IONA Japan Tour 2001


日時:2001年2月17日
場所:渋谷On Air West

アイオナというバンド,ご存じない人も多いと思う。かくいうワタシもついこないだまで知らなかった。
ライブ・アルバムを購入したばかり。
バンド名は西スコットランド沖にあるアイオナ島に由来するそうだ。
現在のメンバーは,Joanne Hogg(Vo, Key, Gut), Dave Bainbridge(key, Gut, Bouzouki), Troy Donockley(Unilleann pipe, Whistles, Cittern, Gut, Vo), Phil Barker(B), Frank Van Essen(Dr, Perc, Violin, V)。
トラッド,プログレ,ポップスなど,多様な音楽性を持つバンドだ。
この日のライブ,休憩を挟んで,2度のアンコールを含めて正味2時間半を越える演奏。
素晴らしかった。一言で言い表すと,”清々しいステージ”。
このバンド,いくつかの引き出し(セールス・ポイント)があると思う。
その一つは,Troyのパイプやホイッスルと,Daveのエレキ・ギターとの美しいユニゾン&コーラス。
多くの曲に披露され,息があった演奏は,ホントに美しかった。パイプとエレキ・ギターの音色とがこんなに調和するものとは気が付かなかった。
もう一つの引き出しは,もちろんJoanneのボーカル。
ボーカルが良いという話は聞いていたが,清涼感が溢れ,抑制しながらも力強い存在感を示していた。ビウチフル(笑)。
3つめの引き出しは,このバンドだけが持つ清潔感,透明感,空気感みたいなものだと思う。
これはライブ・アルバムでも感じたが,生で見るといっそう強く感じた。とても爽やかなのだ。
最近のステージ等で見られる”過剰な低音”がなかったのも原因の一つかも。
4つ目は,確かな技術に裏打ちされたバランスの良さ,まとまり,一体感。
まったく破綻のない演奏は,休憩中にちょっとバンドとしての押し出しに欠けるかもと,感じたが,最後まで観たら,そんなことは吹き飛んでしまった。
5つ目は,とても真面目な点。
曲によって,メンバーの誰かの演奏を必要としない部分があったのだが,こういった場合,米国のバンドではたいてい暇なメンバーが引っ込んでしまう。
アイオナの場合,演奏しない人もずっとステージに居て,演奏を聴いているのだ。
メンバーのみならずお客さんも,とても一生懸命演奏を聴いていた気がする。
ライブが終わって会場を出るとき,例によって配布されたチラシがゴミとなって床に散乱していたが,
「こんなに散らかして,そんなヤツ来るんじゃない」と話をしていた女性が印象に残った。
そんな気持ちにさせられるコンサートだった。
さて,演奏の方は,Troyはホイッスルやギター,パイプ,チタン等を取り替えながら,Daveはギターとシンセを交互に,Joanneはシンセとギターを取り替えながらと,メンバーそれぞれがいろいろと楽器を変えながら演っていた。
Joanneが「ヴァイオリンを弾くドラマーなんて,観たことある?」と話しかけていたように,ドラムのFrankは,時折見事なヴァイオリンを披露した。
Philは5弦ベースを弾き,ときおり金棒をスティックして,パーカッシブな味付けをしていた。
ネット情報によると,あんまりリハーサルをせずにツアーに臨んだそうだが,練習不足なんかまったく感じられず,長い曲も見事に演じきった。
変拍子の曲が多く,クラシカルな展開だったり,ギターのフレーズ等とてもテクニカルなので,バンドとしてはプログレ・スタイルなのだが,ダンサブルな曲のノリ等,原点はトラッドにあるんではなかろうか?
ともあれ,とても気持ちの良いコンサートだった。
直前にチェックしていたアイオナのツアーのチラシや,ネット情報にある賞賛・絶賛する文章は,嘘ではなかった。