1.まったく不要なダム

(3)採算もとれない発電


 辰巳ダム建設予定地から約4キロ上流にある上寺津発電所の調整ダムでは、農業用水、上水道用水、発電用水として、夏の渇水期にはほとんどすべての水が利用されている。ここから下流へは、夏場はほとんど水が流れていない。東岩取水口から辰巳用水に水を取り入れると、その下流には1滴も水が流れないほどである。

 辰巳ダムで発電を行うといっても、電力需要がもっとも大きい肝心の夏場には発電ができず、電力が余っている春などの季節に発電することになる。

 しかも、発電量は、最大出力340kWというものである。最大出力でさえ、バス2台を動かす程度のエネルギーでしかない。この最大出力を出せるのは、1年のうちのほんの限られた期間でしかない。

 辰巳ダムで行うという発電は、およそ事業として成立しようのないものである。
 県が辰巳ダム建設計画において、発電について費用負担の配分(アロケーション)を行っていないのは、実際にはまともに発電できない(=ダム貯水容量の発電用への割り当てがゼロ)ということが分かっているので、アロケーションのしようがないからなのである。


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