犀川で最も危険な個所、城南1丁目付近をみる
−−ここを放置して何の治水か−−
辰巳の会事務局長 碇山 洋
(2003年8月23日掲載)
8月17日(日)午後、ナギの会・渡辺寛さんとふたりで、あらためて城南1丁目付近の犀川を見て回った。
ここは、犀川で最も危険なまま放置されているだけでなく、改修計画もなければ、測量さえされていないという、県の治水事業から置き去りにされ無視され続けてきた空白区間である。
(→ http://www2u.biglobe.ne.jp/~saigawa/030817ken.html)
鞍月用水の取水用堰
下流からここまでは一応整備されているが、ここから上流の区間は20年以上放置され、改修計画もない。
堰の右岸側
水面から護岸うえの道路面まで2メートル50センチ前後しかない。
少し上流。城南1丁目
護岸の道路面と同じ高さにびっしり家が建て込んでいる。1998年の台風7号のときには、あと数十センチで溢れそうになった。
雪見橋から下流右岸側を望む
川が蛇行し、このマンションあたりの欠陥護岸に大きな負荷がかかる。
雪見橋のすぐ下流の右岸は、ほんとうに危険な状態になっている。護岸のセメントはあちこちひび割れ、土がむき出しになって雑草が生えている。すぐ横にはマンションや住宅が密集している。
悪いことに、雪見橋のところで川が左に曲がっていて、この老朽化した護岸にまともに水がぶつかる。98年台風7号のときに決壊しなかったのが不思議なくらいだ。つぎはダメかもしれない。
ここで水が溢れれば、城南1丁目が甚大な被害を受けるのはもちろんだが、それだけではない。溢れた水は鞍月用水に沿って流下し、金沢市中心部の片町・香林坊地区が洪水に見舞われる。県は片町に近い犀川大橋地点の危険性ばかり言い立ててきたが、犀川の水は、そこにたどり着く前に城南1丁目で溢れ、片町・香林坊を襲うのである。
雪見橋直下、右岸の護岸
セメントは剥がれ、土がむき出しになり雑草が生え放題
ダム推進にばかり熱中しているとこの惨状が目に入らなくなる。
1枚目の写真でわかるように、鞍月用水堰から上流、大桑橋あたりまでの犀川は、中洲が発達し、ちょっとした森のようになっている。このあたりで流下能力を高めるには、(自然環境の破壊の問題は措くとすれば)中洲の木々を切り払い浚渫して河床を下げるのが、まずは手っとり早い方法だろう。
しかし、犀川水系河川整備検討委員会にたいし県河川課は、河床の掘削は水質汚濁を招き環境保全の見地から好ましくないと報告し、大筋みとめられてしまった。犀川大橋地点で流下能力を高める簡単な方法(=ダムの代替案)を否定して、ダムが優れていると言いたかったわけだが、それなら城南1丁目付近の大きな中洲を浚渫することなど、とんでもない水質汚濁の原因となるので、ぜったいにできない相談だろう。
ダムをつくりたい一念で、基本高水を水増しし代替案を否定するから、考えてもみなかったところで自縄自縛におちいる。その場しのぎの口から出まかせばかりつづけていると、身動きがとれなくなる見本である。
いずれにしても、越堤にしろ破堤にしろ、ここで川が溢れたら、県の責任は免れない。
危険性はすでに指摘された。「知りませんでした」は通らない。もう言い逃れはやめて、大急ぎで対策を講じるべきだ。