つづき・・・ (パート3)
「天使の涙」
監督:ウオン・カーワイ
出演:金城武 カレン・モク レオン・ライ ミシェル・リー
香港を舞台に、殺し屋・殺しの案内役・口の聞けない青年・失恋した金髪娘の4人の若者が繰り広げるノンストップラブストーリー。4人はそれぞれ全く違った境遇にいながら、互いに自分のパートナー(恋人)を探し、失恋した自分の心を埋めていく中で、奇妙な運命の糸によってめぐり会っていく。「恋する惑星」の続編みたいなモノ。ウォンカーワイの作品は、その巧みなカメラワークがまず目を引く。スローそして流しと、こんなにまで心に訴えかけ、作品の特徴を引き出しているカメラワークは他に無いんじゃないかな。そのテンポにも惹かれる。音楽もまたイイ。「恋する惑星」と比べて、金城武の役どころがイイ分、僕はこっちの方が好きかな。もちろんあっちも好きだけど。最後のセリフ、金髪娘の別れ際のセリフが僕には特に印象的だった。
「アマデウス」
監督:ミロス・フォアマン
出演:F・マーリー・エイブラハム トム・ハルス
”アマデウス”とは、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトのこと。神童で天才作曲家モーツァルトは、その才能とは裏腹に陽気に笑い、飛び回り、女の尻を追っかける”ふざけた”男。同期で宮廷作曲家のサリエリは、そんな彼の才能に強烈に嫉妬する。モーツァルトの若き死の真相とは何かを、サリエリを通して綴った伝記モノの傑作。モーツァルトを嫉妬し、己の無能を感じるサリエリの恐ろしいまでの心理をうまく描いていて、本当に面白い。モーツァルトの死の真相を凡才の天才へのねたみに置いた着眼点もすばらしい。クラシックの演奏、この時代の描写もすばらしく、見た後きっとクラシックが好きになる。84年アカデミー作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞を獲得している。かなりお勧めの一本。
「カッコーの巣の上で」
監督:ミロス・フォアマン
出演:ジャック・ニコルソン ルイーズ・フレッチャー
精神病棟を舞台に、刑務所から送られてきたマクマーフィーが管理体制の病院のやり方に反抗し、無気力で主張の無い患者達を次第に変えていく。人間の尊厳とは何か問い掛けた名作。無口を装ったインディアンの大男チーフが見せるラストは感動的。題材といい、脚本といい、”本物”の映画。ジャック・ニコルソンの演技は他を圧倒していて、これで彼はアカデミー主演男優賞を獲得している。75年に作品賞、監督賞など、5部門で獲得。
「ジャッキー・ブラウン」
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:パム・グリアー サミュエル・L・ジャクソン ロバート・デ・ニーロ
密輸品運搬役の女性、彼女を使う銃密輸の元締め、彼女に惚れる保釈金融会社の社長、そして密輸取締り官などが2000万ドルの密輸・受け渡しをめぐって繰り広げる話。金という魔物をめぐって、それぞれのエゴがぶつかり合い、騙しあいが始まる。バム・クリアー扮する密輸品運搬役の女が気丈でカッコイイ。サミュエル・L・ジャクソンもまた、クレイジーな役を演じていてカッコイイ。顔ははっきり言って3枚目以下かも知れないけど、彼の存在感と言ったらすばらしく、そのクセのある演技に惚れてしまう。タランティーノ作品らしく、展開の良さ、セリフ回しの豪快さ、独特の雰囲気は健在。しかし、「パルプ・フィクション」など過去の作品と比べると衝撃度、脚本と言った点でもちょっと劣るかな。
「恋愛小説家」
監督:ジェームス・L・ブルックス
出演:ジャック・ニコルソン グレック・キニア ヘレン・ハント
紙面上ではすばらしい表現力で人気の恋愛小説家。しかし現実の彼は、極度の潔癖症。また、カフェで働く女性に恋するが、シャイな性格から自分の気持ちを素直に表現することができず、常に相手を傷つけてしまう。そんな彼だが、借金に追いこまれた隣人の愛犬(潔癖症で犬も触れなかった)を預かることになってから、彼は次第に変わっていく。シャイでいて頑固な主人公の微妙な心境の変化を心にくいほど巧く表現したジャック・ニコルソンは、この作品で2度目の主演男優賞を獲得している。ジャックが犬と戯れる場面は、思わずはにかんでしまう。静かであるが心温まる、本当にすばらしい作品。
「ブエノス・アイレス」
監督:ウォン・カーワイ
出演:トニー・レオン レスリー・チャン
アルゼンチン・ブエノスアイレスを舞台に、2人の男性の同姓愛について描いた作品。愛し合う二人はいつかイグアスの滝を見に行こうと誓うが、金・嫉妬などにより2人の仲は次第に崩れて行く。同性愛だからこそ表される純粋な愛のかたちを表現している。しかし、抱き合うシーンは衝撃的で、さすがに退いてしまう。トニー・レオンが昔を思いながら涙するシーンには感動した。噂によれば、レスリー・チャンって本当に同性愛者らしい。(トニー・レオンは違うよ。)
「陽のあたる教室」
監督:スティーブン・ヘルク
出演:リチャード・ドレイファス グレン・ヘドリー
生活のため高校の音楽教師となったホランド先生だが、次第に教師という職業に情熱を抱き、音楽に興味を持たない生徒たちに音楽の素晴らしさを教えていく。生まれつき耳が不自由な長男の出産そして確執など、苦難を乗り越えながらホランド先生は定年を迎える。本当に感動的な話。熱心に教えた生徒一人一人に彼の精神が受け継がれ、そして成長して行った生徒たちが再び彼のもとに。定年の彼をみんなで迎え入れるシーンは泣ける。「いまを生きる」もそうだが、学園モノはいい。
「白い嵐」
監督:リドリー・スコット
出演:スコット・ウルフ ジェイソン・マースデン ライアン・フィリッペ
60年代に起きた事故を元にした真実の話。船乗りを目指す12人の少年達と教官・船長達は、アルバトロス号にのって航海に出る。そこで行われた船長の厳しい指導に、彼らは反抗的であった。しかし、船長の生命を預かっているという強い責任感・そして裏返しにある愛情に、彼らは尊敬の念を抱くようになり、堅い友情で結ばれるようになる。そんな時、白い嵐(ホワイト・スコール)はやって来る。いくら説明しても周りの者には理解できないそのときの状況、そして彼らの強い信頼関係。それらを考えさせられるラストの裁判シーンには感動。ハラハラさせられる嵐のシーン、そして感動的なラストと、なかなかの映画。
「スリング・ブレイド」
監督・脚本・主演:ビリー・ボブ・ソートン
出演:ドワイト・ヨーカム J・T・ウォルシュ
母の不倫現場を目撃し、母とその相手を殺して精神病院に入れられていた知能障害者のカール。出所して工場での職も得た彼は、母親と2人暮らしの少年と出会う。少年と彼との間には友情が芽生えるが、そのころ少年は母の恋人の母への暴力に悩んでいた。そして、それを知ったカールは過去の記憶をたどる。始めから、全体的に静かな構成。ちょっと静か過ぎない?と思ったが、それが最後の一大行動への前触れだと知って納得した。96年度アカデミー賞脚本賞を受賞した。
「雲の中で散歩」
監督:アルフォンソ・アラウ
出演:キアヌ・リーブス アイタナ・サンチェス・ギヨン
見てびっくりしたが、この映画、反町隆志主演のTVドラマ「バージン・ロード」と内容的にほとんど同じ。どっちが最初か知らないけど、違うことと言えば、時代が第2次世界大戦直後であること、主演がキアヌであることくらい!?妊娠後相手に捨てられた名家の娘。帰ることができず困っているところに、戦争帰りのキアヌとの運命の出会い。彼は手助けで新婦を装っているうちに、彼女に本当に恋する。「ロミオとジュリエット」を思わせる屋敷に、一面に広がるブドウ園と、きれいなところはいい。内容も、もし最初にこっちを見ていればもっと面白かったかもしれないけどね・・・。キアヌの元女房とのやりとりがちょっと短絡的過ぎる。
