石川県、ダム関連公文書を紛失・隠匿

−−河川法違反の疑いも−−

(2001年4月23日掲載)


 辰巳の会の公文書公開請求によって、石川県がまたもやダム関連の重要公文書を紛失していたことが明らかになりました。また、一部の文書については、発見しておきながら、公文書不存在決定を取り消さず、発見を辰巳の会に知らせず隠していたことも判明しました。

 今回の公文書不存在は、単なる紛失ではなく、河川法に定められている手続きを経ず違法にダムを建設してきたのではないかという疑念をもたせるものです。

 辰巳の会は、4月19日、県庁を訪ね、谷本正憲知事あての抗議文を提出するとともに、行政不服審査法にもとづく異議申立を行いました。


抗議文   異議申立書


 辰巳の会が2月13日に行った公文書公開請求にたいし、公開・非公開・不存在決定の期限(2月27日)を大きく過ぎた4月9日に『(案)公文書不存在決定通知書』(河第44号、平成13年4月 日)がファックスで届き、つづいて13日に『公文書不存在決定通知書』(河第44号、平成13年4月11日)が郵送で届きました。

 今回、公文書不存在が決定されたうち主なものは、以下の諸文書です。

犀川ダム、内川ダム(犀川水系内川)、新内川ダム(同)について

(1)関係河川使用者の工作物新築への同意をしめす文書

(2)関係河川使用者への補償の内容をしめす文書

 河川法は、川に工作物を新築する場合、関係河川使用者の同意を得ることを義務づけており、これらの文書は、半永久的施設であるダムの存在の法的正当性を証明するものです。これらは、県の文書管理の基準で永久保存文書に該当します。

 犀川ダムの認可申請書、全体計画書、認可書が一時紛失され(のちに発見)、内川ダムの同様の文書の原本が紛失されたままになっていますが、今回の紛失はより重大な問題です。
 関係河川使用者に必要な補償をせず、同意も得ないまま、関係河川使用者の権利を侵し河川法に違反して3つのダムを建設したのではないかと疑われても、県には反論する材料がないのです。

 辰巳の会は、4月19日午前、知事あての抗議文を提出するため県庁を訪ねました。知事の代理として中島浩土木部長に提出することを事前に連絡していたにも関わらず、土木部長は会議中だとして山本光利ダム建設室長ら河川課職員が土木部長室前に立ちはだかり入室を阻みました。

 激しいやりとりののち、河川課に場所を移して抗議文を提出することになりました。応対したのは、中川浩課長、山本光利ダム建設室長、尾崎良一課長補佐、大森義弘建設専門員など。

 山本室長は、これらの文書は作成の必要がなかったのであって、紛失したのではないなどと“反論”しました。作成しなかったことをどうやって確認したのかとの質問にたいしては、「そのように推測される」「当時の事情を調査中」としか言えませんでした。

 しかし、河川法にしたがえば、工作物新築によって河川使用者に影響を与えず同意を必要としないと判断した場合は、その判断の理由などを記した文書を作成しなければなりません。当然、これも永久保存文書です。その文書はあるのかとの問いに、県側は、存在しないことを認めました。

 さらに、内川ダムより上流の漁業権が放棄されており、内川ダムが漁民に影響を与えたことは明白で、同意の必要がなかったなどということはありえないと追求。
 驚いたことに、これに対して大森専門員は、内川ダムについては同意書の写しが見つかったと発言しました。山本室長が「作成しなかった」と言ったばかりのその文書が発見されたとは、支離滅裂な説明です。

 文書の存在を確認しながら公開しないのは情報公開条例違反だとの指摘に、大森氏らは、「不存在決定のあとで見つかった」「ほかの文書も見つけてから公開しようと考えていた」などと言い訳をしました。しかしそれならそのように連絡があるべきだし、第一、ほんの数分前に山本室長は「作成しなかった」と説明していたのです。

 情報公開条例にもとづく公文書公開請求に対して、文書の存在を確認しながら、公文書不存在決定を取り消さず、請求者に発見を知らせていなかったのです。これは、公文書隠し以外のなにものでもありません。

 辰巳の会の法と道理にもとづいた抗議・追求に、苦し紛れの言い訳で一部文書の存在を告白してしまいましたが、あわよくば隠したままで済ませようとしていたとしか思えません。

 辰巳の会・碇山洋事務局長が抗議文を読み上げ、「必ず谷本正憲知事ご本人にお渡しください」と念を押して中川課長に手渡したところ、中川課長は「預からせていただきます」と述べました。

 碇山「預かるだけでは困ります。知事に届けてください。」
 課長「検討させていただきます。」
 碇山「検討した結果、知事に届けないこともあるということですか?」
 課長「いえ、そういうことではありません。」
 碇山「まちがいなく届けてくれるんですね?」
 課長「私どもで内容を確認させていただきます。」
 碇山「内容を確認してどうするというんですか? 知事に届けるとはっきり約束してください。」
 課長「……」

 言を左右にして、知事に届けると明言しようとしないので、「もうあなたには渡しません。自分で直接知事のところへもっていきます。返してください」と抗議文を取り返そうとすると、中川課長は抗議文をつよくつかんではなそうとしません。「知事に届けると約束しなさい!」と叱咤して、やっと「知事に届けさせていただきます」と述べました。

 「公文書紛失」の失態が相次ぐ石川県ですが、たんなる紛失ではなさそうです。
 法律を無視してダムをつぎつぎと造り、法律違反の証拠になりそうな文書は廃棄したり隠匿したりしているのではないか−−今回の対応は、石川県の河川行政全体にたいする疑念をつよめさせるものです。


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