商に就いての答  尾形 亀之助

 もしも私が商(あきなひ)をするとすれば
 午前中は下駄屋をやります
 そして
 美しい娘に卵形の下駄に赤い緒をたててやります

 午後の甘まつたるい退屈な時間を
 夕方まで化粧店を開きます
 そして
 ねんいりに美しい顔に化粧をしてやります
 うまいところにほくろを入れて 紅もさします
 それでも夕方までにはしあげをして
 あとは腕をくんで一時間か二時間を一緒に散歩に出かけます

 夜は
 花や星で飾つた恋文の夜店を出して
 恋をする美しい女に高く売りつけます


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この詩に出てくる「恋文の夜店」が素敵で、
今回の喫茶室のイメージを膨らませてくれたのでした。