リーフレット『辰巳ダムと犀川』に関する公開質問状を提出

(2000年7月27日掲載)


 辰巳の会は、県発行のリーフレット『辰巳ダムと犀川』の内容に関する公開質問状を、7月27日付で郵送で提出しました(7月26日投函)

 このリーフレットは、「犀川は、昭和27年、28年、…(中略)…43年、49年、50年と大きな出水に見舞われました」としたうえで、1952年(昭和27年)から1975年(昭和50年)までの8つの水害について、床上・床下浸水戸数や農地の浸水の面積を示し、犀川の水が溢れてこれらの被害を引き起こしたかのように描いています。
 「犀川が溢れた」とは書いていないところがミソで、犀川ダムが完成した(昭和41年度)のちの昭和43年・49年・50年の「大きな出水」では、犀川は溢れていません。この3つの年の水害は、市街地に降った雨が側溝などからあふれた内水被害です。

 大きな出水に見舞われたのは事実。浸水被害が生じたのも事実。県は「ウソは書いていない」と言うかもしれませんが、ふたつの事実をならべてあたかもそこに原因・結果の関係があるかのように描く手法はきわめて欺瞞的なものです。

 このような姑息な手法をつかうこと自体、辰巳ダムが不要であることを県みずから自覚している証拠のようなものです。
 辰巳ダムの必要性を堂々と主張することのできない作成者の、屈折した心理を表現したリーフレットではあります。

 リーフレットのタイトルを『犀川ダムと犀川』に変えて、「犀川はたびたび溢れて大きな被害を出してきましたが、犀川ダムが完成してから30年以上、犀川があふれたことはありません。犀川ダムは大きな効果をあげており、これ以上のダムは必要ありません」とされてはいかがでしょうか?

渡辺誠さんからのメール


リーフレット『辰巳ダムと犀川』に関する公開質問状

2000年7月27日

石川県知事
谷本正憲様

兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会 
事務局長 碇山 洋

 このたび「兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会」(辰巳の会)は、リーフレット『辰巳ダムと犀川』(石川県土木部河川開発課・石川県辰巳ダム建設事務所、発行年月日不詳)を入手しました。このリーフレットの内容は、私どもの認識からして、また昨年4月から7回にわたって市民グループと県との間で行われた辰巳ダムに関する意見交換会での県側発言と照らして、県民に誤解を与えかねないものであるように思われます。
 以下、いくつかのポイントにしぼって最小限の質問をさせていただきますので、御回答いただけるようお願いいたします。

1.「犀川の水害」の欄について

 リーフレット『辰巳ダムと犀川』(以下、リーフと略記)には、「犀川の水害」として、「犀川は、昭和27年、28年、…(中略)…43年、49年、50年と大きな出水に見舞われました」との記述があり、その下の表は、1952年(昭和27年)から1975年(昭和50年)までの8つの水害について、床上・床下浸水戸数や農地の浸水の面積を示しています。この記述と表(フィルムに模した背景の同じコマに書かれている)を見ると、「昭和27年、28年、…(中略)…43年、49年、50年と犀川から水が溢れ、床上・床下浸水や農地浸水の被害を出した」というように読めます。
 私たちは、1966年度(昭和41年度)の犀川ダム完成以後、犀川本川から水が溢れて水害が生じたことはないと認識しておりますし、意見交換会で県河川開発課(当時)もそのように発言されたと記憶しております。

 (1)この表の8つの水害のそれぞれについて、犀川のどの地点で、概ねどのような溢水(溢水地点、溢水開始・終結の日時、溢水量など)があったかお教えください。

 (2)これ以外にも、犀川ダム完成以後、犀川本川から水があふれた記録があれば、概ねどのような溢水(溢水地点、溢水開始・終結の日時、溢水量など)があったかお教えください。

2.「辰巳ダムができれば」の欄について

 (1)リーフには、「犀川の河川整備目標である100年に一度程度の降雨、2日間で280oの降雨」と記述されています。同じ「2日間で280oの降雨」といっても、単純にいえば、「1時間5.8ミリの雨が48時間降りつづく」という場合もあれば、「1時間140oの大雨が2時間降ってピタリとやむ」という場合もあり、降雨パターンはさまざまです。同じく「2日間で280o」といっても、これ以上のダムは必要ない降雨パターンもあれば、辰巳ダムをつくっても対応できない降雨パターンもあるはずです。
 これまで、県は、「2時間雨量134oが流域全体に同時に降る」などといった想定を主張してこられましたが、リーフではこうした降雨のピークには一切ふれず、2日間雨量にのみ言及しています。
 ピークにふれずに、2日間雨量にのみ言及することは、「2日間雨量280oなら辰巳ダムが必要」という印象を与えるものです。

 @「2日間雨量280o」なら、どんな降雨パターンでも、辰巳ダムは必要なのでしょうか?

 Aどんな降雨パターンでも必要であるとすれば、その科学的・技術的根拠を具体的に御説明ください。

 B特定の降雨パターンの場合に辰巳ダムが必要であるとすれば、そのパターンについて、必要となる具体的な科学的・技術的根拠とともに、お示しください。

 C「2日間雨量280o」ならどのような降雨パターンでも、辰巳ダムができれば水害を防ぐことができるのでしょうか? できるとすれば、その科学的・技術的根拠を具体的に御説明ください。

 (2)リーフには、「辰巳ダム計画では、…(中略)…10年に一度程度の渇水に対しても、犀川大橋下流で平均水深10p程度の流水を確保」とあります。辰巳ダムから放流される水量や残流域からの水量、平均水深10p程度が確保されるという地点における犀川の勾配などから、どのようにしてこの「平均水深10p程度」が算出されたのか、具体的に御説明ください。

3.「犀川の渇水」の欄について

 リーフの「犀川の渇水」の欄には、過去の渇水の状況についての記述や、当時の状況をつたえる新聞記事のコピーが掲載されています。この欄で挙げられている過去の渇水時において、辰巳ダムがあったとすれば、どの程度の流水が確保されていたのでしょうか? 犀川の幅や勾配、辰巳ダムの毎秒0.7トンの河川維持用水などをもとに、具体的な算出根拠とあわせてお教えください。

 以上について、文書にて御回答ください。回答期限は、8月7日17時(必着)とさせていただきます。なお、県が発行した公式・公開の資料に関する質問であることから、この質問状は公開質問状とし、いただいた回答とあわせて記者会見や当会ホームページ、各種メーリングリストなどをつうじて公開させていただく予定であることを、また、いただいた回答を検討したうえで必要に応じてさらに公開質問状を提出させていただくこともありえることを、申し添えます。


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