「AOC」とは、”Appellation d'Origine Controlee (原産地呼称統制)”の略であり、同名の法律である「原産地呼称統制法(1935年制定)」(AOC法)の規定に基づいて製造されたワインに付与される称号のことです。AOC指定は、国立原産地名称研究所(INAO)という農務省の関係団体が管轄しています。
(注1) | フランスワインは、品質表示の点から、AOC、VDQS、ヴァン・ド・ペイ、ヴァン・ド・ターブルの4種類に区分されており、AOCはこの品質区分の最上位に位置します。
(注2) | ここではワインに絞って説明していますが、AOC制度はチーズ、蒸留酒等ワイン以外の農産物にも適用されています。数は少ないですが鶏肉(ブレス産が有名)、牛肉(カマルグ)で指定されているものもあります。
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AOCワインは、必ずその「原産地」がラベルに記載されています。通常、
AOC法は、農産物は原産地の個性を反映するものであるとの思想の下に、原産地とそこで生産される農産物を厳密に関係づけ、品質の保証を図ることを目的としたものであり、原産地とそこで生産される産品との関係性を明確化するために厳格な基準を定めています。基準は、生産区域の他にぶどう品種、最低アルコール度、最大収穫量、栽培方法、剪定方法、醸造方法等多岐にわたります。また、人間によるテイスティングテストも行われます。AOC指定の基準は、指定の対象となる原産地が地方、地区、村、畑と限定されるほど細かく厳しくなり、その分、品質の高い上位クラスのワインとみなすことができます。
例えば、ボルドーを例にとって説明しますと、
まず、ボルドー地方全体を対象とする「AOCボルドー」というAOCがあります。
次ぎに、ボルドー地方にはメドック、グラーブ、サンテミリオン、ポムロル等様々な地区がありますが、それぞれの地区を対象とした「AOCメドック」、「AOCグラーブ」、「AOCサンテミリオン」、「AOCポムロル」等のAOCがあります。
さらに、例えばメドック地区の中には数多くの村がありますが、そのうち「サン・テステフ」、「サン・ジュリアン」、「ポイヤック」、「マルゴー」、「ムーリー」、「リストラック」の6つの村については特に村名のAOCが認められています。
また、ボルドーでは村名のAOCがまでしかありませんが、ブルゴーニュではさらに限定的にグラン・クリュ、プルミエ・クリュの畑がAOCの対象になっている場合があります。
(注3) | 市場評価としては、「ムーリー」、「リストラック」は他の4つの村に比べてやや落ちますが、AOCとしては村名AOCということで6つとも同レベルです。 |
(参考) | ボルドーのAOCは57種類あります。一覧表はこちらをみてください。 ブルゴーニュのAOCは96種類あります。一覧表はこちらこちらをみてください。 |
上述のように、AOCの対象になるためには、「原産地」以外にも生産方法等に関する厳しい基準をクリアする必要があり、例えば、メドック地区のサン・テステフ村で生産されていても、「AOCサンテステフ」として必要なすべての基準を満たしていなければ、「AOCサンテステフ」ではなく下位のクラスのAOCである「AOCメドック」や「AOCボルドー」というAOCワインになります。
(注4) | AOC指定上の原産地名は、必ずしも行政区域としての地方、地区、村と正確に一致するわけではありません。例えば、ある村名AOCの対象地域には当該名の村以外にその周辺の村も対象地域に入っている場合があります。 |
なお、上述のようにAOCの中でも地域限定が強いほど格上ワインとなることから「AOCによる格付け(AOC classification)」という言い方がされることがありますが、"AOC"が法律で定められた生産地と製品の厳格な関係づけに基づく客観的なワインの品質保証制度であるのに対し、"格付け"は主として市場評価を中心としたより主観的なワイン(又は当該ワインを産するぶどう畑)の評価制度であり、両者は別の制度ですので、混同を避けるために「AOCによる格付け」という言い方は避けた方がよいでしょう。
特に、ボルドー地方においては、"AOC"と"格付け"は全く別の制度として併存していますので両者を区別して理解することは重要です。これに対し、ブルゴーニュ地方においては、"Grand Crus""Premiere Crus"といった畑に対する格付けがそのままAOCの分類に取り入れられており、AOCと格付けを一体のものと考えることができます。
格付けについて詳しくは、こちらを参照してください。