8月24日(火)、明治学院大学の研究グループ6名が金沢を訪れ、辰巳用水・辰巳ダムについて調査を行いました。宮江伸一さん(辰巳の文化遺産と自然を守る会)、本間勝美さん(森の都愛鳥会)と碇山(辰巳の会)が同行し、案内・説明、懇談しました。
辰巳用水を歩く
−99年夏、東岩から盲目谷−碇山 洋
辰巳用水・東岩取水口
東岩取水口のすぐ下流にある辰巳用水の取水用の堰水が不足しがちなので、ここで水をせき止めて辰巳用水に取水している。
夏場の渇水期には、上流の上寺津ダムで水が止められ、辰巳用水は極端な水不足に悩まされている。この日は時々雨が降っていたがそれでも堰を越えて流れる水はない。県は、用水組合(辰巳用水土地改良区)にたいして、辰巳ダムができれば辰巳用水に水を安定的に供給できるようになると説明して、組合を辰巳ダム推進運動にとりこんでいる。しかし、市民グループと県との意見交換会で、市民側の追求にたいして、県は、辰巳ダムができても辰巳用水の水は増えないことをはっきりと認めた。
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清浄が滝下の水門から水トンネル内をのぞく。清浄が滝は、辰巳用水のハイライトのひとつ。“滝と用水の交差”が見られる。
東岩から約5キロつづく水トンネルは、清浄が滝をくぐったこの地点で数メートルだけ開渠になりすぐにまた暗渠に入る。
このあたりは水深が深く、水路の底は、下流側は逆勾配になっている。水門を開けると、上流側・下流側の両方から勢いよく水が落ち、水路にたまった泥を吐き出す仕掛けになっている。作業が困難な水トンネル内のメンテナンスを簡単に解決した先人の知恵には驚くばかりだ。※清浄が滝=しょうじょうがたき。「猩々が滝」とも書く。
水トンネルと交差した滝は、小径をくぐって犀川に落ちていく。
いつのまにか景観ぶちこわしの「整備」が行われていた。江戸時代から今日まで生きつづける技術と自然とが織りなす清浄が滝の美しさを、よくもここまで台無しにできるものだとあきれてしまう。
この「整備」計画をつくった人の発想はだいたい分かる。
道路をつくったので人が滝に近づきやすくなった。滝に落ちて死んだり怪我をされたら行政の管理責任が問われる。柵をつくっておこう。柵だけじゃ味気ないのでちょっときれいにして滝をドレスアップしてあげよう。−−こんなところだろう。
清浄が滝の前で犀川をこのような姿にするとは…。
(人が集まっているところがひとつ上の写真の場所)ひさしぶりに盲目谷(めくらだに)を訪ねて、周辺のあまりに変わり果てた姿にしばらく言葉をなくした。辰巳ダムの工事用の道路だろう、犀川がもっとも川らしい姿をしていたはずの盲目谷で、木々を切り倒して道路がつくられ、護岸工事が施されていた。
盲目谷は辰巳用水工事の最大の難所で、何度も落盤事故があり、多くの犠牲者を出した。彼らはそのままこの場所に眠っている。この場所がもつ意味を少しでも考えれば、このようなことはできないはずだ。想像力の欠如としか言いようがない。関連工事をみるだけで、辰巳ダムがどのような思想にもとづいてつくられようとしているか、よく分かる。