか。

気が動転し、心臓が激しく高鳴り、
自分の気持ちを制御できなくなる。

またもや、泣き顔に戻るあかり。
瞬く間に顔がくしゃくしゃになり、大粒の涙がボロボロと溢れる。
嗚咽を始まるや、すぐにそれは鳴き声に変わっていった。

「うぇ…、う、うっ、うええええぇぇぇぇぇぇぇん!!」

呆然とするまことを正気に戻すほどの、
耳をつんざく大きな鳴き声。

いつの間にか顔は天井を見上げ、
溢れる涙を両手で拭いながら、激しく鳴き声を上げる。

どうしたら良いのか分からない。
下痢便をお漏らししてしまったこの事態を、どう収拾すればいいのか、
気が動転したあかりには、いや、気が動転してなくても、
この場面でしっかり次の行動が出来るほど、
あかりは強くはない。

この状態から逃げる。すなわち大声を張り上げて泣くことが、
あかりに出来る唯一の逃避行為であった。

「うわあああぁぁぁぁん!う、うぇ、うえええぇぇぇぇん!!」

大声を上げる。
一心不乱に、すべての意識を集中させることによって、
恥ずかしさから逃れる、幼稚ともいえる逃避行為。

もし、これが町中だったら、どうなるのであろう。
大声を上げるあかりを、冷ややかな目で見つめ、
誰も何もしてくれない。誰も救いの手を差しのべてはくれない。

泣く力も失せたとき、逃避することもできなくなった時、
一体、あかりは、どうするのであろうか。

呆然と、その場に立ちつくしているのであろうか。
急いでその場から逃げるとか、
応急の身繕いを行うとか、できないのであろうか。

あの時も、中学生の時も、そうであった。

お漏らしの後、教室の中で大声を張り上げて泣きじゃくるあかりを、
教員はそこから連れだそうとした。
しかし、教員の手が自分の身体に触れると、
あかりは、その手を払い、ますます大声を上げて泣きじゃくる。

自分を掴もうとする敵から逃れようと、あかりは、
教員が必死になればなるほど、
周りの目もお構いなしに暴れだし、
ようやく抑えられたときは、もはやその声は泣き声ではなく、
悲鳴にも似た、叫び声になっていた。

だが、その逃避行為こそが、
あかりが今まで頑張っていられた力でもあった。

年頃の女性のお漏らし。
その恥ずかしさは、他人の及ぶところではない。
普通なら、この時点で女性の人生は終わってもおかしくはない。

これからは、常にこの心の傷と共に
生きていかなければならない。
さらに、学校で、心ない人間にこのことを嘲笑され、
友人を失い、学校をも変えなくてはならない可能性も高い。

周りの人間に、自分の位置は一気に下げられ、
まるで下等生物でも見るかのような目で見られる。

あかりも、それを受けてきた。
醜い侮辱の言葉に、遠ざかっていった友人。

常にあかりの意識の中にある恐怖。
そして、あからさまに自分を避けるようになる友人に
もう気付きたくはないと、
あの時、トイレの前で鉢合わせした、
一番親しかった友人に、こう声をかけた。

「もう、私と…一緒にいない方がいいよ…」

親しいだけに、自分の側にいてほしかったが、
その友人まで、自分の友人というだけで、馬鹿にされることが、
そして、それに嫌気がさして自分を避けられてしまうのが、
そうなってしまうのが嫌だった。

友人は、多くを語らず、ただ「分かったよ」と言うだけであった。

彼女が、あかりのことをどう思っていたかは分からない。
ただ、彼女にまで避けられる、最悪の事態を、
自らの意思で、「わざと」離れてもらうことによって防いだのであった。

独りぼっちになった毎日を、
暗く、地味な性格になったとはいえ、転校もせずに登校を続け、
高校入試もなんとか乗り切れたのは、
あの大泣きによって、その時の記憶を忘却し、
曖昧に出来たからである。

そのおかげで、その時のお漏らしの瞬間を思い出さず、
最も恥ずかしい場面が頭によぎることがなかったのが、
一応は、いままで平常を保つことが出来た理由である。

 

「あ、あかりちゃん…」

あかりの大声に、正気に戻ったとはいえ、
まことは、まだ少し呆然としたまま、あかりを見つめていた。

お漏らしして泣くその姿は、とても高校生に見えない。
まるで幼児のような、そんな感じがした。

ボーっとした頭に、あかりの泣き声が響く。
そして、それがある光景を思い出させていた。

 

「うえぇぇぇぇぇぇん、えええぇぇぇん」

「まこと、まこと?…ああ、ウンチお漏らししちゃったのか」

「ふうぅ、うっぐ、ひっく…」

「ほら、泣かない泣かない…。しかたがないなあ、まことは」

「ひっく、ぐぅ、うぐ、ううぅぅ…」

「どうしてトイレに行きたいって言ってくれなかったんだ?言ってくれなきゃ、パパには分からないよ」

「…だって、…だってぇ…」

 

遊園地での光景。
幼いまことを慰めながら、優しく抱きしめる父親とまこと。

幼稚園のころの、まだ可愛らしく、泣き虫であったまこと。
フリフリのワンピースが、それを一層強調している。

その幼いまことは、今のあかりのように下痢便をお漏らししていた。
同じように、大声を上げて泣くまことを、
あやして、優しく包んでくれる父親だが、
まことは、父親を信用してなかった。

現在は、母親とは離婚し、まこととは一緒に暮らしていない父親だが、
当時、その父親は家にいないことが多く、
まことがその顔を見る機会はほとんど無かった。

幼い子供には、たまに合うだけの人間に
パパだよと言われても、完全に信じ切れないものである。

どんなにお尻が切羽詰まっていても、
そんな信用できない人間に、トイレを我慢していることを告げられなかった。
たとえ、相手が自分のことを可愛がっていても、
どうしても警戒してしまうのである。

(アタシと一緒だ…あの時の…)

一緒にいる相手が信用できないから、トイレに行けなかった。
だから、限界が来てウンチを漏らした。
自分のことを信用してくれてないから、あかりはウンチを漏らした。

せつなさと、無力感。

自分では、これほどまでに気を使ってきたつもりでも、
あかりには、未だ警戒されていたのだ。

それなのに、浮かれまくってあかりの異常にも気付くことが出来ず、
結果として、自分が、お漏らしの原因となってしまった。

まことは、自分が情けなくなった。
しかし、あの時の自分のように、優しくしてくれる相手を警戒し、
お漏らしという恥ずかしい事態を招いてしまったあかりへの、
同情と愛慕の念が、同時に沸き上がってきたのであった。

ゆっくりとあかりに近付くまこと。
拡がったオシッコの水たまりが、靴下に染みるのも気にせずに。

そっと手を伸ばし、あかりの体を自分の方へ向け、
優しく包み込むように抱きしめるまこと。

あかりのスカートを濡らすオシッコが、
自分のズボンを汚すのも気にせずに。

あかりから立ちこめる下痢便とオシッコの臭気も、
全く気にならない。

ただただ、あかりが可愛くてしかたがない。
自分が何とかしたい。あかりを守ってあげたい。
あかりの心の傷を、あかりの悲しみを癒したい。
誰にでも警戒してしまうあかりに、信頼されたい。

「どうして…どうしてトイレに行きたいって言ってくれなかったんだ…」

自分の無力さへの嘆きと、あかりへの気持ち。
あの時の父親も、まことに対してそう思っていたのであろうか。
あの時の父親と全く同じ言葉を、まことは思わず呟いていた…。

その6

中学の時、
お漏らしという行為のあまりの恥ずかしさに我を失い、
教室から連れ出そうとする教師の手に怯え、
大声を出して暴れたあかり。

そのあかりが、今はまことの胸に顔をうずめている。
それにより、多少声は抑えられてはいるが、
大泣きしてることには代わりはない。

驚くべきは、錯乱状態で大泣きしていながら、
まことの胸に、素直に顔を預けていることだ。

 

まことは、あかりの激しい大泣きを、
耳に、そして胸に感じながら、
ただじっと、あかりを抱きしめている。

グショグショに濡れたスカートが、まことのジーンズに密着し、
スカートに染みた、今なお床に滴るオシッコが、
まことのジーンズにも染みていく。

太股のあたりに感じるヒンヤリとした湿り気。
ジーンズが、あかりのオシッコを吸っているというのが分かる。

一瞬その感触に驚いたが、まことは
あかりを離そうともせず、染みるままにまかせていた。

(こんなの、辛くない。…あかりちゃんはもっと辛いんだ)

それに比べればこれぐらい。という気持ちと、
意地でも嫌がってはいけないという、あかりへの気遣い。
何としても、嫌悪の表情だけは出したくなかった。

あかりを、安心させるために。

オシッコで濡れたぐらい、平気だよ。
直接あかりに言うわけではないが、
とにかく、その気持ちを示したかった。だから耐える。
いや、「耐える」と感じてはいけないと、まことは思ってるかもしれない。

その気持ち、あかりを思う気持ち、あかりを気遣う気持ち。
その心が、あかりを抱きしめることが出来た理由ではないだろうか。

決して、まことの腕力が強いから
あかりが逃れることが出来なかったからではない。

力強さだけではない、がさつなまことなりの優しさ。
そっと伸ばしたその手、その腕には、
あの時の教師の腕とは違う、温もりが確かに存在していた。

 

やがて、あかりにも泣き疲れがおとずれる。
泣き声も徐々に治まり、小さな嗚咽へと変わっていく。

まことは、その変化を逃さず、慰めるべく行動を起こす。
抱きしめている手で、あかりの背中をゆっくりとさすり、
ポンポンと優しく叩く。

「あかりちゃん…。大丈夫だよ、…もう、大丈夫だよ」

あかりを驚かせないように、繰り返し小さく声をかけ、
あかりの状態を確かめる。

はじめこそ、返事がなかったものの、
すぐに、あかりはまことの声に反応する。

「私…どうしたら…どうしたら…」

まことの胸に、顔を押しつけたまま、あかりは声を出す。
自分のしたことも、今の状態も分かっているようだが、
恥ずかしくて顔を上げることが出来ないようだ。

「…気にしなくていいよ。アタシが、何とかするから」

自分が、この状態を全部面倒見ると、
汚れた床も、服も、下着も、そして、あかり自身も、
自分が何もかも綺麗にしてあげると、まことは声をかける。

「あかりちゃんは、何もしなくていいから…アタシに任せてくれればいいよ」

そう言いつつ、ゆっくりと、抱いている腕を緩め、
あかりから一歩後退するまこと。
ちょこんと一人で立っている状態になったあかり。

涙で濡れている目元を拭い、おそるおそる顔を上げると、
目の前には、優しく微笑んでるまことの顔がある。
あかりには、それがまるで母親が微笑んでいるかのように見えたのであった。

「アタシに…任せてくれるね?」

まことの言葉に、
あかりは、まこととは逆に、まるで子供のようにペコリと頷く。
それを見たまことは、さあ綺麗にするよと、慌ただしく動き出すのであった。

 

「まずは汚れた服をぬいじゃおう。そのままお風呂にいったら、床に汚れがついちゃうからね」

洗面所から雑巾とタオルをかき集めて来たまことは、
まず、この場で汚れた服と下着を脱がせることにした。

あかりは何もしない。ただ立ったまま、
まことの言われるままに、体を動かし、服を脱がせてもらう。

すっかり湿ってオシッコの色に染まった靴下を脱がし、
次に、ほぼ全面にオシッコが染み渡ってしまったスカートを下ろす。

すでに脚はオシッコまみれの上に、
水下痢便もかなり垂れてきているが、
それでも、一応はそれ以上汚させないと、慎重に脱がせていく。

特に、スカートはまことが指でつまんだだけで、
オシッコがにじみ出し、その雫が床に垂れる。

「よし…まず右足をそっと上げて…。そう、じゃあ次は左足を…」

出した後の、時間が経ったオシッコのアンモニア臭がツンと鼻を突く。
両手の指をオシッコまみれにしながら、どうにかスカートを床まで下げ、
あかりに指示をしながら、スカートを脱がすことが出来た。

脱がした衣服を、持ってきたバケツの中に落とすたびに響く、
グチャッという音が、妙に気持ち悪い感触をまことに与える。

何となく手の臭いを嗅いでみる。
あらためてその臭いを感じてみると分かる、かなり強烈な臭い。
それがあかりの臭いであるとはいえ、さすがに表情が曇るまこと。

しかし、なぜか嗅ぎたくなる、その臭い。
何度も何度も、手の臭いを嗅いでは、その臭気に目がくらみそうになるが、
それでも病みつきになる、その臭い。

少しずつその臭いを吸い込んでは、徐々に鼻を慣らし、
慣れてくるや、改めてその臭いを、ゆっくりと嗅いででみる。

手の臭いが薄れてきたせいもあるが、
いまは普通に嗅げる、あかりの出した臭い。
だが、ふと気がつけば、まことの指示を待つ
あかりの姿が目に入り、変に思われてはマズイと、慌てて手を鼻から離した。

(あ…ブルマ履いていたのか)

かなり長い時間脱糞を続けていたはずのあかりだが、
どうして下痢便が床を汚してないのか、まこともようやく分かった。

 

「うわ…!これは…」

おそらく下痢便がたっぷりと溜まってるであろう、
ブルマとパンツを脱がす前に、まことは
あかりの後ろに回り、ブルマごとパンツを引っ張ってみると、
予想通りとはいえ、その中に広がる壮絶な景色に、
驚きの声を隠せなかった。

パンツの中から溢れ出てくる下痢軟便の臭い。
あかりからほのかに漂っていた、乾いたウンコの臭いとは違い、
あの時に嗅いだ下痢便の臭いをも凌駕する、
まさにあかりが出すことの出来る、最高の悪臭であった。

大きく、ゆっくりと溜息をつき、
この悪臭を受け入れようと気持ちを落ち着けるまこと。
臭くてたまらない。
オシッコとは比べ物にならない悪臭。

これを受け入れることが出来るだろうか?
湧き起こる不安の気持ちを、必死に消す。
そして、その場でしゃがみ、あかりの腰に手を回す。

「あかりちゃん…、脱がせるよ…」

 

(仕方ないか…。せめて、前は見ないようにするから、お尻は許してね)

いよいよブルマごとパンツを下ろそうというときに、
まことはハッと気付く。
パンツを下ろせば、あかりは下半身をさらけ出してしまう。

当然あかりの秘所、アソコも見えてしまうのだが、
仕方のないこととはいえ、さすがにまことも罪悪感を感じるが、
たまたま後ろに回っているときだったので、
お尻ならまだ良いと思い、
それよりも、早く下痢軟便のたっぷり溜まった
パンツを脱がせることが先決と、手を下ろし始めた。

「ゴメン、これじゃあどうしても汚れちゃうけど、我慢するんだよ」

それでも、あまり足を汚さないように気を使って
ブルマとパンツを下ろす手が、思わず震える。

まずは、あかりのお尻が丸出しになる。
ピンク色をした…とはいかず、
そのお尻は、附着した下痢軟便に茶色く染められ、
泥まみれになったかのように、お尻の表面は分からなくなっていたのである。

ホッとしたような、残念なような。
だが、さすがに、今のまことは一生懸命なので、
何も感じていないようだ。

 

ようやく、パンツを脱がすことが出来た。
やはり、あかりの足は、下痢軟便まみれになり、
泥んこ遊びをしていた子供のようになってしまった。

まことは、あかりにタオルで腰を巻かせると、
濡れ雑巾で足下だけをさっと拭き、
いそいそと風呂場へ連れていく。そこには洗濯機もある。

他人の風呂場だが、家事に慣れっこなまことには、
見ただけで操作は分かる。てきぱきと急いで火をたき、
シャワーから湯を出して、脱衣場へ戻る。

さすがにそれから先は、まことが洗うわけにもいかなかった。
あかりに、シャワーで身体を流すように言って、
浴室へ行かせると、汚れた下着の洗濯に取りかかったのであった。

 

浴室の外から、ごうごうと聞こえてくる洗濯機の音。
そして、自分の身体の汚れを流すシャワーの音。
まことは洗濯機を動かすと、廊下の汚れを落としにいき、
声は聞こえない、声が聞こえなければ、存在を感じることもない。

一人きりになったあかりは、断続的に聞こえる洗濯機とシャワーの音に
幼児退行から目を覚まされ、今こそが、本当のあかりになっていた。

お湯を流しても落ちぬ、プンプンと臭うオシッコ、ウンコの臭い。
シャワーのお湯に溶け、足をズルズルと垂れ、
タイルの上を流れていく下痢軟便。

正気に戻ったあかりに、
その臭いは、光景は、あまりにも辛い現実を示してしまった。
お漏らしを、ウンチをお漏らししてしまったという現実を。

ここまでウンコの臭いをまったく感じてなかったのに、
今は、それを嫌でも感じてしまう。

この臭いの元が、
自分の尻から足下にかけて大量にこびりつき、
せっかく乾いて臭いが薄まったのが、
湯に溶けたことによって、また元に戻る。

普通、この臭いはトイレでするものであって、
風呂場でウンコの臭いがするなんて、常識ではありえない。

あかりは、自分は、普通ではないことを
してしまったという、自責の念に駆られる。

しかも、単に臭いの問題ではない。
そもそも、体にウンコがベットリとこびりついていることが
普通ではない。おかしいというよりも、情けない。

(私…私、高校生にもなって…)

この歳にもなってウンコを漏らし、
さらにそのショックで我を失い、大声を張り上げて泣きわめき、
自分で後始末をすることなど、何一つ出来なかった。

それを、同い年の友人に何から何までしてもらい、
自分では服さえも脱げない。

そもそも、どうやって後始末をするのかさえ、分からなかったあかり。
そんな自分を優しく抱き、慰め、汚れた衣服を脱がし、
シャワーの準備をし、衣服を洗濯してくれたまこと。

あまりにも違う。情けない自分とまことでは、
天と地ほども差がある風に思えてしょうがない。

(木野さんはあんなにしっかりしてるのに…私は…)

まだ完全に下痢軟便も落とせてないのに、
よろよろと浴室の壁によりかかると、ズルズルと体が落ちていくあかり。

自分の情けなさに心底悲しくなり、思わず出た涙が溢れる。
ついには、またもや大声を上げて泣き出していた。

今度は、逃避行為での涙ではない、
本気の涙に、本気で悲しむ泣き声、
この行為は、高校生のあかりが、行ったのである。

心配でちょこちょこ様子をうかがいに着ていたまことにも、
あかりの泣き声は聞こえた。

だが、まことも、今度は何もしなかった。
泣きたいだけ泣かせてあげる。それが一番と判断し、
声をかけずに、黙って浴室から離れた。

 

廊下の掃除も終わり、その場で
あかりが浴室から出てくるのを待つまこと。

改めて自分の服を見ると、
あかりの服から染み込んだオシッコで湿ったジーンズの跡や、
そこから臭ってくるアンモニア臭が思ったよりひどいことに気付き、
濡れハンカチでその部分を擦っている時に、あかりが浴室から出てきた。

あかりは、まことがあかりの部屋のタンスをあさって
引っぱり出してきた衣服に着替え、
いかにも悲しげな表情でまことの前に現れた。

「…あ、出たんだね。体は綺麗になった?」

まことの言葉に、あかりは俯いた顔を上げようとはしなかったが、
頷いての返事だけはした。

見るだけで分かる、相当な落ち込み様に、
まこともそれ以上会話が続けられない事に困り、
ひとまず後始末も済んだと、あかりに告げ、
荷物をまとめて帰ることにした。

 

自分が荷物をまとめている間も、
そして玄関から出ようとしているときも、
あかりは、ずっとついてきてくれた。

お漏らしのショックを堪えながら、
自分を見送ろうとしてくれるあかりのやさしさに、
まことはキュンとなる。

中学の時は、どうやってそのショックを乗り越え、
ここまで生きてきたのだろうか。

今だって、目撃されたのはまことだけとはいえ、
ショックの大きさは変わらないはずだ。

本当だったら、ずっと泣いていたいはず。
まことの前に顔を出すことだって辛いはずなのに、
こうやって見送ってくれる。

可愛らしさと、か弱さの中に眠る、あかりの小さな勇気。
改めてそれに気付くと同時に、自分が守りたかった物に気付く。
勇気という、あかりの中の小さな火を、
中学の時のショックを乗り越え、今まで耐えてきたその心を。

ここで消してしまいたくはない。
まだ、まことはあかりの笑顔を見たことがない。
恥ずかしさを堪えてきたのと引き替えに
失ってしまったのであろう笑顔を、取り戻して見せたいと、
まことは思ったのである。

「あかりちゃん、今日はゴメンね。…でも、アタシは絶対にあかりちゃんを裏切ったりはしない」

今日のことは、自分が言わなければ誰にも知られない。

自分は言わない。だから、今日のことは無いものと一緒だと、
まことは力説する。

「アタシには、あかりちゃんの辛さを本当に分かってあげることはできない…」

でも、だからこそ自分はあかりのことを守りたい。
その辛さを、感じなくさせることぐらいはできるかもしれない。

「アタシは、あかりちゃんの親友になりたい」

あかりのためなら、何でもしてみせる。
だから、すぐには無理かもしれなくても、
自分を信頼してほしい。安心できる親友として。

「いや、アタシがさせてみせる!あかりちゃんが信頼してくれるように、アタシは頑張るよ!」

そう言って、ドンと胸を叩き、まことの力説は終わった。

だが、やはりあかりは顔を上げてはくれない。
見送ってはくれるものの、恥ずかしさは未だ強い。

しかし、そんなあかりでも、少し変化を見せていた。
まことの言葉に、本当は顔を上げたいのだが、
恥ずかしくて上げれない。でも、その言葉は嬉しい。

体をモジモジとさせている姿が、まるで子供のように可愛らしい。

それだけ確認できれば十分だった。
まことは、玄関の方を向き、外に出ようとする。
だが、急に思いついたように振り返るとあかりに、こう声をかけた。

「明日…きっと学校に来るんだよ。アタシは…今まで通りだから」

辛くても、学校は行かなくてはなならない。
厳しいことも言わなくてはならないが、
自分がいるという、やさしさも含めることも忘れない。

それだけ言うと、まことは玄関を出ていった。

まことがいなくなった玄関で、
あかりは、しばらくの間、ずっと立ちつくしていた。

顔を上げたあかりの、その目は、
先程まで、まことの顔があったところを見つめている。

まことがかけてくれた数々の言葉、
あかりは、心の中で、その言葉と会話をしていたのであった。

 

「とうとう持って来ちゃった…」

帰ってきたまことだが、なぜか自宅の前で立ち止まっていた。
手には、カバンの中から出したビニール袋が置かれている。

その袋の中にあるのは、
下痢便が大量に附着し、汚れきったあかりのパンツであった…。

 

あかりの家で、後始末をしているとき、
このまま洗濯機に入れてはマズイと、
ひとまず大量の下痢便をトイレに捨ててしまおうとした。

だが、トイレに行くと、なぜかまことの手が止まる。
早くトイレに流してしまえばいいのに、捨てられない。

なぜだか分からない。

どうして捨てられない?

あかりの恥ずかしいものを、早く消してしまわなくてはならないのに。

どうして…、え?勿体ないから?

そんなはずはないよ。いくら何でもこんな汚くて臭い物を勿体ないなんて。

いや、あかりちゃんのをそんな風に言ってはいけないんだ。

だったら、勿体ないかな…。

あかりちゃんが絶対に人には見せないウンチなんだから…。

でも、あかりちゃんにとっては、嫌なものなんだろうな…。

だったら、アタシがもらっちゃえばいいんだ。

そうだよ、それなら、あかりちゃんが
もう洗っても汚れの落ちないパンツを見て嫌な思いをすることはないし、
アタシは、誰もが見たことのない、あかりちゃんの出した
ウンチと、その臭い。そしてウンチつきパンツを手に入れることができる。

あかりちゃんも、気付かないだろうな。

貰っちゃおう…。

そうすれば、アタシは、誰よりもあかりちゃんに近付くことが出来るんだ…。

 

そうやって、何かに突き動かされたかのように
かすめ取ったパンツだが、
さすがに、帰り際のあかりへの力説の時から、
いわゆる自己催眠が解けてしまった。

(まだ大丈夫、これをどこかに捨てちゃえばいいんだ)

そう思っても、捨てられない。
臭いが漏れやしないかビクビクしながら電車に乗っても、
とうとう最後まで、それを捨てられなかった。

 

ここまで来たら、もう捨てることは出来ない、
湧き起こる興味を、まことは、抑えることは出来なかった。

あかりを守りたいが故に、あかりを好きな故に、
知りたくなってしまう。

偽善者と思われようとも、
あかりの恥ずかしいもの、隠したいものを手に入れたいという
この欲求は、止まらなかったのであった。

(その7へ続く)