「ぱぁーるぅ、これなんらぁ?」
ルーミィは目をまんまるにして「それ」を見上げた。
ふふっ、かーわいい。
わたしはにっこりとほほ笑んでルーミィのシルバーブロンドの髪に手をのせた。
「これはね、ササっていうの。今日は特別な日でね、紙に願いごとを書いてこれに下げるとその願いごとが叶うんだって」
七月七日。今日は遠い国のお祭り、「七夕」なのだそうだ。わたしもよく知らなかったのだけれど、みすず旅館のおかみさんが教えてくれた。
「つい最近シルバーリーブに引っ越してきた人がね、その国の出身なんだよ。だからその人の歓迎会も兼ねてその『七夕』っていうのをやろうってことになって。
広場に行ってみてごらん。おっきなササがあるからさ。そうそう、自由に飾りつけしてかまわないからルーミィちゃんと願いごとでも書いておいでよ」
そんなわけで、わたしはルーミィと一緒にシルバーリーブの広場までやってきたのだった。
それにしても……おっきいササだなあ。ルーミィだけじゃなくてわたしも思いっきり見上げないと全体を見ることができない。淡い緑色が風に揺らされて、さやさやと音をたてていた。
もうすでにたくさんの人がいろんな飾りをつけていて、願いごとを書いた短冊だけじゃなく、おりがみで作った輪つなぎとか、ちょうちんなんかもあった。こういうのを見ていると、なんとなくわくわくしてしまう。
「ねえ、ルーミィ。わたしたちも旅館に帰って飾りを作らない?」
わたしが声をかけるとルーミィは目を輝かせて頷いた。
「うん! ぱぁーるぅ、ルーミィ、い〜っぱいかざり、つくるお!!」
旅館に戻ると、ノルとシロちゃんがいた。七夕のことを話して二人にも飾りを作るのを手伝ってもらうことにした。
「ほら、これくらいの幅におりがみを切ってね、それをくるっと輪にしてつなげていくの」
わたしはルーミィとシロちゃんに輪つなぎの作り方を教えた。これは小さいころにパーティの飾りつけ用に作ってたりしたからわたしも作り方を知ってる。
「んしょ、んしょ……」
はさみとのりを使って、ルーミィは一生懸命輪つなぎを作り始めた。シロちゃんも前足を器用に使っておりがみに折り目を入れている。う〜ん、ほほ笑ましいなあ。
ノルも同じことを感じたらしく、目が合うとにっこりと笑った。それからおりがみを一枚とってなにやら折り始める。
「何作ってるの? ノル」
ノルは黙ったまま、今度ははさみを持っておりがみに切りこみを入れ始めた。しばらくそうやってはさみを動かしてからおりがみを広げた。
「うわ〜、きれい!」
切れこみが波のようになっていて、おりがみが流れる川のように見える。
「ねえ、これってひょっとして『天の川』?」
わたしが訊くと、ノルはひとつ頷いた。やっぱり! すっごく繊細できれいなんだもん。ノルってすごいなあ。大きな手でこんなに素敵なものを作れるなんてね。
ひたすら感心しているとノルが照れたように顔を赤くした。わたしは笑っておりがみをとった。
「どうやって作るの?」
「うん、まずこうやって……」
丁寧に教えてくれたノルのおかげで、わたしはたくさんの天の川を作ることができた。
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