土の結晶が現れた。小山を背に、田を前に。
小説家はただ、千葉の古い民家風の空間、つまり大きな屋根の下、
奥へ奥へと連続していく空間を望んでいただけなのだが、
それがこの結晶の形態にぴたりと嵌った。
小説家は、内奥で光を発して浮かぶフロアの上で、小説を書くだろう。結晶内世界を見下ろしながら。
客人たちは広縁に座るだろう。眼前に広がる田に海を感じながら。
誰もいないとき、広縁は跳ね上げ式に閉じられ、家はただの結晶に戻る。
結晶はゆっくりと色を変え、やがてすべてを緑錆に覆われる。