・三十二章~三十四章・
三十二章
サンの国へは、徒歩で五日かかるはずだった。ザラサのように、空間移動が使えるのでなければ。
黙は、なのに乗り物を断ったのだ。
「しっかり掴まっていろ」
出発の時にそう言った切り。黙は老を抱えて、まるで鳥か獣のように最短距離を駆け抜けた。川を跳び、森を抜け、山などそこにあると思っているのかさえ疑わしい。老が黙の腕の中で緊張しているうちに、サンの国の入口に着いてしまった。
丸一日とかかっていない。
「……ひい……な、なんちゅう奴じゃ、お前は……」
老体を少しは労らんかい、と毒突く老に、黙は神妙な顔で、すまない、と言った。
「あんたは頑丈だと思った」
「……いや、まあ……」
確かに多少きつかったが、我慢できない程ではなかった。黙なりに、老に合わせた速度で移動したのかもしれない。では、あれでも加減したと言うのか。
「……いいわい。ここが、サンじゃ」
崖の上から見下ろす。
ぐるりを山、その内側を森に囲まれて、サンの国は広い平らな土地に作られていた。自然の城壁に守られた要塞のようにも見える。
「国主の城はあの辺りじゃ」
老がここから一番遠い側の山を指差す。町は、城を中心に、水紋が広がるように並んでいた。町中に所々見えるオレンジ色は、畑だろうか。
「百年前と、変わったのう……」
昔はもっと、国中をオレンジ色が占めていた。豊かな実りの国サン、だったのだ。
「町を突っ切るか、山を迂回するか?」
城までの道程を黙が尋ねる。黙なら、どちらを選んでも大差はなかったろうが、この場合は、老の立場を思い遣ったのだろう。覇権は手放したとはいえ、未だ老の地位は重い。その老の屋敷を破壊した相手を訪ねるのだ。のこのこと町中を歩くのは、余り巧いとは思えない。
「そうじゃな……」
また超ジェットコースターに乗るのか、と老が考えていると、目の前の空間が歪み、一瞬後には、人が立ち現れた。
「お待ち下さい」
身構える黙と老に掌を見せ、若い男は頭を垂れた。
「チンと申します。ザラサの息子です。父は今国を留守にしておりますので、国主の命によりわたくしがお迎えに上がりました」
成程。彼は父の空間移動の能力を受け継いでいるらしい。黙の気が多少物騒になっているのは、チンの気が屋敷跡に残るザラサの気と似ているからだろう。
「そうか。ご苦労じゃな」
チンを労い、黙を見る。黙は余り乗り気ではないようだった。黙が何を心配しているかは老にもわかる。途中の道もわからず城に連れて行かれるのが気掛かりなのだ。万が一の時、帰り道に支障が出る。だがこの迎えを断る訳にも行くまい。
「ご心配は無用です。一瞬で城に着きます」
それが心配なのだが、チンという青年は、悪人ではなさそうだが多少鈍いようだ。二人が、空間移動に不慣れで及び腰になっていると思ったらしい。
「……頼む」
黙が応(いら)えた。はい、とチンは頷き、老と黙に触れる。ぐにゃりと周囲が歪んだと思うと、軽い眩暈。
「……これはようこそ。御老体」
硬い声が響く。景色は安定していて、そこは、既に城の中。謁見の間か。
「思ったより早いお着きで。御気分はいかがです」
メカナが、薄く笑って、国主の椅子の横に腕を凭れて立っていた。
「……眩暈がするわい」
ちらりとメカナがチンを見る。チンはびくりと震えて、どっと汗をかき小さくなった。
「もうよい、下がれ」
「……は」
チンが一瞬でその場から消える。
「空間移動の腕はザラサよりは落ちる。許せ」
「ザラサはどこじゃ?」
「秘密だ」
楽しそうにメカナは笑う。余り派手な服装はしない者だと思っていたが、と老が思う。体にぴったりとした細いドレスを着ているのは普段と変わらぬが、柄が派手だ。ナジの花がカナンの光糸で大きく刺繍されている。飛びリラ色の髪も今日は豊かに背に垂れて、口には淡ナジ色の紅まで差してある。
「今日はまた美人じゃな。女だと言われれば信じるぞ」
「客人をもてなしたつもりだが、不快なら止す」
「いやいや」
もてなされているのはこっちじゃろうな、とちらりと隣を見上げる。黙は無表情に口を開いた。
「女ではないのか」
「チョウラと同じ一族でな。どっちもありじゃ」
チョウラの名が出た時に、メカナは微かに眉を寄せた。
「そうじゃな、と言うことは、お前の惚れとるヨウとも親戚じゃ」
黙は黙ってメカナを見ている。メカナは不機嫌そうに口を開いた。
「チョウラ? あのバカか。あんな愚か者と同族扱いは止して欲しい。あれは一族一の愚か者だ」
「……これはまた」
老は目を丸くしてメカナの悪口を聞いた。メカナが口汚く話すのを聞くのも初めてなら、チョウラが愚か者呼ばわりされるのを聞くのも初めてなのだ。
「そりゃまた何でかの」
今度はメカナが目を見開いた。
「ヤサ殿ともあろう者が」
そして、くっと喉で笑って話し出す。
「チョウラは美しく力強い。そのように生まれたくせに、あれはそれを無駄にしたのだ。力があるくせに己が生で覇は取らず、生きているうちに一人、死んでから一人子を設けたが、子は二人とも役立たずだ。何という無駄」
「死んでから一人……?」
老の反応が、メカナは可笑しくてならぬらしい。
「なんだ、本当に知らぬのか、これは傑作」
メカナは天を向いてははは、と笑う。
「知らずに世話していたと言う訳か。俺はまたてっきり、ヤサ殿のセンチだと」
「なに?」
メカナはニイッと笑って老を見た。彼はただ楽しいのだろうが、その笑みは幾分残酷だ。
「チョウラの二人の子。生きているうちに人間と成したのがヨウ。死して花と融け合い成したのがミョウだ」
「……何じゃと」
「妖魔界にたまたま迷い込んだ弱い人間、花や土地に染みていた弱い生き物、そんなものとチョウラは通じたのだ。愚か者でなくて一体なんだ?」
「ミョウをどうした」
口を開いたのは黙だ。メカナはじっと黙を見、す、と椅子を離れて黙に寄った。
「チョウラの子に惚れているそうだな」
フフ、と笑う。
「お前のような人間が相手だったなら、俺もチョウラをバカとは言うまいに」
「質問に答えろ」
「すれば、チョウラの子は二人とも親より目が高い。どうだ黙。俺の子を生まぬか?」
黙は表情を変えずに答える。
「俺は子は生めん。生めたとしても断る」
メカナは目を丸くする。
「……生めぬのか? 不便だな」
黙も老も知らぬが、黙が人間界に置いて来た妖魔もこんなことを言った。ならばチョウラも、迷い込んだという人間相手に、「不便だな」と言ったのだろうか。
「まあいい。俺が生む。種を寄越せ」
「断る」
メカナは不思議そうな顔をした。
「強い子を残そうとは思わぬのか? 理不尽な生き物だな人間とは」
理不尽。確かにそうかもしれぬ。密かにメカナに同意して、老が黙を眺めた時、黙はギッとメカナを睨んで語を強くした。
「質問を変える。ミョウをどうするつもりで連れ去ろうとした?」
見間違いではない。メカナは確かに一瞬怯んだ。ぴくりと揺れた後、表情に上って来たものは何か。
「……もうミョウはどうでもよい。お前をここへ招きたかった。強い人間というものを見たかったのだ。聞こえるのは座ったまま動かぬという話だったのでな」
メカナの声に艶が出た。強い者に発情する。こういった一族なのだ。
「迷惑だ」
「言えた義理か。お前の存在は妖魔界を揺らしたぞ。じっとしていても揺れるなら、動いて見せろ。その方が幾倍か面白い」
つまるところ俺も退屈なのだ、そう笑って、メカナは老を見た。
「口出しは無用。御自分は十分乱世を楽しまれたはず。俺はもっと早くに生まれたかったのだ。生憎こればかりは自分では何ともし難くてな」
「……メカナよ」
「何か」
「お前、この世で遊ぶ気か?」
「遊ばずして、どうする」
意外そうにメカナは言う。
「楽しい方が良かろう」
「ザラサはどこじゃ」
「秘密だと言った」
メカナの笑顔は、邪心があるようなないような。
「……そうだな。黙がここに留まると言うなら教えてやっても良い」
くい、と黙を見上げる。
「どうだ?」
「……わかった」
「黙、」
「世話になろう」
メカナは上機嫌だ。喉を反らせて黙を見る。
「では一つ教えよう。お前とザラサのせいで、新しい穴が開いた。古い穴が移動したのかもしれぬ。<幸い>穴の周りは何もない。その穴はサンが頂く」
「……なんじゃと、まさかそれは」
「……ああ、<昔>、ヤサ殿の屋敷があった場所かもしれぬなあ」
ニイ、と笑って老を振り向く。
「急いでお帰りになったがいい」
黙が老を見た。手を伸ばそうとしたようだ。老の横に、チンが現れた。老の腕を掴んだのは黙ではなくチンだった。景色は一変し、老は崩れた屋敷の傍らに、一人で立っていた。
三十三章
壊れたベッドは粗大ゴミに出して、克己は部屋の床に布団を敷いて寝ていた。勿論横にはミョウがいる。ミョウは余りモクの話をしなくなった。だがこうして寝ていると、時々寝言でモク、とやる。
大抵ミョウの方が先に寝入る。克己は寝言を聞く度に、ますます眠れなくなるのだ。
その日も克己は悶々として、布団の上で身を起こしていた。家の中の気配を探ってみる。どうやら家族達は寝たらしい。
ミョウがくすん、と鼻を鳴らした。見ると、涙ぐんでいる。指の腹で涙を拭ってやると、んー、と唸って擦り寄って来た。そっと頭を撫でる。ミョウの眉が緩む。嫌な夢は消えたようだ。
誰か、自分の頭を撫でてはくれぬものか。
そうすれば、少なくとも今は、眠りに就ける。
母さんに、そう思ったが、今頃は敏也にくっついて眠っているのだ。遥の邪魔も、敏也の邪魔も、克己には出来ない。
父さん、と思った。彼を思った。
彼が遥を置いて、一人行ってしまった気持ちが、今なら、何となくわかる気がした。
自分はいない方が良いのだ。いれば、誰も彼もを疲れさせる。
昔、体がまだ小さい時に彼に出会った。彼は克己の頭を撫でようとして、迷って、止めた。
撫でてくれと、今なら、言えるだろうか。
こんなに大きくなって? 克己は自分の姿にぷっと吹いた。
大きな子供だ。自分は、大きな子供だ。
「……だって、俺まだ二歳児だよ……」
俯き、呟く。しかし裕太でさえ三歳だ。もしかしたらミョウの方が、うんと年上かもしれぬ。
「父さん……」
一度も共に暮らしたことのない、一番遠くにいるはずの男が、その夜は何故だか身近に感じられて、泣けば頭を撫でてもらえる気がした。
克己は膝を抱えて、昔出会った時に、頭を撫でてもらえた自分を想像した。大きな手。優しい眼差し。
閉じようとした目を、ぎくりとして凝らした。目の前の床に、球体が乗っている。一メートル程の球体だ。微かに揺れる球体は、空気の流れに波打つのか、激しく回転しているのか。透明なくせに、球体の向こうは透けては見えない。
球体、なのだろう。立体的な鏡、あるいは平面に移る立体映像。矛盾を孕んだ存在感をもって、そこにある。
ふと、球体の中に人が浮かんだ。後ろ姿。
「……!」
その向こうにいる髪の長い女が、克己の方を指差した。映像の中で男が振り向く。
克己は惚けたように彼を見た。これは一体何の幻だ、そう考えて、だが幻に克己は叫んだ。
「――父さん!」
声が届いたとは思えない。しかし鏡の中の彼は、克己を見た。凝視し、目を見開いた。
予告も無しに球体は消えた。それと一緒に幻も。
克己は床に両手を着いて、がくりと肩を落とした。うん、と、ミョウが目を覚ました。
「……モク?」
目を擦り、身を起こす。
「モク、どこ?」
球体の中からは気は感じなかった。ミョウは寝惚けているのだろう。
「……行っちゃったよ」
克己はミョウを抱き寄せて、背中を軽く摩ってやる。
「……モク」
ミョウは克己の首に抱き付いて、幸せそうに寝息を立てた。
「きのう、モクが来たよ」
朝食の席で、ミョウは言った。誰も気配を感じなかったからだろう、一様に驚いた顔でミョウを見る。
「……寝惚けたんだよ」
取り繕うように克己が言う。しかしミョウは違うもん、と主張する。
「ボクが寝るまで、抱っこしてくれたもん」
それは克己だ。縦しんば球体に気付いていたとしても、ミョウは混同している。
「そっか。良かったな」
遥が笑って相槌を打った。ミョウは嬉しそうに「うん」と言う。
もし峻がこの家にやって来たとして、自分に会わずにミョウだけに会って行ったと考えるのは、遥にはとても辛いはずだ。ミョウの言葉を信じたのか、それとも話を合わせただけか、遥の顔からは読み取れなかった。
裕美が克己を見ていた。全く、この家では完全なる秘密というものは成り立たないのだ。
後日、登校途中、案の定裕美が克己にこう尋ねた。
「で、それから何も現れないの?」
克己が見たのは夢幻ではない、と仮定している。
「……うん」
克己は腹を割るしかない。
「呼べば、現れるかな、とかも考えたんだけど」
試すのはいつもミョウが眠ってからだ。しかし成果は出ていない。
「ふうん。そっか」
実はさあ、と裕美。
「ベベロさんがミョウに尋いてたんだけど、要領得ないみたいだったな。妖魔界と克己の部屋が、繋がってるとかなんとか」
「……」
「安定した穴じゃないみたいで、通路として使うにはまだ危険だって。これはベベロさんが<考えてた>んだけど」
ではあれは、本当に彼だったのだ。あちらの世界で、彼は克己を見つめたのだ。
「……一緒にいたの、誰かしら」
裕美が、面白くなさそうに言う。克己の頭の中の映像を見ての感想だろう。
「美人だったわ。悔しい」
裕美は遥の為に怒っているのだろう。克己が笑うと、「何よう」と口を尖らせた。
三十四章
下にも置かぬ扱いである。広い部屋を宛てがわれ、城の中は自由に歩いて良いという。
ただ城を出る時は、必ずチンがついて来る。いいというのに、風呂に入る時までぞろぞろと手伝いがついて来るのには、峻は閉口した。
「頼みがある」
とうとう弱音を吐いたものだ。
「風呂は一人で入らせてくれ」
メカナは大笑いした。
「そうか。それは悪かった。そこまで嫌だったとは」
メカナは肉を皿に置き、からかうように正面の峻を見た。
「なら俺がついて入ろう」
峻はコップの水を黙って飲む。
「……面白くないか」
メカナは溜め息をついて、峻が反応しないことをつまらながった。
二人でテーブルに着いている。妖魔界に来てからここでの食事は、峻には初めてのまともな食事だ。食材も味も、人間が食べるものによく似せてある。
メカナは髪を一つに束ねて、無地のドレスを着ていた。
「……黙。お前は何が楽しい?」
指に付いた肉汁を嘗めて、メカナは峻の目を覗き込む。
「ヤサとここへ乗り込んで来たお前は美しかったぞ。何故わざわざ大人しくしようとする」
切り分けた肉をフォークで口に運ぶ。峻の食べる様子を見ながら、メカナは指を噛み、目を細めた。
「俺と子を作る決心は着いたか?」
峻は手を止め、メカナを見た。ほんの少し、目に力が宿る。
「それは何度も断った。俺がここで世話になっているのは何もしない為だ。どこへも行かん。何もせん。あんたが暴れたりせん限りな」
「……いい声だ。お前は怒っている方が良い男だな」
冗談か本気かわからぬ口調でメカナは言う。ただ目はうっとりと峻を見ている。強い男が全力で暴れるところを想像して、快感を覚えている。
「あれは、お前の子か?」
不完全な穴を通して、人間界を見せられた。見えたのは、成長した息子だった。
「よく似ていた」
メカナは自分の指で幾度も唇をなぞっている。
「気までは感じなかったが、強いのだろうな」
ニヤリ、とメカナは笑う。
「気に入れば、お前の息子でも良い」
鋭く、峻は睨んだ。それをメカナは幸せそうに見る。
「フフ、良いぞ。良い」
唇を、ぺろりと嘗める。
「黙、お前は良い」
唇をなぞった指を嘗め、掌を喉に当てる。
「早くその気になれ。構わぬならこちらから襲うぞ」
クク、とメカナの喉が鳴る。唇が肉の脂と唾液でぬらぬらと光る。
「――ザラサは他国で何をしている?」
「……」
峻の静かな問いに、メカナは眉を寄せて黙った。
「地図を見せてもらった。ザラサの気が、多分イチイ、ヒチ、ココの国辺りに出入りしている。俺が国主を殺した国だ。何をする気だ?」
「……嫌な男だな」
メカナは、と、と背を椅子に預けた。
「俺がせっかく色仕掛けなどしてやっているのに、なんと色気のない話をする」
人間界では、それでモテるのか? と吐き捨てた。
「モテたことなどない」
「……」
真顔で答えた峻に、人間はわからぬな、と自分でした問いに矛盾する感想を吐くメカナだ。肉を掴んでかぶり付く。
「質問に答えろ」
「――秘密だ」
笑い、手の甲で口を拭う。
「俺と子を成すつもりになったら教えてやっても良いぞ」
峻は黙り込んだ。
サンの国の兵隊によって、老の別宅に避難していた者達は、町の外れに隔離された。屋敷跡にできた次元の穴を確保する為である。
「やれやれ、何ということじゃ」
事実上、老はサンの国の囚われとなったのだ。己一人空間移動で返された時、しまった、黙を奪られた、と思った。だが奪られたのは、己も同じだったのである。
元々老の屋敷には、余り屈強な者は置いていなかった。それでなくても、今ここに爆発を生き延びて集められた者達は、怪我人ばかりである。
老がサンの国を与えたのは、穏健な男だった。それが国主になって後に、メカナの色香に迷ったのだ。嘘か誠か、妻に望んで喰われたと聞く。
禁欲的な黙の風情を思い出す。
(まあ……大丈夫じゃと思うがのう……)
メカナがかなり執心していたのが気に掛かる。あれは、己が楽しければ何でも良い奴じゃからのう、と考えて、はあやれやれと顎を掻いた。
「老、お食事です」
「お、おお、すまんの」
屋敷ではベベロと共に働いていた女が、ここでは老の世話をしている。宛てがわれた部屋に皿を盆に乗せて持って来た。食料はサンの国から届けられる。
「……まあ、扱いはいいのう」
湯気の立つ料理を見ながら、これからのことを考えた。メカナがどう引っ掻き回して遊ぶつもりか、強い人間を手に入れ、老を封じた時点で、妖魔界(せかい)は既にかなり掻き回されているのだが。
(続く)