どんよりした空には、君の笑顔を思い出す。 ほんの少しでも、元気になれそうな気がしてくるから。 冷たい雨粒も気にならないくらいに、なんだかあたたかくなってくる。 ちょっとしたおまじないだ。 こんなときでも君がおれの支えになってること、君はまだ知らないんだろうな。 それはきっと、春の淡雪のように触れればとけてしまうひとつの答え。
雨粒はいつしか雪になった。 白い息に頼りなく舞って、頬に触れながらとけていった。 季節はずれの淡雪に、おれはなぜだか哀しくなった。 そしてぼんやりと考える。 願うならば、 君の上に降る雪が、哀しみに彩られることのないように……
大切に包めば、とけてしまうだけの雪。 君も大切に包むだけじゃだめなんだろうな。 春の淡雪はとけて消えてしまうことを知っていて、それでも静かに舞い降りる。 触れればとけてしまうこんなおれの小さな答えも、静かに君に届けたい。
寒さを感じればぬくもりを求める。 けれどきっとそうではなくて。 君のことを想うから、変わることなく何より心にある気持ち。
そう、それはきっと、君に届けたい春の淡雪。 〜END〜 |
クレイの話はトランス状態の切れたかなりきつい状態で書き上げました。一連目からしてかなりうなってうなって搾り出してきたものですから。 そのせいか、三作の中でこの話が一番「春の淡雪」を意識したものになってますね。実は何気に一番気に入っているものだったりします(笑) クレイはあったかく包んでくれる人ですから、想い人を春の淡雪にだぶらせてしまいました。「君も大切に包むだけじゃだめなんだろうな。」っていうのがちょっとしたこだわりだったりします。 この三作、実はポエムでもなければ小説でもありません。 中途半端な「ポエム風のお話」です。 |