辰巳ダム建設促進期成同盟会の総会において、石川県の担当者が、ダム反対の共有者を買収交渉の対象にしないともとれる発言をしていたことが報道されました。また、共有地運動への対応方針について一度も見解をしめさないまま、再来年にはダム本体に着工する方針が明らかにされました。
この重大問題にたいして、共有地運動にとりくむ共有者の会は、谷本正憲石川県知事にあてて緊急の公開質問状を提出しました。
辰巳ダム建設に係る土地買収に関する緊急公開質問状 2000年8月2日 石川県知事
谷本正憲様辰巳ダムを止める土地共有者の会
代表 碇山 洋北國新聞8月1日付は、7月31日開催の辰巳ダム建設促進期成同盟会総会に関する記事の中で、「県によると、水没する区域の土地の所有者は1520人で、まだ交渉が完了していないのはこのうち17人となっている」と報道しています。県がこのような認識に立っているとすれば、憲法で保障された財産権に関わるきわめて重大な問題である可能性があります。また、8月1日夕方に放送されたNHKのテレビニュースでは、「石川県では…(中略)…再来年にはダム本体の建設にとりかかりたいと話しています」と報道されましたが、着工の前に用地取得が終了している必要があり、当然、これから2年ほどの間に辰巳ダム反対の共有地運動に県がどう対応するのかが問われることになります。
以下、このふたつの報道に関連して、緊急に最小限の質問をさせていただきますので、御回答いただけるようお願いいたします。(1)「兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会」(辰巳の会)がよびかけ「辰巳ダムを止める土地共有者の会」が水没予定地内(瀬領町ヌ131番4など)で取り組んでいる辰巳ダム反対のための共有地運動には、150名を超える参加者(以下、当会共有者)がおり、すでに登記も済ませてあります。県のいう「水没する区域の土地の所有者」1520人のなかには、当会共有者は含まれているのでしょうか?
(2)「まだ交渉が完了していない」土地所有者が17人ということは、当会共有者との交渉もほとんど完了しているということになります。しかし、共有者の会代表の私自身、土地の買収交渉の打診さえまだ一度も受けたことはありませんし、ただひとりの当会共有者からも、県から買収交渉の申し出があった、買収交渉に応じたという連絡を受けていません。知事は、辰巳ダムに反対する当会共有者は、交渉の対象とはならないとお考えでしょうか? また、対象とならないとすれば、その理由について御説明ください。
(3)この「17人」に交渉が完了していない当会共有者が含まれていないとすれば、交渉の必要性、共有者の財産権を認めない暴論と言わざるをえません。当会共有者を除外して報告・公表した理由を御説明ください。
(4)知事は、所有する土地の面積の大小、共有の場合の持ち分の大小によって、法による財産権の保護には強弱があるとお考えでしょうか? あるとすれば、具体的な法律の条文などを示しながら御説明ください。
(5)知事は、辰巳ダム建設に係る土地買収交渉において、所有する土地面積の大きい所有者と小さい所有者の間、持ち分の大きい所有者と小さい所有者の間で、交渉の仕方など、県の対応に何らかの区別を設けるお考えでしょうか? 区別を設けられるとすれば、その理由について御説明ください。
(6)市民グループと県との間で開かれた辰巳ダムに関する第7回意見交換会(1999年7月31日開催)において、私は、県河川開発課・山本担当課長(当時;現河川課ダム建設室長)の質問に答え、辰巳ダム計画に対する当会共有者の考えはさまざまであり、県から納得のいく説明があれば買収に応じてもよいという人も少なくないということを説明してあります。県は土地の所有権の譲渡を請う側として、すべての当会共有者にたいして十分な時間をかけ誠意をもって辰巳ダムの必要性を説明し、理解と協力をもとめるべきではないでしょうか? この点について、知事の見解をお示しください。
以上について、文書にて御回答ください。問題の重大性に鑑み、この質問状は緊急質問状とし、回答期限は8月10日(木)午後5時(必着)とさせていただきます。
なお、質問の内容は実務的な問題ではなく、国民・県民の財産権をどのように考えるのかという知事の姿勢の根本に関わる重大問題ですので、土木部長や河川課長、ダム建設室長などではなく、必ず石川県知事の名において回答されるよう求めるものです。知事以外の名による回答書が届いた場合は、谷本知事が国民・県民の財産権に関する見識をお持ちでなく回答不能であると判断し、そのように発表せざるをえないので、この点、十分ご配慮願います。
また、この質問状は公開質問状とし、いただいた回答は記者会見や当会会報・ホームページ、各種メーリングリストなど、適当な方法で公表させていただく予定であることを申し添えます。