固い絆で結ばれてきた真田一族が、ついに敵味方に分裂した。
反骨と野望を胸に徳川に反旗を翻した父と弟。それに対し、徳川への忠誠を貫き通そうとする真田家嫡男の信幸。
ドラマは、父子対決、関ヶ原の決戦、そして真田本家廃絶……と、いよいよ波乱に富んだ急展開を見せる。
決裂・犬伏の陣
慶長五年(一六〇〇)、七月二十一日。
下野の国・犬伏の陣では、関ヶ原の決戦を目前に、真田家は最後の決断を迫られていた。
昌幸 徳川が勝てば、大事じゃぞ。
大坂が、もみつぶされてしまうわえ。家康の餌食じゃ。
信幸 まさかに――
昌幸 いま−いまこのとき、家康を残すのと治部(三成)を残すのとでは、どちらが豊臣家の御為になるか!?
信幸 父上! 豊臣家の御為と申すよりどちらが天下の為になりましょうや!
昌幸 天下じゃと――!?
信幸 父上とはこれより先、ふたたび天下取りの戦乱が続くことを望んでおられまするか?
昌幸 豆州! ……もうよい豆州。これで決まったのう。
左衛門左、わぬしは何とする。
幸村 父上とともに。
親子兄弟が敵味方に別れるのも、あながち悪しゅうはござるまい。−のう、兄上。
このとき真田昌幸五十三歳、信幸三十五歳、幸村三十四歳。真田家は、ついに敵味方に分裂した。