晦 - つきこもり


 「つきこもり」と読みます、この字。試しにワープロで打ってみて下さい。まず出てきませんから。僕は仕方なく「みそか」と打って出しています。まあ、こっちの方がキーを打つ手間は少ないですが。
 ゲームの形式としては「学校であった怖い話」と同様で、六人の語り手の話を次々に聞いていくというものになっています。となると、語り手の個性にも期待せざるを得ないですね。そのあたりは下を見ていただきたいと思います。
 「学校〜」と違う点は、複数のライターの方々が語り部ごとに分かれてシナリオを書いていること。そして怖い話よりも不思議な話が多いという点でしょう(このあたりはオブザーバーの飯島健男さんも感じていたようです)。このあたりはどちらにもそれぞれ良さがあるということで。
 惜しい点をいくつかあげるならば、「分岐なしの七話目が多いこと」「『学校〜』での49&50番目のようなまとめの隠しシナリオがないこと」「七回忌の怖い話で死者が蘇るという設定があまり生きていないこと」というところでしょうか。まあそれでも楽しめるゲームではありますが。
 そして、このゲームを語るうえで外せないのがあの男の存在。そう、『風間望』です。学校だけでは飽き足らず、TV局、田舎町、通学路、病院、主人公の頭の中、結婚式場などあちこちに出没し、その人間とは思えない──と言うと語弊があるものの──バイタリティーで大いにプレイヤーを笑わせ……いやいや、怖がらせてくれます。主に違う意味で。



≪登場人物紹介≫

前田葉子
 高校入学を控えた15才。このゲームの主人公。どういうわけか「七回忌の晩怖い話の会」の司会進行のような役割を担っている。やはり、一番怖がりっぽいからか?
 泰明や和子は好きだが良夫や哲夫は苦手のようである。良くも悪くも「いかにもこの年代の女の子」であり、言葉の端々からもそれが感じられる。
 上記の通り泰明に憧れを抱いているようなのだが、残念ながらどう転んでもその想いが実ることはない。かと思えば、苦手なはずの良夫や哲夫に惹かれてしまうことは多々ある。うーん、女心はわからない。

前田和子
 葉子の叔母で、良夫の母。53才。
 さばさばした性格だが、一人息子の良夫に絡む重大事に関しては他のどんなことよりも優先しようとする。母としての感情は他のすべてに勝るようだ。
 場の雰囲気を保つことにはわりと気を遣っているようである。本家の妻として、また年長者としての責任感がそうさせるのであろうか。かと思えば、5話目のようなこと(降霊)をやらかして混乱を招いたりもする。まあこの場合、相手が相手だけにしょうがないかもしれないが。
 彼女の話の多くは「怖さ」よりも「切なさ」が伝わってくる。それも豊富な人生経験ゆえなのかも?

前田良夫
 葉子の従兄弟。11才。
 もういかにも“小生意気なガキ”なので葉子が「嫌いです」とキッパリ言い切るのも分かる気がする。しかしそこはやはりガキ、「好きな子にちょっかいを出したがる」という典型的な態度を随所に見せる。まだまだですな。
 彼の話は小学生という立場ならではのものが多く、切り口がとても面白い。「オバケ販売機」に代表されるような噂話の類も多く、そういう所にも小学生の視点というものを生かしていると感じられる。そのほか林間学校の話なども手の込んだ怖いものになっているのではないかと。

真田泰明
 東京のTVプロデューサー。33才。
 理想を掲げるテレビマンのようだが、実際はかなり腹黒い人のようでもある。視聴率至上主義なのか質の高い番組を目指しているのかいまいち分からないところがある男。
 職業柄だろうか、非常にバリエーションに富んだ話をするので、読んでいて飽きない。「テレビ局って結構、怪談スポットなんだよ」という話は本当のようだ。
 複雑に構築されたシナリオが多く、ライターの方の苦労が窺える。6話目などはかなり理不尽な作りという気もするが、どの話も手が掛かっているであろうぶん楽しく読めるものに仕上がっている。

山崎哲夫
 自称冒険家。28才。
 冒険家というわりには、国内での話が多いような気がする。まあ、先立つものがないと行きようがないだろうから仕方がないか? 普段はフリーターに近い生活だろうし……。
 今、最も熱い男(泰明・葉子談)だけに、冒険に関しては我を忘れて語りまくる。息切れすることもしばしば。血管が切れないことを祈るばかりである。
 葉子と心が通じ合ってしまうバッドエンドが多いということは、葉子のことが好きなのだろうか? でも「正美が好きだった」と言っているときもあるし……。「女性とはあまり交流を持たない」そうなので、もしかして誰でもよかったりして?

藤村正美
 看護婦。26才。
 霊や死後の世界にも造詣が深いようで、お祓いめいたこともできるようだ。人の生き死にに深く関わる職業だけに、いつの間にかそういうものが身についてしまったのだろうか。
 この人の語る話は、当然ながら病院が舞台のものが多い。もともと病院というのは怖い話がたくさんありそうな場所だから、彼女もネタには困らないだろう。そしてそんな話の内容に負けず劣らず怖いのがこの人自身。おそらく「晦」の語り部の中で最もアブナイ人である。話の本筋とは関係のないところで葉子に対して頻繁に精神的な苦痛を与えてくる、実に扱いに苦労する人。

鈴木由香里
 フリーター。20才。
 遠縁の親戚なのだが、どういうわけか葉子を気に入っているらしい。「乾いた怖さ」を感じさせる人で、何事につけても非常に冷めたところがあり、既に心のどこかで人生を投げているようにも見える。生きたいように生きている自由人で、ちょっとうらやましい気もする。まあ、生活は楽ではないだろうが。
 自らの経験したアルバイトが話のネタの多くを占める。その内容は多岐にわたるが、語り部の中でもえぐい話が結構多い。また、思わぬところで葉子のことを試したりもするので、油断がならない。



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