8月17日(火)、石川厚生年金会館で開催された平成11年度第1回石川県公共事業評価監視委員会は、辰巳ダム再評価について、1時間の公開審議ののち、3時間近くにおよぶ密室審議で「事業の継続の方針は理解できる」という結論を出しました。
この監視委の公開部分を録音し、文章化したものを掲載します。
(「公共事業の透明性確保」のための公共事業再評価であれば、このようなインターネットでの内容紹介などは、本来、県の仕事のはずですが、県がやりそうにないので、私たち市民団体の時間的・経済的負担で紹介します。)密室でどのような議論がなされたのか私たちにはまったく分かりませんが、公開審議において辰巳ダムの継続を主張したのは織田委員と川村委員だけです。どちらの意見も、「治水か文化財保護・環境保護か」という虚構の二者択一問題を設定して、「治水の方が大切」といっているだけで、辰巳ダムが不要なだけでなくデータの捏造などによって治水計画をかえって混乱させ市民を危険にさらしているという市民グループの主張には、まったくふれていません。
また、全文を読めば分かるように、公開審議の場で出された意見はバラバラで、到底「意見取りまとめ」に入れるような状況ではありませんでした。
ところが、報道によると、「非公開になってから1時間討論したところで、川島委員長が用意していた意見文の素案を提示」したといいます(「朝日」石川県版、8月19日付)。審議する前から結論が用意されていたのですから、公開で行われた審議はまさしく形だけ、絵に描いたような「はじめに『継続』の結論ありき」です。監視委員は、以下の各氏。(敬称略)
川島良治(委員長;前石川県農業短期大学学長・今年3月定年退官)
石田啓(副委員長;金沢大学工学部教授)
守屋以智雄(副委員長;金沢大学文学部教授)
浦田一代(弁護士)
織田広(県経営者協会会長、北陸鉄道会長)
川村国夫(金沢工業大学教授)
高山純一(金沢大学工学部教授)
西田耕豊(県町村会会長、川北町長) <8月17日は欠席>
村島和男(県農業短大教授)
矢島孝昭(金沢大学理学部教授)
辰巳ダム再評価に結論を出した監視委員会の公開部分は、以下のとおり。 (□□は、録音状態が悪く聞きとれないところ。) (1)辰巳ダム建設事業の必要性と経緯 略:県土木部河川開発課から、資料にもとづき説明。 (2)意見交換会の状況 略:監視委事務局(県土木部監理課)から説明。 (3)対象事業の審議 【川島委員長】
それでは、議事の3番目、対象事業の審議に移りたいと思います。
ただいままでご説明いただいた報告あるいは説明、それからこれまで行ってきた審議の内容等について、いろいろ委員の方々からご意見あるいはご質問、ひとつご自由にいただきたいと思います。ご発言ございませんでしょうか。
どうぞ、織田委員さん。【織田委員】
たいへん詳しい説明をいただきまして、関係者の皆さんにはご苦労さんと申し上げたいと思います。
この辰巳ダムだけが監視委員会の結果として残されて、いろいろと問題になり、7回に及んでそれぞれ審議していただいたわけでございますけれども、このダムが必要なのかどうなのかという問題について、私たちはやはり結論を出さなければならない立場だろうと思います。
私は結論から申し上げますけれども、前回にも多少触れましたけれども、ダムの一番大事な問題というものは、技術的な問題あるいはいろいろな取り巻く問題は多いと思いますが、このダムによって、その周辺に生活をしております住民あるいは県民の生命、これをまず第一義的に考えるべきであろう。次に財産、そういうようなものの保全についても考えるべきであろうと思いますけれども、生活者の安全というか身の危険のないような方法を、やはりこのダムが使命を果たすというようなものをつくっていただくということが一番だろうと思います。
必要がないとおっしゃる方は別でございますけれども、私は自分の今まで生きてきた経験からいいまして、前回も申し上げましたけれども、手取川の大水害を経験し、見ております関係で、災害はいつどういう形で起こってくるのかわからないということでございます。たまたま50年に1回ということがずっと手取川ではあったようでございますけれども、最近はまだ不完全と思いますけれども、砂防ダム等の工事によって50年は過ぎましたけれども、昭和9年以来、大水害はまだありません。危険が予想されることについて事前に手を打っていくというのが私は大事ではないだろうか、特に人命に関する問題については、その辺のところが一番大切じゃないだろうかと思います。
いろいろな価値はそれぞれあると思います。文化的な問題、あるいは環境的な問題、いろいろな問題はあると思いますけれども、できればそういうような価値を少しでも取り入れて、やれるところがあれば取り入れるべきでございましょうけれども、やはり何を大切にすべきかということになりますと、人命と、それから生活者の安全ということだろうと思います。そういう面で、ダムは私は必要だろうというふうに思っております。
ただ問題は、幾ら必要でも、それを建設する一つの資金力といいますか資力といいますか、そういうようなものが伴わなければ何ともなりませんけれども、優先的に一番やはり問題は生活者の安全、これを確保するということで、予算配分その他を検討していただくべきじゃないかろうかというふうに考えております。
以上でございます。
【川島委員長】どうもありがとうございました。ただいまのご意見で、質問じゃございませんね。答えは要らない。どうもありがとうございました。
ほか何かございますか。はい、どうぞ。
【矢島委員】ダムの電力、発電量はどのぐらいになるんでしょうか。
【河川開発課・山本担当課長】ご説明いたします。辰巳ダムの発電計画でございますが、最大出力は 340kW、それから年平均発生電力量は1,204MWhでございます。120 万4,000kWhでございます。
【川島委員長】よろしいですか。はい、どうぞ。
【矢島委員】この委員会資料の11ページの真ん中ぐらいに富栄養化に関する判断基準の証拠となる文献として、吉村信吉さんの「湖沼学」を使ったというのはどういうことですか。つまり昭和60年代の初めに、既に昭和20年ぐらいに亡くなっている。吉村信吉さんの「湖沼学」というのは陸水学の方では名著ですけれども、昭和20年ごろに亡くなっている方が書かれているものを基準として富栄養化の判断材料にされたというのは、どういう根拠がおありですか。
【山本】これにつきましては、この文献は私どもが引用したものではございません。これは厚生部の報告書の中で、その富栄養化と貧栄養化の境界云々というそういうご報告といいますか、厚生部が引用した参考文献ということでございまして、私どもは使っておるのは、このボーレンバイダー、リン類0.01から0.03mg/lというものを、ボーレンバイダーモデルを採用したということでございます。
【矢島委員】そうしますと、吉村信吉さんの参考文献が何でここでぽんと出てくるんですか。全然理解に苦しみます。つまり、厚生部が参考文献として出したのをそのままうのみにして利用しているというような印象を受けるんですが。
【山本】少しご説明申し上げますが、意見発表者側の方が、この厚生部から出ておりますこの報告書によると、吉村信吉著のものを厚生部では参考文献としてあると。県はそれは使ってない、土木部としてはですね。意見発表者側が、こういうものを県の厚生部では使っておりますよという問いかけでございます。
【辰巳の会・碇山】(挙手して)
委員長、よろしいですか?土木部監理課(監視委事務局)・多賀課長が碇山へ駆け寄り、「何を発言するん?」。
碇山「あなたに言う必要はないでしょう。」
多賀「いや、だめ。」
碇山「ダメとはどういうことか? 市民グループ代表に補足・修正発言を認めるという条件を県側、監視委員長が認めたから、きょうの開催のための報告文書作成に協力した。私たちには発言する権利があるし、発言内容を事前にあなたにチェックされる筋合いはない。」
多賀「いや、だめ。何を発言するかによっては認めるわけにいかん。」
碇山「委員長に発言の許可をもとめた。委員長に訊かれれば答える。事務局に説明する必要などない。そもそも私たちは補足・修正発言を認められてここに出席している。発言を認める・認めないと言われる筋合いはない。発言を認めないというのなら、きょう開催する前提条件が崩れるのだから、ただちに閉会するべきだ。不当な干渉はやめなさい。」
【川島委員長】ちょっとお待ちください。
【矢島委員】説明はわかりましたけれども、この文章を読む限りは、私はそういうふうには受け取れないです。
【碇山】委員長、よろしいですか。今のちょっとコメントしたいんですが。
市民側が吉村さんの文献を引用したというふうな説明があったので、ちょっとそれは不正確ですので。
【川島委員長】わかりました。ちょっとお待ちください。委員に諮りますので。
監視委員会の設置要領第5、会議という中の3に、「議長は必要と認めるときは委員以外の者を会議に出席させ意見を求めることができる」となっておりますので、今の件について…。
【碇山】すみません…。
【川島委員長】まだこっちは発表されるんですか? 答えられるんですか?
【山本課長】厚生部の報告書では、吉村信吉著のものを参考としてということでございまして、意見発表者側がそれを厚生部のものによると限界値を超えるんじゃないかという、こういう問いかけでございます。
【川島委員長】ご発言ありますか。どうぞ。
【碇山】(ここではじめてマイクが渡される。)
今、山本さんの方から少し補足があったのでだいたい誤解は解けたと思うんですが、市民側が使ったのは、この厚生部の報告書によると、ということであります。私たちは別に厚生部の報告書の中でそういうふうに吉村先生の文献がどういうふうに扱われているか、そういったことを問題にしているわけではなくて、いわば県が事業を行う際に、県みずからが発行している文献を参考にするということが必要ではないかということを指摘したわけです。
県の方はボーレンバイダーモデルに依拠しているということなんですけれども、それだけでは不十分だということについては、この報告書に書いてあるとおり意見交換会では指摘させていただきました。
この点については以上なんですけれども、この報告文書をつくって、そして監視委員会に私たちもこういうふうに席を設けていただいて出席させていただくことについて、報告文書の作成自体、県側と市民側で合同でやりましたし、基本的には私たち、こういう補足・修正発言といいますか、そういったものしかするつもりもありませんし、そういった機会を設けていただいたことを非常に感謝しておる次第ですけれども、ただ事前の打ち合わせでは、監視委員会の委員の方々からの質問、意見に対して、県側、事業主体、河川開発課なり河川課なりで、それからこの意見発表者側は対等に扱っていただくというふうに約束していただいて、それでこの報告文書の作成に協力するということになったといういきさつがございます。
ですから、今、委員長の方から発言認めていただけるというふうになりましたので、この後はこれでいいと思うんですけれども、できれば私たちの方にもマイクを確保していただきたいというふうに思うんですけれども。この後も必要な範囲で発言させていただきたいというふうに思います。
今の点については以上です。
【川島委員長】はい、わかりました。
ほか、委員の方、何かございますか。はい。
【村島委員】環境問題について少しお尋ねしたいことがあります。
といいますのは、ダム計画、この事業計画以来20年間ほどたっております。20年ほどですか。その中で一番いろんな社会の状況が変わっているんでしょうけれども、一番大きなものは恐らくこの地域の資産の集中がより一層増加したと思いますんです。それとともに、もう一つは、環境に関する問題で世の中全般の見方も変わったし、あるいは環境アセスの法案も通った。そのことについて前回ももちろん県の方では環境アセスメントを実施されて成果、結果を得ておられるんですけれども。
その後、幾つかの問題について県の方で追加調査をされるというふうなことがありましたけれども、その追加調査あるいは文化財の問題についてもかかわるんですけれども、県の方がおやりになるそういう追加調査のたぐいの位置づけですね。例えば、前回は環境影響評価というふうに第三者の専門家に依頼されて実施されたと思いますけれども、今回されようとされる、あるいはそういう問題が起こったときのされ方が、県の事業計画をされている方がされるのか、それともどういう形でされるのかが、ちょっとまだ先ほどのご説明では見えてこなかったものですから、ご説明いただければ、その問題について理解が一層深まるかと思いますので、お願いします。
【川島委員長】どうもありがとうございました。
【県側(発言者名不明)】県といたしましては、動植物については天然記念物、絶滅危惧種、それに希少・貴重種については今後とも調査していくというふうに考えております。
貴重種につきましては現時点ではまだ確認されておりません。ただし、万が一貴重種が確認された場合は、専門家のご意見を参考にして保護や保全対策等に十分配慮して対応に努めてまいりたいというふうに考えております。
【矢島委員】それに関連して、僕はちょっと意見があるんですけどね。
つまり、今までの生物調査に関しては、例えば文化財だとか天然記念物的な、つまり1点主義、一点ものですよね。例えばどんな巨樹があるかとか、イヌワシがいるかとか、それからどんな建造物があったとか、つまり今までの環境なり生物の調査は、文化財的また天然記念物的な発想法でもって調査してきて、今のご答弁もそういう感じでもって今後も調査していくというニュアンスですね。ところが、現在は確かに天然記念物的な生物がいたら、それは保護、保全しなきゃならないという考え方がありますけれども、逆に言ったら、日ごろ目にしていたメダカやモンシロチョウがある日突然いなくなった方が怖いという問題もあるわけです。
そうしますと、例えば辰巳ダムだったら辰巳ダム周辺の生物調査をされる場合には、天然記念物的な発想法のほかに、生物多様性的な観点からの調査をこれから取り入れなければ、環境アセスに対しての一般市民の理解が得られなくなる時代に現在なっていくということに関してはどういうお考えでしょうか。
【中島土木部長】アセスメントというか、環境の質に対して現時点でどういう認識をして、それを具体にダム事業との関連でどう位置づけるのかということになろうかと思います。大変難しい質問だというふうに思っております。
形の上では一応アセスメント、その当時必要とされていた水準を確保した上で、いろんな住民に対する縦覧とか説明会、それらも含めて、手続的にもその当時のアセスメント体系に準拠して行ってまいりましたし、そういった意見も聞きながら事業者側として判断をしているという状況であるわけでございます。
我々が今、少なくとも感じておりますのは、レッドデータブックというもので貴重種がかなり特定されてきているという状況下にあって、もう少しそういった目で再度調査をしなくちゃいかんのじゃないのかなということで、補完の調査をしたいということまでは我々は認識しておるわけです。
その結果、貴重種等があった場合は当然保存策、保全策、そういったものをとろうということも考えております。先生のご質問はそれよりさらに一歩進んで、生物多様性といいますか、貴重種も貴重種でないものも含めて、持っている自然環境の質そのものをどういうふうに評価し、関連づけるかということだと思っておりまして、なかなか明確な答えはできないところでございます。
ただ、我々としましては、そういう問題はあろうかと思いますけれども、ダム事業の必要性等については、これまで述べてきたとおりでありますので、いわゆるアセスメント、今の事業をする際の法定的なアセスメント、そういった位置づけで環境調査をするわけにはいかないと思っております。
とはいえ、やはり環境の質というものが問われている時代ですので調査をし、できるだけダム事業と両立する形で環境保全には取り組んでいきたいと、そんなようなことを考えているわけでございます。
【川島委員長】どうもありがとうございました。
ほかございませんか。どうぞ。
【高山委員】この辰巳ダムが本当に必要なのかどうかということを考える、恐らく意見団体の方のご指摘のある8ページの2番目ですか。「雨量洪水の問題について」というところがかなりキーワード的な要素を持っているんじゃないかなと思います。
例えば、想定される雨量が低ければ当然ダムは要らないということになるかもしれませんし、高ければ大きな雨が降って洪水になって、今の犀川の状況では氾濫してしまうということになるということで、ダムによる洪水調整が必要になるということだと思います。
そういう点では、当然この計画を立てた段階では、時間雨量については34年間のデータしかない。現時点では59年間のデータを使えば、34年間のデータでは1時間当たり92mmという想定雨量が84mmまで落ちるということだと思います。
ちょっと質問なんですけど、もしこの84mmを基本想定雨量としたときには、全く辰巳ダムは不要と考えてよろしいんでしょうか。
【川島委員長】これは県側あるいは委員のどちら、県側でいいですか。
【高山委員】県側でもどちらでも結構ですよ。意見発表者側のご指摘ですので。ほんなら県側から。
【中島土木部長】ご承知のように、河道に対する雨の流出を想定する必要があるわけですけれども、その際の技法として、ピーク時の雨量の上限を幾らにするかという話と、それから一まとまりの雨の量を幾らと想定するかという2つの事柄がありまして、両方とも大変必要な大事な数値でございます。
我々は、一まとまりの2日間の雨量で 280mmぐらいは過去のデータから分析すればそうなるであろうということにしたわけでありますけれども、280 mmの雨が降っても、雨の降り方によって川の水の増え方というのは全然違ってくるわけですので、そういう意味ではどういう降雨の分布を想定するかということが次に大変大事な話になってくるわけです。
降雨の分布を想定する場合に、実は実績の降雨分布をもとにして 100年確率の降雨を設定するという作業になるわけでありますけれども、その際に、要するにこんなたくさん雨は降らないぞというような数値を超えたらまずいわけですので、したがって、金沢気象台地区では大体何mmぐらいの雨までは降るものと想定していいかどうかという、そういう数値を決定する必要があります。それについて、ご指摘のように34年間の統計解析で92mmとしたわけなんですけれども。
実際には、したがってその数値をもとにしながら 280mmの雨をどういう分布で降らせるかという、いわゆる降雨パターンを設定したわけです。その降雨パターンの中には、実はこれも流域によって降雨パターンが違いますので一概に言えないんですけれども、我々が最終的に一番降った27年のときの洪水をもとにした降雨パターンでは、一番強いときに流域平均で87mmぐらいの雨が降ったような状態を想定して、洪水の流出計算をしているといった形になります。
したがって、それを例えば84ということにすれば上限が87から84に下がりますし、そのかわり若干フラットな形の降雨分布にするという形で、やはり少し洪水の流出量は下がるだろうと、こんなふうに思います。
ただ、これは計算をいろんな流域でやらなければいけないわけですし、それから余りフラットな雨ばかりを想定しておりまして、より危険側の雨を想定しないというわけにもいきませんので、いろんなケースを想定した上で、いわゆる河川の基本高水を、幾らぐらい流域河道に水が流れるかということを計算するんですけれども。
そういうことをやっておりますので、84になれば自動的にダムが要らなくなるかどうかとか、その辺は非常に イエス・オア・ノーでは答えにくいという状況にあるということをまずご理解願いたいと思います。
ですから、84mmで抑えて、フラットな降雨の場合は、場合によればですけれども、河道だけで処理ができるかもわからないし、84mmも2時間ぐらい続いてしまえばやはりダムが要るかもわからないし、そうでなくてももっと低いかもわかりませんけれども、いずれにしてもちょっと計算過程が入りますので、なかなかイエス・オア・ノーでは答えにくい問題であるということをご理解いただければ。
とりあえずご答弁でございます。
【高山委員】わかりました。ありがとうございます。
【碇山】いまの高山先生のご質問についてですけれども、実はこの雨量、洪水量の想定のところでの私たちの論点というのは、二段構えになっているわけです。これは8ページを見ていただいて、「データの流用について」というところがありまして、その後より多くのデータによる解析の必要性ということを論じているわけです。これが後ろの方が高山先生のご質問ということになわけですけれども。
まずひとつは、今、中島土木部長から、2日間 280mmなり、あるいは時間雨量というものは過去の実績降雨から想定するというお話がありました。つまり、過去に実際に降った雨を統計解析をして、それで今後どういう雨が降るかという予測をするというのがごく当たり前なといいますか、この分野でやるべき手法なわけですけれども、これがこの8ページの前段に市民側の主張として書いてありますように、そもそも昭和27年型というふうに今、中島部長もおっしゃられましたけれども、27年時点というのは、犀川ダム地点の観測地点というのはないわけです。犀川ダムの完成というのは昭和41年ですから、そもそもないわけです。
それで、20km離れた金沢地方気象台、当時は弥生町の地点のものをそのまま流用してやっていると。計算している。つまり同じ雨が降ったという想定をして、その想定に基づいて想定をしているわけですね。実績降雨に基づいて想定をするべきところを、同じ雨が降ったというふうに想定をして、その想定で想定していると。つまり実態的には根拠がないわけです。そういうふうにして求めた数字であるということがまず第1点です。
これをまず私たちは押さえた上で、しかもそういったことをやって、当時これは犀川ダム地点がなかったんだから、データの流用も仕方がないというふうなことを意見交換会で県側はおっしゃいましたけれども、しかし、それを一つ前段としておいても、高山先生が今ご指摘されたように、新しいデータがその後たくさん蓄積されているわけです。それを含めてやれば、こういうふうに数字が入ってくる。
あるいは、実はこの報告書には、報告書にするときに少し時間がかかるのであえて書きませんでしたけれども、その流用の部分を避けて、実際、実績のデータだけで、新しいデータの方だけでやるという方法も当然あり得るわけですね。そういうふうにすると、さらにこの数字がたしか七十何mmかだったと思いますが、下がってくると言っているわけです。
【川島委員長】(多賀監理課長が川島委員長へ駆け寄り、何か耳打ちする。)
碇山さん、意見交換会での話と割合同じなものですから、ひとつ時間簡略にお願いします。
【碇山】はい、わかりました。
そういうことで、ともかく新しい数字を入れればそういうふうにどんどん下がってくると。
私たちの主張は、ともかく再評価のこの時点で、いま中島部長も「わからない」と、そういうことであった場合に、本当に辰巳ダムが必要かどうかということはどういう結果なのかわからないとおっしゃったわけですから、それをきちんと計算をして、この場に出さなければ再評価としての結論を出せないんじゃないかというのが私たちの主張です。
どうも長くなって申し訳ございません。
【川島委員長】ほかございますか。
【守屋副委員長】今の雨量の件ですけれども、私個人としてはデータはないんですが、280 mmというのはちょっと過少ではないかというふうに思っております。新潟で 600mmぐらい去年降りましたし、それから昭和9年の有名な手取川の水害のときには、白峰村で 450mmですか 460mmですか、そのぐらい降っているわけです。280 mmという日雨量というのは平野部での話でありまして、山間部でどうだったかということは全くわかってないわけですね。
ちょうど利根川の水害を防ぐために東京都の気象庁のデータを使っているようなもので、全く山間部のはないという、そういう状況だと思います。それで議論するということ自体ナンセンスというか、長期的に金沢の洪水対策、利水治水□□□□□□□では非常に片手落ちではないかというふうに考えておりまして、まずは犀川の上流部、□□的な降水量を測る、そういう施設を設ける必要がまずある。そういうことでない限りは、ここでそういう議論をしても、らちが開かないんじゃないかというふうに考えております。
500 mmぐらい降る可能性というのは幾らでもあるんじゃないか。時間雨量90mmということだって、あれ 100年ということを考えればあり得るんではないかというふうに私は考えております。そういうことが一つです。
それから、これは治水に関してですけれども、公聴会では県側もそれから市民側も非常に熱心なデータを集めて議論されて、非常に私自身も勉強させていただきましたが、その中で11ページにありますけれども、高畠地区で去年の台風で河川改修と、それから辰巳ダムがあれば3m下がったはずだという、そういう話。その場合に、辰巳ダムはどのぐらいの寄与があるかということに対して30cm、10分の1であると。ということは、辰巳ダムをつくっても10分の1しかない。河川改修をした方がずっと効果があるんだという話になるのかどうか。
そういうことで、もう少し辰巳ダムをつくったら防げるか防げないかという議論では済まないのではないかということを私自身、前々から思っておりましたし、この委員会の以前に□□委員も強調しておられました。
そういう意味で、辰巳ダム是か非かという議論は、私としてはちょっと短絡ではないかというふうに、前にもこのことは言わせていただいたんですけれども、今でもそれはそう思っております。ますます確信深くしております。
そういうことで、これ以後は私のちょっと意見になりますけれども、やはり辰巳ダム云々は、もう少ししっかりした再調査を行って調査委員会をつくるなり、そういうことでもう少し時間かけてデータをしっかり集めた上で改めて議論をするということで、できれば上流から下流部まで、浅野川を含めた治水の総合計画を県で立てられて、その中で辰巳ダムが是か非かという、そういう形にしていただかないとだめなのではないかというふうに私は考えております。
例えば、下流部はJRから海側の方では縄文時代には海だったわけで、非常に低湿なところです。そういったところへどんどん人が入っていっていく状況、それに□□□□□□などにより人命あるいは田畑、そういうものを保護していくということは追っつかないという状況にあるわけで、それを野放しにするわけにはいかない。ですから、都市計画もいろいろと考えていかなきゃできない問題だろうと。辰巳ダムをつくればそれで済むという問題ではない。
そういうことで、私としてはこの再評価の委員会ではどうするかというのはありますけれども、それだけでは済まないと、そういうふうに考えております。
いろいろとありますけれども…。
【川島委員長】ご意見として…。
【守屋副委員長】はい、そうです。
【中島土木部長】今のご意見の中で、高畠地区の3m下がった中で辰巳ダムによる寄与分が30cmということについて、一つだけ補足的に…。
辰巳ダムをつくるそもそもの目的は、一番河道狭窄部で流下能力の乏しいところに対してダムで一時カットして、そこを何とかしのごうということが目的でありまして、具体的には犀川大橋がメインなわけですね。したがって、そこの地点では辰巳ダムがないことによって今のままでは完全に溢水してしまうと。一時的には、そういうことから貯留機能が上流で必要だということになっておるわけなんです。
ただ、下流部に行った場合に、例えば高畠地区で辰巳ダムで 560万tとか処理能力ありますけれども、そこで一時貯留したことによって水位がどこまで下がるのかという寄与分になりますと、下流部では河道が非常に拡幅もされますし、大きな流水能力、流下能力持っておりますので、そういった意味では30cmしかないということになるわけですけれども、これはダムの必要性じゃなくて、そういう場所におけるダムの効果みたいなものでありまして、おのずからダムの必要性というのは一番河道能力のないところで溢水を防ぐということにありますので、若干我々の答え方といいますか、説明の仕方も悪いと思いますけれども、その辺はご理解いただければありがたいと。
【守屋副委員長】はい、わかりました。
【川島委員長】ほかございますか。
【米田河川開発課長】30cmというお話ですが、これはあくまでも昨年の台風7号の雨量でございまして、それは50mmぐらいだったと思うんです。私どもの計画はもう少し大きい計画でございますので、その場合は1m近くの効果という計画となっておるわけです。昨年の台風7号の雨量ということでございます。
【川島委員長】浦田委員さん、どうぞ。
【浦田委員】今回の意見交換会が行われたことは、ある意味では非常によかったと思うわけです。これが再評価委員会の本来の仕事なのかどうかはよくわからないんですけれども、今回の公共事業の再評価というものは、実施過程の透明性を図ること、これを目的としておりますので、今回、再評価のこういう機会だけではなく、やはり実施過程の透明性というのは今後も必要だと思うんです。
この後、多分、委員による取りまとめが行われると思うんですが、その取りまとめをするに当たって、ちょっとやはり県に確認をしておかなきゃいけないと思うのは、今回、意見交換会で意見が交換されたんですが、今後どのような方法か、具体的なことは別としまして、今後とも説明とか話し合いとか、そういうことについてはどのようにお考えになっておられるか。
つまり、地元住民もそうですし、今回のような反対といいますか、側もそうですし、すべて含めてこれでもって終わりということなのか、あるいは話し合いになるのか説明になるのかそれは別として、コンタクトをとりながらやっていかれるご意向がおありなのかどうか。
【中島土木部長】あまり具体的にご質問に答えられるような準備はしておらないんです。ただ、これでおしまいというのも何か変な感じもしますし、我々の趣旨からしましても、やはり今おっしゃったような意味合いがありますので、そういう機会も設けながら理解を得られるような形でぜひ事業をしていきたいと思っていますので、そういう趣旨で努力していきたいと思っています。
【川島委員長】どうもありがとうございました。
【石田副委員長】委員の先生方からのご意見とか、いろんなご意見をお伺いさせてもらった上で、私の感じていることを述べたいんですが。
私自身、県の公共事業の監視委員もさせてもらっていますけれども、建設省の北陸地建の入札監査の委員もやっておるものですから、両方含めて感じるところなんですが、従来ですとこういうことがまったく表に出ないまま行政が責任を持って全部実行しておったと思うんです。それから時代が変わっていくうちに一般社会全体のこと、あるいは各個人の意見を取り上げた方がいいという流れになってきたと思われます。その流れを受けて、この公共事業の評価監視委員会が県の方からの依頼で立ち上がってこのような状態になっておると思います。
実は、これ今、辰巳ダムの問題だけを取り扱っていますけれども、113、4件があったと思うんです(※注:実際には108件)。辰巳ダムの問題はそのうちの一つにすぎないわけです。かかっているお金にしても百数十億ですから、1,000 億以上かかっておるようなそういう計画もたくさんあったわけですね。
そういった観点から見ると、辰巳ダムの問題だけにいま目を奪われていますけれども、これはその問題ではなくて、日本あるいは世界全体の趨勢がやや反映してきておる問題だというふうに私は考えています。
つまり、従来ですと行政あるいは政治、そちらの方の一方的な動きですべてやっても、そのかわり責任もとるけれども全部やるんだというような感じのものが、そうあったのではまずいという幾つかの失敗なんかを経て今になっておって、こういう状況になったことは非常に高く評価すべき状態だというふうに思っております。
ところが、こういう形をどんどん拡張して考えていきますと、これはどうなるのか。つまり、こういう委員会はどれぐらいの権限を持っておるか、またどれぐらいの責任あるいは発言権があるのか。そういうことが初めての試みでもありますから決まってもおりませんけれども、非常にあいまいなわけなんですね。我々がもしここでどちらかの意見を言わなければいけないと、どうしても言いなさいというふうに問い詰められますと、私としたら非常につらい立場になるわけなんです。これはそう簡単に答えられるような問題ではないんですね。
といいますのは、この辰巳ダムの問題にだけ限ってでも結構なんですけれども、基本的になぜこういうことをやっているかといいますと、やはり人間の安全性、生活を確保する、これが土木事業なんかは特に基本的な問題なんです。従来はそれでよかったんです。そのときの計画の立て方は、基本的に3つあるんです。ひとつは、可能最大、それに耐えるようなものをつくる。2番目は、可能最大というのは、これは隕石が飛んできて衝突することも考えますと大変なことになりますので、それではちょっとまずいというので、既往最大。既往最大であってもデータがないとか非常に大変な大きな値になるというようなことから、確率的な概念が次に入ってきて、100 年確率でいくか50年確率でいくかというような妥協案が出たわけです。妥協案を出した場合でもあいまいな要素があるので、もっと粗い決め方は、投資額に対する利益がどれだけ上がるかという投資と収益、その関係で経済的な行動として事業を考えるという方法があるわけです。従来3つであったわけです。大体確率的な形で決めてきたわけです。これは妥協案です。
ところが、さらに大事なことが最近わかってきた。これは地球環境保全ですね。人類の活動があまりに激しいので、グローバルに地球全体へ大きな影響を与えるために目先の数年、数十年に目を奪われておると人類全体が滅びますよというスケールの話が起こってきたために、それで環境問題、そういう問題が非常に強く懸念されるようになってきた。
また、人間にはよくても、植物、動物、昆虫には悪いと、それはまわりまわって人間を苦しめるんだという長いスケールでの感覚。この長いスケールも、実は人間の活動が激しくなりましたので、あまり長いスケールではなくなってきたわけです。そういう新たな観点が入ってきたので、そう簡単にこうでなければいけないというようなことをわずか数カ月の委員会活動、あるいはわずか数十枚、数百枚程度のペーパーを読んだぐらいで答えを出しなさいと言う方もちょっと私はやり過ぎじゃないかと。そういうふうにもし言われるとすると、我々はつらい。それから、そう簡単に答えが、これ、出ないんです。
工学的観点から言いますと、ダムは、これは一番安いお金でもって流域を守る方法です。そういう意味で非常に価値があったんです。ただ、私は海岸工学が一番研究の専門ですから、海岸工学から見ると、ダムは水だけではなくて砂をそこで遮断しますので、そのために10分の1ぐらいの割合で海岸浸食の原因になっているんです。そういう意味でいくと、海岸工学にとってはダムはない方がいいんです。しかし、だからといってダムをつくってはいけないなんていうことは私は一言も今まで言ってきていないんです。これは全体を見て決めていかなきゃいけないからです。
ですから、ダムが採用されるのは安いからダム工法をとったんです。もし築堤工法で川をかさ上げしようとすると、長い堰堤分だけのお金になりますから、これはもう何百億どころでは済まなく、何千億になります。ですから、それは非常に難しい。だから、ダムをやっているというふうに解釈すべきなんです。
今回、この辰巳ダムがどうかという問題は、もし何もなければ基本的に辰巳ダムはつくってもさほど問題はないんです。ところが、ひとつ一番話題になっているのは、もともとはもう犀川ダムができたんですね。ですから洪水制御に関してはかなりの効果を果たしておるわけです。その後に辰巳ダムをつくるわけですから、効果が薄くなるわけです。薄くなるけれども、効果はないわけではないんです。当然効果はあるんです。工学的観点から見ると、ほかの方法はほとんどとれないです。
川幅を広げることができるのは、余裕のある下流部の方とか、高畠地区とか、ああいったところは河川改修ができるんですけれども、上流側あるいは片町界隈といいますかあのあたり、犀川大橋付近はほとんどほかの工法はとれない。そうすると、少しでも水位を下げたい。ピーク時の流量をカットしたいということになると、ダムということは、どうしてもその方法というふうになってくるのは、これは工学的あるいは行政的には当然かと思われます。
そういう意味で、行政の言っていることはあながち間違ったことを言っているわけじゃないんです。ただ、雨が幾ら降るかという議論をするときは、これは阪神大震災にでもあったように、いつどのくらいの大きな外力がかかるかわからないので、80ミリでいいか90ミリでいいかという議論だって、これ、百何十ミリ降るかもしれないし、また 200年間降らないかもしれないわけで、これは委員会で結論出せとか、そういう問題ではないんです。これはやむを得ない妥協策としてどれをとるかということなんです。安全な方がいいに決まっているわけですけれども、それは限りない安全を願うとお金がもう何千億かけても足らないことになってしまって無理なんですね。
ですから、時間雨量90がいいかどうかという議論でなくて、これはどれにするかと。その総和で専門家がこの程度ならしようがないだろうと、あるいはこの程度でいったらどうかという発言を専門家にきちっと聞いてもらったら、それで押すしかないんじゃないかと。
ただ、専門家も何もいない中で、私は実はこの水門学という雨の降ってくるところは専門家でないんです。学生の授業程度は教えていますけれども、前にも言いましたが、水関係の分野は5つぐらいにグループ分かれております。雨の降るところ、川の流れる川のところ、それから海へ出ていく部分、それから環境関係、そういったことでいくと4つも5つつもに分かれておりまして、何百人、何千人という研究者がおるわけです。私は海の方は本当の専門ですけれども、川の方は本当の専門とまではちょっと言えないわけです。そうしますと、雨の降るところの専門家にきちっとこれでいいというものを出してもらいたい。
それから、川の方は、藤田裕次郎先生がここに一応書類出してくれています。これ読めば、これは河川工学の専門家あるいは河川工学の立場としては極めて常識的な正当なものを出してくれておるというふうに私は思います。そういった意味で、辰巳ダムそのものは工学的な立場からはそんなに間違ったものではない。やっても構わないというようなことにはなるんです。
ただ、これをつくったときに環境が変わるという、変わる環境をどのぐらいのことまで我慢するか、あるいはそこをどう評価するか、あるいは我慢できない部分は直すことができるのか、ここの議論をきちんとやっぱり専門家に立ち上げてほしいわけです。
ですから、水がもし水質が悪くなるという懸念があるのなら、大丈夫だという、あるいは工学的にそれを回避する方法があるんだと。だからそれやりますと、ここまできちっと言ってほしいわけです。それから、遺跡が埋没すること、これをどう考えるかなんですが、イグザンプルでスケールは大きいけれども、過去の例でいくと、エジプトですけれども、アスワンダムがあって、その後アスワンハイダムをつくった。アスワンハイダムをつくったときに、エジプト文明が水没するわけです。その水没するのをできるだけ防ごうというので遺跡なんかは全部動かしたんですが、この辰巳用水の場合はスケールは小さいけれども、また一方、困ったことにこれは動かせないんです。それが沈むということを我慢できるかどうか。我慢できない人もあるし、我慢できる人もあるんですけれども、これはやっぱり平均的なところ。
そこで、数十年の人間の安全性という観点、それに工学というのは進みますから、どの程度、骨董品的なものと言うと怒られますけれども、そういったものは人によって価値が違うわけですね。ここをどう解釈するか、これもコンセンサスが得られないと、この委員会のコンセンサスが得られても私はだめだと思うんです。我々が別段評価する問題じゃないと思うんです。
そういったことを全部含めて、やはり何らかの責任を持てる立場の人、言いかえればこれは行政だと思うんです。我々のように行政から任命されて立ち上がった委員会自身は責任は持てないんです。持てないけれども、精神的なものすごい負担になっているのは事実だし、我々の発言によって何かが決められたとなって、それがずっと引きずるということは、ずっと我々は苦しみ続けるわけです。
私自身、ほかの海の問題で役所が行った間違った工事のために砂浜が非常にまずいことが起こり、建設省、運輸省、県庁そのあたりが何とかならないかというんで、あと一生懸命、いま私も取り組んでいるものがあります。
そういうふうにもし辰巳ダムがなってしまうと、ともかく今決めないことには建設省から予算がおりてこない。だから、大急ぎで決めなきゃいけない。そうでないと工事に着工できないというふうに、もしそういう時間的な問題があって焦っておるとすると、そこはそれによってエイヤーッとやってしまって、それを決めたのはこの委員会だというふうな形にでも、もしなると、そうするとこの委員会はそんなことのためにつくられたんではなくて、やはり公共事業が、官が主導権だけを握っていた時代が済んで、民がこの中にやはり民意を反映して、本当にいいものを出す、それによって短期的、長期的な人類の存続を可能にしてますます発展させていく、これをねらいとしてつくっておるものだと思いますので、ですから小さな利益のために何かを決めるんではなくて、やはり大局的な立場、あるいは高い立場に立ってどうするかということを決めなきゃいけないと思います。
そうなると、この委員会でイエス、ノーをいま出せというふうに迫るのもおかしいし、また迫られたからといって答えを出すのも私はおかしいと思っております。これは責任を持てる人がきちっと責任を私たちでとりますと、とれますと、こういう妥当性がありますと、そういったことまできっちりと出したうえで結論をそこの部局が出すべきではないかと、そういうふうに私は考えております。
以上です。
【川島委員長】これはご意見だと思いますが。
あと、川村先生、ご発言がない…。
【川村委員】この問題が、いわゆる治水という問題と環境という問題と、それから文化財という問題と、こういうものが非常に複雑に絡み合った問題だということなんですね。両副委員長の今ご意見を賜っておりますと、例えば守屋先生は、もう少し調査を追加をして、その結果に基づいてもう一遍何らかの結論を出そうと、こうおっしゃられる。石田先生も大変苦悩をされていらっしゃって、イエス、ノーというのはなかなか言いづらいと。そこまでのなかなかの自信が持てないと、こうおっしゃられるわけです。
私は、やはり両副委員長のご意見は確かに一つの見識だというふうには思います。ただ、いろんな意見がここでは飛び交っておると思います。今のこの委員会でさえもこれほどの意見が違うわけでございますし、それからなるべく私は市民団体の方々の意見も聞こうと思って、なるべく多くの意見を聞いてまいりました。幸いながらも、それだけの時間がありましたし、少し勉強する時間もあったんですね。
そういう意味からいたしますと、すべての意見を満足して、あるいは何らかのところでそこで妥協をしていくという作業、すなわちその意見を集約するということが物すごく難しい事業だというふうに思うんですね。
私は、それを待っていますと、本当に 100年に1回が来年、再来年来てもおかしくないんじゃないかと。今、守屋先生もおっしゃったように 280というのは来てもおかしくないとおっしゃられるんですけれども、そういう議論をしている中で、そこで何らかの一つの洪水が来たときには、これは非常にやっぱり悔いが残るような気がしてならないんです。
私は、物すごく苦悩をいたしましたけれども、治水という問題は、やはり環境とか、あるいは文化財というものの重要性は物すごく認めるんです、ものすごくこれは認識しなきゃいけないんですけれども、やはり治水を優先やむなしじゃないかなというふうに思わざるを得ないんです。
そういう意味からすると、やはりこの事業というものは一つの継続ということを念頭に置いて、その中で最大限、最大限、とにかく今、矢島先生もおっしゃっておりましたように、環境アセスについては今日的なレベルまで相当近づけた形で追加調査をして、そしてある程度の結果が出たときには、例えば先生のようなご専門家の方々にいろいろご判断をいただいて、それで事業の進捗をいろいろとうまく絡めていく。あるいは、今の少しアスワンの話だとかエジプトの話を石田先生おっしゃっておられましたけれども、東岩の水没です。これもやはり何だかんだと言っても、これは大変貴重な文化財という指定はされていませんけれども、文化財に非常に近いものだという認識を持っております。これが水没するということについては本当に断腸の思いなんですけれども、ただ、治水というところから考えると、やはりここも何らかの形でできる限り移設をしたり、あるいは復元をしたり、さらにはどうしてもやむを得ないときは、後世の調査とか研究というものに耐え得るような資料をきちっと残しておくと。例えば写真をたくさん撮るとか、CDに非常にたくさん資料をきちっと残しておく。その資料を見れば後世の研究者、あるいは後世の検討者はそれでわかるというぐらいの努力を払って、それでやっぱり事業を進捗していったらどうかなというふうに思うんですけれどもね。
【川島委員長】どうもありがとうございました。
大分時間がたちましたので、大体一通り委員の先生方のご発言もございましたので、この3番目の対象事業の審議、一応これで打ち切らせていただきたいというふうに思います。
先ほども申しましたように、4番目の委員会意見の取りまとめに入りたいと思いますが、まことに申し訳ございませんが、これは委員だけのひとつ討論にさせていただきたい。そのために、一般の方はご退席いただきたいと思いますが。
なるべく本当は、大体5時半ごろまでには終わりたいと思うんですけれども、しかし、これ議論によってはわかりません。2時間かかるか3時間かかるか、あるいは夜中までかかるかもしれませんけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
【事務局(県土木部監理課)・竹腰】それでは、申し訳ありません。一同ご退席いただきますようにお願いします。
(4)委員会意見の取りまとめについて 市民グループ代表、傍聴者などを退席させ、事務局たちあいのもと2時間40数分にわたって密室審議。 公開で再開...
【川島委員長】
(結論「石川県公共事業評価監視委員会意見」を読み上げたのち…)
少しだけご説明させていただきますと、何か伺いました批判と、やはりこの犀川の出水問題が非常に大事だ。しかし、今まで意見を県に差し上げたときと、十分といいますか、監視委員会の意見の場合には、この計画は「適当で」というふうな表現をしているんですが、今回は「理解できる」という表現をさせていただきました。
これははっきりとは申せませんけれども、私どもの気持ちとしては、適当であるという場合は、ある程度積極的な肯定といいますか賛成だと思いますが、理解できるというのは、消極的賛成といいますか、のような意味だと思います。これはいろんな意見があることから、この委員の中においてもやはり立場によって若干の考え方の違いもあります。こういうふうな「理解ができる」というふうな表現にさせていただきました。
あとは、いろいろ反対派の方々からご指摘いただいた問題で、非常に重要な問題を、例えば犀川水系を考えず全般を考えて、特にまた浅野川も含めて考える必要があるではないか。特にまた環境問題、これはすでに調査を終わったというだけじゃなしに、やはり環境というのは年とともにどんどん変わりますし、水質問題もやはり生活者が、周りの生活者が変わればまた変わってくると思います。絶えずやっぱり水質問題が来ると感じました。あるいは生物の問題、こういうものを総合的にいろいろ調べたときに、特に貴重種といいますか、そういうものが認められた場合には、その生存に非常に努力をするということをぜひお願いしたいというふうに思います。
それから辰巳用水のこの各地区、こう影響を受けますけれども、できれば入り口のところを今度新しくする。するところを今、復元したり移設というふうなこともぜひお願いしたいと思いますし、それができない場合においても、今後の研究とかあるいは調査の場合に十分生かせるように資料をしっかりと調べて残していただくこと、こういうことをぜひお願いしたいんですが、これをまた県にお願いしても全然されないと困りますんで、やはりいろいろ学識者の意見を聞いてやっていただく。
これはちょっと勝手なあれになりますけれども、監視委員会が全部これやることはなかなかできません。監視委員会はやはりこれからもいろんな幅広い問題がどんどん出てきます。辰巳用水についてやはり有識者の方、いろんな方々の意見をよく聞いていただいて、あるいはそれによってチェックしていただいて、これから進めていただきたいというふうに思います。
それから、やはりこれから忘れていけないのは、県民の理解を得るということだろうと思います。公共事業、ともすれば県民の理解を疎かにしているとは言えないんですけれども、十分できてないことが多いんじゃないかと思いますので、県民の理解に十分努めていくということをお願いしたいというのが付帯意見でございます。
以上で説明を終わりたいと思います。
【事務局・竹腰】先生、どうもありがとうございました。
以上をもちまして本日の議事を終了いたします。どうもご苦労さまでした。これで、平成11年度第1回石川県公共事業評価監視委員会を終了いたします。
長時間にわたりまして委員の皆様にはご審議をいただき、どうもありがとうございました。