どんよりした空を見上げていると、不意にあいつに会いたくなった。 笑顔を見たくて仕方ない。 しらず早足になったおれの顔に、雨粒ひとつ零れ落ちた。 泣き出した曇り空に、あいつの泣き顔が重なった。 受け止めたくて、抱きしめたくて、おれは空を見上げて両手広げた。 ……馬鹿みたいだと思ったけれど。
冷たくて怯みそうになった。 目に入って、思わず目を閉じそうになった。 それでも、 白い息が空に上っていくのを見た。 雨が、雪に変わっていくのを見た。
手のひらで淡く消えて行く雪は、それでも確かにおれの体温を奪って、 自分にないもの受け取りながら、満足そうに水に戻った。 おれの小さなため息は、白い世界に飲み込まれて、 新しい色に染まりながら、明日の空へと上っていった。
春の頼りない淡雪に、あいつを重ねて苦笑する。 とどめておきたくて、とどめておけなくて。 それでも惹かれるから、きっと、ずっと、もっと、側にいたい。
手のひらに残った水滴を、そっと握り締めた。 受け止めたいから。抱きしめたいから。この腕に、あいつを。 〜END〜 |
トラップを書き始めたころトランス状態が切れてきて、中盤以降はうんうんうなりながらひねり出していました。 今見なおすと固まってないのが目立って目立ってしょうがないですね(苦笑) 二連目なんかはもう半分行稼ぎです(爆) このお話で書いたのはちょっぴりホットなトラップです。トラップってなんとなく内に秘めた熱いものがある人のような気がするのですよね。 |