石川県、犀川ダムの永久保存文書を紛失
こんな
ずさんな河川行政では県民の命と財産を守れない

(2000年12月23日掲載)


 辰巳の会の公文書公開請求により、石川県が犀川ダムの永久保存文書を紛失していたことが明らかになりました。マスコミで大きく報道され慌てて探し直した結果、発見されはしましたが、その経過は、県の河川行政の出鱈目ぶりをあらためて浮き彫りにしました。

 辰巳ダムに関する意見交換会(99年4月〜7月)において県側は、辰巳ダムは犀川ダムの治水計画と十分な整合性を確保して計画されていると強調しましたが、実は全体計画を見もしないでいい加減に発言していたことになります。


 県が辰巳ダム計画との整合性があると主張する犀川ダムの治水計画を検討するため、辰巳の会は、10月30日、県情報公開条例にしたがい、犀川ダムについて(1)大臣認可申請書、(2)それに添付された全体計画書、(3)大臣認可通知書などの公開を求める公文書公開請求書を提出しました。
 これにたいして、「公文書不存在通知」(11月13日付)が届き、これらの永久保存文書が紛失されていることが明らかになりました。

 11月20日に県の行政情報サービスセンターを訪ねたところ、県河川課の担当者は、(1)大臣認可申請書と(2)全体計画書の一部が見つかったので、公文書不存在のまま、条例に基づく公文書公開ではなく、資料提供のかたちで写しを交付したいと提案しました。

 ところが、担当者が「大臣認可申請書」としてしめしたもの(A4版1ページ)は、日付・発信元番号のスタンプがあり、ファックスで送付されてきたことが明らかなもので、しかも文章が途中で途切れていました。
 「全体計画書」としてしめされたものも、複写状態のきわめて劣悪なコピーで、全5編で3百ページほどある文書のはずなのに、わずか24ページしかありませんでした。

 辰巳の会側は、県のずさんな文書管理を厳しく批判したうえで、このような正体不明の怪文書の提供を受けるわけにはいかないと主張。
 それにたいして県側は、驚くべきことに、これらの文書を公文書として台帳に登録し正式な公文書としたうえでそれを交付するということではどうかという“解決策”を提案してきました。

 こんな怪文書を公文書として扱うなどということが認められるわけがなく、辰巳の会は当然、この提案を拒否し、本物の文書を探し直し、どうしても見つからない場合には別の合理的な解決策を検討することを求め、県庁をあとにしました。

 12月5日夜9時半頃、県の担当者から、やはり文書が見つからず、11月20日の提案以外の解決策もみあたらないとの電話連絡が入りました。
 この連絡を受け、辰巳の会はこの間の経過を県政記者クラブにファックスでリリースし、「北國」(6日付夕刊)、「毎日」「読売」(7日付)が「県、犀川ダムの資料紛失」などと報じました。(「毎日」「読売」はともに4段抜きの見出し)

 12日にあらためて県庁に行ってみると、(1)大臣認可申請書と(2)全体計画書が、12月7日の午後になって発見されたというではありませんか。
 10月30日の公開請求から12月5日まで1か月以上さがしてもどうしても見つからなかったはずの文書が、マスコミで大きく取り上げられた途端、その日のうちに見つかったというのですから驚きます。
 県民に見られては困る不都合な内容だから、紛失したことにして意図的に隠そうとしていたのではないかと疑われます。

 全体計画書の所在も分からない状態で、何を根拠に辰巳ダム計画は犀川ダムと整合的であると言ったのかとの辰巳の会の質問に、県河川課ダム建設室・山本光利室長は、犀川ダムのゲートからどれだけの水を放流できるかが分かっているから、全体計画書がなくても整合性のある計画をつくることができるなどと述べました。しかし、犀川ダムは何年確率・何ミリの雨に対応しているのかとの質問には、「いまちょっと思い出せない」としか言えませんでした。

 このときも、(3)大臣認可通知書は見つからないままだったのですが、夕方になって、行政情報サービスセンターの職員が、全体計画書のコピーをとっているときに、図面などの入った封筒の底にくしゃくしゃになって押し込まれているのを発見しました。

 この日の夕方のテレビニュースでは、NHKが地方ニュースのトップで取り上げるなど、各局とも県のドタバタ劇を大きく報道。キャスターもみなあきれ顔でした。

 県の右往左往ぶりはほとんど喜劇ですが、このようなずさんな仕事で県民の命を守るべき河川行政が行われていることは、県民にとっては悲劇です。
 現在の河川課の仕事ぶりは、辰巳ダム計画の是非を議論できるようなレベルではありません。
 県民からの負託を受け、県民から税金や公文書を預かって仕事をしているのだというごく当たり前の自覚を、まずはもってほしいものです。


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