辰巳の会の公文書公開請求(10月30日)によって紛失が明らかになった永久保存文書、犀川ダム全体計画大臣認可書が、12月12日、全体計画書の添付資料の封筒の奥にくしゃくしゃになって押し込まれているのを発見されました。
(経過は既報) 12月25日付の『公文書不存在通知の取り消し通知』と『公文書公開決定通知書』を受け、27日、辰巳の会を代表して碇山洋事務局長が県庁を訪れ、約2時間にわたって、県側の説明を受けながら議論しました。応対したのは、河川課主幹兼計画係長・常田功二氏をはじめとする河川課職員3名と、情報公開総合窓口職員1名の計4名。
重要な全体計画書とその申請書・認可書を紛失していたことを厳しく批判した辰巳の会に対して、常田功二係長は、ダムが出来上がってしまえば全体計画書はさほど重要な文書ではないという認識をしめし、永久保存文書を紛失しておきながら、まったく無反省な姿勢を露わにしました。
今回の公文書紛失騒動については、中島浩土木部長が、県議会の土木企業委員会において、中村勲議員(自民)の質問に対して謝罪したばかり。議会で一般論としては謝罪してみせても、情報公開請求権を侵害された当事者に対しては、自分たちが紛失した文書の重要性を否定して、問題を小さいものであるかのように描こうとしたものです。議員を前にしたときには重要な問題であるとの認識をしめしながら、一団体、一個人に向かっては大した問題でないかのようにいう。−−常田係長の発言を放置・容認するのであれば、中島土木部長の議会答弁も、その場しのぎのおざなり発言だったことになります。
また、常田係長は、「碇山さんは『永久保存文書』という言葉をしきりにつかうが、これらが永久保存文書であるかどうかは分からない」とも発言しました。
常田係長は、現在の基準では永久保存文書であることを認めつつも、当時も同じ扱いだったかどうかは分からないと主張。しかし、当時の基準では永久保存文書でなかったというのならば、何年保存の文書であったのかを示すべきですが、常田係長はそのことにはまったくふれませんでした。
それもそのはず。石川県は、当時の文書保存期間の基準を定めた文書そのものを保存していないのです。
これらの文書が永久保存文書であることは、マスコミの取材にこたえ、同じ河川課の山本光利ダム建設室長(課長級)がすでに認めているところです。自らの考えで上司の発言を否定するというのならそれなりに立派なことですが、それならそれで、常田係長はその論拠を具体的に示すべきです。当時は永久保存文書ではなかったというのなら、その挙証責任は常田係長の側にあります。これらの文書が当時は何年保存の文書に該当したのか、ぜひ示してもらいたいものです。
いずれにしても、常田係長の発言は、議会での中島土木部長の答弁や新聞に報道された山本ダム建設室長の発言をも無視したものであり、常田係長の発言と中島部長・山本室長の発言のどちらが石川県の公式見解なのか、責任をもてる立場の人からの説明が必要です。
さらに常田係長は、辰巳の会が情報公開条例の“公文書公開請求から15日以内に公開するかしないかを決定しなければならない”という規定を引きつつ、情報公開請求権の侵害を問題にしていることに対し、「条例に『15日以内』と書かれていても、古い文書については探すのに時間がかかり、条文どおり15日以内というわけにいかない。決定までに2か月近くかかったからといって、権利を侵害したとは言えないのではないか」と発言しました。
辰巳の会側が「条例に『15日以内』と書いてあれば、新しい文書であろうが古い文書であろうが15日以内に決定しなけらばならない。勝手な解釈は許されない」「条例を守らなくてもいいということか」と詰め寄ると、常田係長は「あくまで個人的見解です」と弁明。「あなた個人と話をしに来たのではない」と批判すると、「いまの発言は撤回します」と述べました。多くの報道関係者が見守るなかで、「個人的見解」として撤回したとはいえ、常田功二係長が条例違反を当然視する発言を平然と行ったことには驚かされました。
結局、県側からは、県民の情報公開請求権を侵害したことについて、真摯な自己分析も、謝罪のことばもありませんでした。
このような県側の対応をふまえ、辰巳の会は、谷本正憲知事あてに『犀川ダム永久保存文書についての情報公開請求権の侵害に関する抗議と要求』を提出しました。『抗議と要求』は15日以内に知事の対応を文書でしめすことをもとめていますが、河川課ダム建設室の職員のひとりは「期限内に回答するよう努力するが、組織的に対応するには時間がかかる。15日の期限を守れないこともありえる」と発言しました。
99年に行われた辰巳ダムに関する一連の意見交換会では、市民グループ側が資料の準備に時間がかかることもあり十分な期間をかけて議論しようと主張したのにたいし、米田昭夫河川開発課長(当時)をはじめ県側は、平日の夜や土日をつかってでもどんどん先に進もうという主張を頑なにくりかえしました。辰巳ダム建設をゴリ押しするためには昼夜を分かたず、休日も返上してがんばるつもりはあっても、条例で保障された県民の情報公開請求権の侵害に関する善後策、再発防止策にはあまり力を入れる気がないようです。
犀川ダム永久保存文書についての情報公開請求権の侵害に関する抗議と要求 2000年12月27日
石川県知事
谷本正憲殿兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会
事務局長 碇山 洋12月25日付の『公文書の不存在通知の取り消しについて(通知)』(河第1247号。以下、『取り消し通知』)を昨日落手しました。
『取り消し通知』は、当会が公文書公開請求した犀川ダムの全体計画に対する大臣認可書について「11月13日付で当該公文書が不存在である旨を通知したところですが、12月12日に当該公文書(犀川総合開発事業全体計画認可書)の存在が明らかになったので…(中略)…不存在通知を取り消します」としています。
『取り消し通知』は、事情説明など一切ぬきで、ただ「存在が明らかになった」としていますが、これでは、永久保存文書が一時紛失されていたことも、そのために閲覧し写しの交付を受けられるべき県民の権利が侵害されたことも、また責任の所在も、まったく明らかではありません。
今回の公文書紛失騒ぎは、県民の共有財産である公文書を県職員がなおざりに扱ってきただけでなく、県民の命と財産に関わる犀川の治水事業が過去のダム計画の十分な検討を経ずに進められてきたことを示した重大問題であり、このような一片の『取り消し通知』で幕引きされるべき問題ではありません。
当会は、県の杜撰な文書管理によって情報公開請求権を侵害された当事者として、知事に対し、厳しく抗議するとともに、以下のことを要求するものです。
(1)今回の公文書の紛失から発見にいたる全経過について調査し、公表すること。
(2)責任の所在を明らかにして、責任者を処分し、処分内容を公表すること。
(3)再発防止策を策定し公表すること。
(4)10月30日の公文書公開請求から公開まで2か月近くも待たされただけでなく、数回にわたって県庁を訪ね交渉することを余儀なくされるなど、時間的にも経済的、精神的、肉体的にも多大の損害を被った当会に対し、上記(1)〜(3)について文書で示すとともに、文書で謝罪すること。
以上について、情報公開条例にもとづく公文書公開請求に関わる問題であることから、現行条例第7条の「実施機関は、前条の請求書を受理したときは、受理した日から起算して15日以内に、当該請求に係る公文書の公開をする旨又はしない旨の決定をしなければならない」という規定に準じ、本日から15日目の2001年1月10日までに対応されるよう求めるものです。
なお、誠意ある対応をいただけない場合は、同様に情報公開請求権を侵害されたナギの会・渡辺寛氏とも相談し、損害賠償請求など法的措置を検討することもありえますので、その点、申し添えておきます。