〜幕間〜

kyo


〜パターン2〜



「で、どうだった、あいつの反応は?」
「へ?」
「やだねえ。このにーちゃんは。とぼけちゃってまあ」
ルークはガウリイの肩に腕を回し、ぐいっと頭を引き寄せた。
こっそりと内緒話をするように、
「城に入るときのことだよ。
あんた、しっっっかり俺達に感謝しろよな。
あいつがあんたを運ぶようにちゃんと振ってやったんだから」
「ああ、あのときの………」
ガウリイが、ようやく思い当たったと言う表情をする。
「───俺は見てたし、聞いてたぜ。
あんた、しっかりあいつの耳元でささやいたりしてたじゃねーか。
………どうだった? 手応えは」
たっぷり5秒以上は沈黙が続いた後、ぼそっとした返事が返ってきた。
「聞こえてたんなら、分かってるだろ?。大体、あいつがそれぐらいで口説かれるように見えるか?」
「全っ然、見えねーな」
あっさり即答するルーク。
ガウリイが恨めしそうにそちらを見る。
「………正直な意見をどうも」
まあまあ、とルークがグラスに酒をつぎ足す。
「でも、あんたもなあ、いい加減素直になれよ。
あいつに、ンな遠回しの手が効くとは思えねーぜ。
あいつ、人の事は分かっても、自分のことにはとことん鈍そうだからなあ」
「わかってる」
ため息をつくガウリイ。
「わかっちゃいても、地道な努力は惜しまないってか?」
けけっ、とルークが笑う。
「あんた見てて思ったんだが、結構あんた、なんだかんだ言って、あいつにひっついてるだろ? 耳元でささやいたりとか、髪をさわったりとか。
最初は無意識にやってんのかとも思ったんだけどな」
くいっとルークが自分のグラスを呷る。
「自分の女でもないやつに、普通、あそこまで平然とはくっつかねーよなあ………それで気づかねえ、あいつもあいつだけどよ」
ガウリイは無言で肩をすくめてみせた。
「しっかし、まだるっこしいねえ。
ンなことせずに、正面からくどいちまえばいいじゃねえか」
「………そういうのって、なんか怖くないか?」
「呪文で吹っ飛ばされることがか?」
「………」
「わりぃわりい。冗談だよ、じょーだん」
ガウリイににらまれたルークが笑いを納めて、真顔になる。
「そりゃ、誰だって怖いさ。でも、あんたの場合………」
珍しく、ガウリイがルークの話を遮って言う。
「いきなり「保護者」に口説かれたりしたら、普通どう思う?」
「まず、「そりゃー犯罪だ」と思うと思う」
ルークが再び即答した。
ガウリイの目が険悪になる。
あわてて言い継ぐルーク。
「ってのはおいといて………。全く脈がない訳じゃないだろ?
あいつが、あんたを男として意識してなかったら、あんな照れた顔してあんたのこと運ぶわけないもんな」
「………でも、あいつオレをあんまり男として意識してないみたいだしなあ。
同じ部屋に寝てたときも平然としてたし」
「………いつの話だよそりゃ」
「2年前」
「あのなあ………出会った頃の話を持ち出して、どーするよ」
グラスを置いてため息をつくルーク。
「今でも、オレの前で寝てても平気みたいだし」
「………そりゃ、それだけ気を許してるってことだと思うが………ま、たしかに男の身としては複雑だよな。でも、ほら、裾善食わぬは男の恥って言うし、なんだったら………」
「………あれだけ無邪気に寝られて、手出しなんてできるかよ」
何に思い至ったのか、ルークが深くため息をつく。
「………まあ、そうだよなあ………」
返事に妙に実感がこもっている。
「あいつがせっかくオレを信頼してくれてるのに………それを裏切ったりしたら………にっこり笑って許すようなタイプじゃないだろ、あいつ」
「やっかいなこって」
「大体、今まで「保護者」です、って言ってたのに、そんなことしたりしたら、あいつがどんな顔すると思う? もうオレを保護者としてすら見てくれなかったら………。あいつのそばになんていられなくなっちまうだろ? そしたら………」
「………なんだか豆腐の角に頭ぶつけたくなってきたな………俺………」
ガウリイのグラスに酒をつぎ足しながら、ルークはそっとため息をついた。
今夜の話は長くなりそうだった。
 

ルークが廊下に出ると、人の気配があった。
「誰が鈍いって?」
目を上げると、栗色の髪の少女が壁にもたれて立っていた。
「………なんだ、ひょっとしてあんた今の聞いてたのか」
少女は、こくりと頷いた。
「ま、ね。あたし耳はいい方だし」
「なんだよ。つまんねーな」
ルークがつぶやく。
ちらりとドアの方を振り返って、リナが言う。
「………そうでもないわよ。だってあたしからあいつに言う事なんて何もないもの」
「今のを聞いててそうくるかぁ? おい」
リナが顔を上げてルークを見た。
「だって、そうでしょ? あいつはこのあたしにね、とんでもないとこまで助けにこさせて、とんでもない呪文まで使わせたのよ。
その上、あたしから何か言ってやれっての? 冗談じゃないわ」
憤然とした口調で言う少女に、はじけるようにルークが笑い出す。
リナがルークを軽くにらむ。
「きちんと言ってくれなきゃ、返事なんてしてしないわ。
思いっきり悩んで、思いっきり心配して、努力してみればいいの。
だって当然でしょ」
鮮やかにリナが笑った。
「───あたしを手に入れるためだもの」
ルークが、問いかける。
「あんたの答えは決まってるんだろ?」
「さあ?」
リナが軽く首を傾げる。
「つまんないじゃない? 決まり切った未来なんて。
あたし、未来のことは未来に決めるから」
そういって、リナは壁から離れた。
「………あたし、もう寝るわね。寝不足は美少女の天敵だし………。あいつのこと頼むわね。ルーク」
ぱたぱたと手を振って、リナが立ち去る。
ルークはそれをただ見送った。
しばしの後、
「………とんでもねーやつに惚れたよな、あいつも………。
全く、これだから、女ってーのは………」
そう言って首を振ると、おとなしく酒の追加を頼むために台所へと向かった。
 
 

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