記事タイトル:『自閉症と心の発達』(心の理論を越えて/ピーター・ホブソン) 


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テーマ: 心の発達と自閉症   
カナーが、「こうした子どもたちは「通常生物学的に準備された、人との情動的接触を形づく
る生得的な能力をもたずに、生まれてきた」と示唆したのは、ある意味で妥当であったと考え
る。(P304)

自閉症児に共通しているのは、彼らが対人関係を、人と人との相互的なものとして経験できな
い、ということである。他者と心が通い合っているという感覚や、他者に情緒的に関わってい
るという感覚が、彼らにはきわめて乏しい。(P305)

[自閉症児に見られる精神病理症状](P309〜314)
(1)象徴遊びの障害
    障害を引き起こす根本原因が、三項関係の中で他者と心理的に関わることができない
    ことにあるなら、その結果、認知的な問題(シンボルが表す意味を理解できないこと)
    と、動機づけに関わる問題(別の役割や視点を新たに取り入れようとしないことや、
    健常児のように象徴遊びの中で生き生きと役割関係に没頭できないこと)の両者が生
    じるのも不思議ではない。
(2)心理的態度に気づいて、それに合わせることが必要な場合、必ず言語使用に異常がみら
   れること
    一般に話し手は、自分が言及しようとしていることを表示するだけでなく、自分の胸
    のうちにある意味をも伝えようとするものである。そして、これこそがまさに言語の
    本質である。
    このような言語の語用論的側面を反映した話し言葉の理解と産出こそ、自閉症者が最
    も途方にくれるところなのであ。
(3)反省的自己意識の制約
    恥や自尊心といった感情に欠ける傾向/自分自身が行為主体および所有者であるとい
    う感覚を持ち合わせていない/所有欲または所有感・競争心・自己防衛あるいは反撃
    も示さない・自分の意思を相手に伝えるために「いいえ」や「はい」と言うことにも
    遅れがある。
    健常な幼児は、プライドや所有欲、自己主張と反抗、他者との一致・不一致などの直
    中にあって、激しく心を揺れ動かしているのである。しかし、多くの自閉症者におい
    ては、自己−他者の関係に、そのような動機づけや情動の高ぶりが見られることは皆
    無に等しい。
(4)文脈に沿った思考と概念化の困難
    最終的には、多くの自閉症者が、ある程度のレベルの思考と言語を獲得するに至る。
    状況に合わせないステレオタイプな方法で、特定の概念を用いるといった、具体的な
    ものに縛られた思考をするという特徴は残るものの、比較的正常なやり方で多くの概
    念を用いられるようになる。
(5)心の特質を十分に理解できないこと
    信念とは何かを理解するために、自閉症児が越えなければならないハードル
     1、ある事態に対するとらえ方は、人それぞれである
     2、人は、表象された事物や出来事に対する態度をもつ
     3、信念とは、「本当のこととしてとらえること」であり、真実に注意を払うこと
       である
    通常だと、三項関係を経験することで、"心の向き"および"態度"とは何か、また世界
    のとらえ方が人によって異なるということについて、自然と理解できるようになる。
    ところが、自閉症児は、そうした経験を完全にはできないままでいるのである。
    自閉症児の中には、そうした理解をある程度身につけ、いくぶん反省的自己ももち、
    他者の表象的世界と行動との関係について、何らかの推論を行える者もいる。
    だが、そうした自閉症児でも、少なくとも次の二点においては弱点をもっている。
     1、自分自身および他者の態度にほとんど関心を示さず、意を払うこともしない状
       態に留まっている点。
     2、「(不特定多数の)任意の人にとっての世界」の意味をなかなか把握できない
       ということ。あるものの見方を共有して、現実のこととして承認していく対人
       相互過程に乗りそこねてしまう。
[2001年5月27日 16時7分22秒]

テーマ: 思考と言語について   
[オグデンとリチャーズ:シンボルが担う機能](P205)
(1)シンボルは、行動や思考を指示し、組織化する。
(2)シンボルは、人の経験の中で起こる事柄を記録し、そこにない実体を(表象されたもの
   として)喚起することができるようにする。
(3)シンボルは、他者とコミュニケートするために使われる。

[指示行為の分化とその対人関係上の基盤](P237)
(1)他者が身のまわりの世界にどのような主観的態度を向けているのか(具体的には、何に
   関心を向けて、どのように意味づけているのか)を知覚すること。
(2)何のために行動しているのかを知覚すること。
(3)ある人の伝達意図に気づくこと。

[カナー:自閉症児に共通して見られる特徴](P259)
(1)エコラリア(その場で、あるいは少し前に、人が話しているのを聞いた単語や語句を繰
   り返すこと)
(2)「私」と「あなた」など人称代名詞の混乱した使用
(3)言葉が獲得された元の文脈を見て初めて了解できる、独特な言葉づかい
(4)言葉に内包された意味の一面的にしか理解していない、話し言葉における融通性のなさ
さらに、このリストに加えられる特徴として、話し言葉の調子とリズムの異常(平板で抑揚が
なかったり、歌を口ずさむように話したりする)や、聞き手のもっている知識や興味に対して
鈍感であることや、それと関わって、誰かと話しを始めたり続けたりしにくいことも挙げてよ
かろう。

[ボルタックス:自閉症児の、日常会話における語用論的障害]
(1)話し手−聞き手の役割関係の理解
(2)対話を取り仕切る行為ルールに従うこと
(3)ある情報を話題にしたり引っ込めたりすること

コミュニケーションにおけるさまざまな発話行為(談話すること、記述すること、要求するこ
と、求めること、安心させること、質問すること、答えることなど)が成立するためには、
「人というのは、相手や身のまわりの世界に向けて、心理的な立場や態度をもっているものだ」
ということを自覚していなければならないということである。さらに、そもそもコミュニケー
ションの動機には、喜びの感じられる心の絆を築きたいという思いが含まれている場合が多い。
自閉症児は、他者と情動的に関わっていくことにおいて深刻な障害をもっているが、彼らは、
どんなときにコミュニケーションが成立するのかがよくわかっていない場合が多く、また、コ
ミュニケーションを成り立たせようとする動機にも欠けているように思われる。(P271)
[2001年5月27日 15時6分58秒]

テーマ: 心を理解することについて   
多くの人々の共通認識としての現実を理解するためには、他者が身のまわりの人々や世界に対
してどのような態度をとっているのかに気づくことが必要であり、そのためには、そうした他
者の態度に積極的に関与することが前提となっている。
他者の態度に気づくことによって初めて、人に同意するとか、人から過ちを訂正されるとか、
あるいは「あることが本当だと思う」といったことの意味を理解できるようになるのである。
(P159)

[視点の二重化とその発達的前提条件]
最初のポイントとして見ておかなければならないのは、ある事態に対する表象の仕方や解釈の
仕方が、正しいこともあれば間違っていることもあるということを、四歳児が理解しはじめる
という点である。このようにある事柄が真であるとか偽であるとか判断するためには、正しさ
に関する基準がなくてはならない。そして、この正しさの基準というのは、彼ら、つまり人々
の共同体によつて合意されていることと分かちがたい関係にある。(P166)
二つめのポイントは、"見かけ"と"現実"の概念を理解する前に、子どもは、それぞれの人は物
事を個々独自に解釈し、世界に対していろいろな感情や欲求などの心理的態度をもって関わっ
ているということをすでに了解している、ということである。(P166)

比較的成熟した自己意識は、18カ月には獲得されているといってよかろう。それとともに、他
者の"自己"の理解には欠くことのできない役割取得力が現れて、子どもは、他者の願望・欲求・
期待を概念的に理解できるようになっていく。(P180)

ここではっきり確認しておきたいのは、この2ヶ月の乳児が、他者からの働きかけにうまく合
わせるように、他者と心理的な関わり合いをもっているということである。・・(中略)・・
乳児が他者と同じように、行為したり、楽しんだり苦しんでいる様子が紹介された。またそれ
だけではなく、乳児は他者の身体に現れた心の状態に対して情動的に応答している様子も確認
された。(P183)
生まれて間もない乳児でさえ、大人との相互作用において調和(ハーモニー)を能動的に生み
出そうとしている。全体を通して重要なのは、子どもは情動的な反応を自ら起こしながら、
"人"(単に"身体"ではなく)を知覚し、対人関係を築いているということである。そこには、
主観的経験の対人相互の結びつきがある。
トマセロは、こうした事態を次のように説明している。
 誕生間もない頃から、子どもは、大人とうまく波長が合っている時と合っていない時がある
 ことをよくわかっている。乳児が、不調和状態を好まないことは、その様子から見てわかる
 ことである。
(P183〜184)
[2001年5月27日 14時30分15秒]

テーマ: 対人理解の発達   
"自己"や"他者"、"心理的態度"を理解することの間には、もともとある論理的関係が存在する
のである。まず第一に、心的状態の概念においては、それを人や動物にも帰属することが可能
であるということが、欠くことのできない条件である。
言いかえれば、心的状態を概念化することは、経験の主体であることの意味を概念化すること
でもあり、こういった概念的理解には、一部、"自己"存在の要件も含まれている。「自己性」
を十分に理解するには、自己が経験するいろいろな態度(たとえば、気恥ずかしさ・利欲心・
競争心・嫉妬などの態度)を子どもは理解しなくてはならないのである。
こうしたことから、"心的状態"の理解を説明するために、自己と他者のつながりと分化に影響
を及ぼす過程をしっかりと検討する必要があるのである。それと同じように、自己の概念的理
解を説明するために、"心的状態"の理解も分析していかなければならない。(P149)

カナーが述べているように、エコラリアは、子ども自身が置かれた状況のもとで、自分の視点
に応じて修正をしないまま、他の人の言葉を使うことで見られるものである。
自閉症児は言葉を取り入れる際、他者の発話をその人の態度と関係づけて、他者のスタンスに
同一化することはなく、その言葉が発せられた状況で自分が聞いたままの言葉を使うきらいが
あり、そのために、発話を反復することになるのである。他者の話している際の態度を認識し
たり、推測することができないのである。(P150〜151)

テイガー=フラスバーグも、自閉症児は「人は違った視座を持っている。すなわち、人はそれ
ぞれのやり方で、状況を知覚し、解釈し、記憶し、価値づけ、感情を向ける」ことが理解でき
ていないと指摘している。(P151)

何らかのものを獲得するのが「私」(me)であるかどうか、あるいは注意の対象となっている
のが「私」であるかどうかということなのである。そして、自己経験を支えるこうしたものは、
自閉症者にとって非自閉症者ほど安定したものではなさそうである。(P155)
[2001年5月27日 13時52分32秒]

お名前: ペンギン   
この章では、自閉症の「対人関係性」という名の下に、いろいろな問題を寄せ集めて紹介して
きた。ここで扱ったものをざっとあげてみる。
1、仲間や大人と関係をもつ能力。
2、他者と経験を共有するための行動を理解したり行う能力。
3、他者の苦痛や恐れに反応したり、社会的参照をする能力。
4、他者と関係しながら、情動を近く・表出し、協応させる能力。
5、他者の行為や態度を模倣する能力。
6、他者に愛着を形成する能力。
7、基本的な自己意識や他者意識を獲得するための能力。(P125)
[2001年4月24日 15時57分17秒]

お名前: ペンギン   
こうした実験場面において、自閉症児は、パズルがうまくできると精神遅滞児や健常児と同じ
ように微笑む傾向が見られた。だが、自分のしたことに注意を引こうとしたり、大人を見上げ
ることはあまりなかった。また、褒められたことに対して、嬉しそうな様子を見せることもな
かった。実のところ、パズルができたり褒められてから、大人から目をそらすという特異な反
応を示す者が多くいたのであった。その場にいる大人に褒めてもらったり、注意を向けられて
も(そして、経験を共有してもらっても)、そうしたことに対して自閉症児が抱く感情には、
何かが足りず、異常なところがあるように思われるのである。(P124)
[2001年4月24日 15時50分5秒]

お名前: ペンギン   
(自閉症児の自己の存在様式について)臨床的にも理論的にも、最も練り上げられた説明をし
ているものに、『小児自閉症‐言語を手がかりとした臨床的およご現象学的人類学的検討‐』
という書名のボッシュ(1970)の研究がある。この研究は、その中でもあらかじめ断わってい
るように、フッサールの現象学の影響を強く受けたもので、したがって、難解でかなり込み入
った議論になっている。彼は、「自閉症児独自の存在のあり方」(同上、P3)を明確にしよう
と、次のような自閉症児の特徴を描き出している。
1、所有感覚ならびに自己意識や恥じらいというものが欠如していること。
2、要求とか命令をして、他者に働きかけることに遅れがあること。
3、「ある行為をしている他者への自己関与や他者との共同した行為、ならびにその他者への
  同一視」(同上、P81)といったことが、どこか欠落していること。
                 ―中略―
遅れが生じるのは、その人の立場に自らを置ける存在として、"他者"を構成することである。
また、自他双方で物事の意味が、共同化された世界を構成することにも遅れが生じる。(同上、P89)

                            『自閉症と心の発達』(P122)
[2001年4月24日 15時42分14秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

つまり、表情の情動に関連した特徴だと一般には思われているものを、自閉症児は、情動に関
連しないものとして扱い分類しているとするならば、表情の分類課題の本当のねらいを誤解し
たまま、課題だけはうまくやってのけているのかもしれないのである。そして、実生活の中で
も、表情に込められた主観的で情動的な意味を十分に把握しないまま、表情の分類だけはでき
ている可能性があるということである。(P110)
[2001年4月15日 23時23分40秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

自閉症児の情動表現には、自閉症以外の子どもたちとの共通性は見い出しにくいものの、それ
ぞれの子ども独自の一貫した意味が込められているのである。(P105)

自閉症児は、他の子どもが示さないような、独特でとらえにくいさまざまな情動表出を行って
いたということであった。たとえば、怒りが伴った恐れとか、喜びが伴った怒りといったもの
がそれに該当するが、ユルミヤらは、こうした情動表出をネガティブで一貫しない混じり合っ
た表情と言っている。だが、通常の場合であれば、恐れや怒りなどの確実な指標となるものが、
自閉症の場合でも、同じ意味を持っているかどうかは定かではない。(P105)
[2001年4月15日 23時14分50秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

自閉症児は、大人に対してポジティブな情動を一様に低いレベルでしか示さないのだが、特に
他の群との違いが目につくのが、共同注意の場面においてポジティブな感情が減少する点であ
った。それは、健常児であれば、たいていは微笑む状況である。―中略―健常児ならば、自分
が注意を向けている対象に、大人の関心を向けさせて、嬉しそうにするところなのだが。(P100)
[2001年4月15日 23時2分47秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

自閉症児群と統制群の違いが最も顕著に現われたのは、「共同注意行動」の少なさであった。
自閉症児は、くすぐられた後に目線を合わせるし、おもちゃを手の届かない所に持って行かれ
ると、頻繁に相手と目を合わせていた。それなのに、動いているおもちゃと実験者を「交互に
うかがうように見ること」は全くしなかった。―中略―また、自閉症児は、精神遅滞児群より
も、養育者と相互に視線を合わせる時間が短く、相互交渉場面から離れて別のところに行く回
数が多かった。(P96)
[2001年4月15日 22時54分59秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

そういった状況で、4人の自閉症児それぞれが、食べ物を手に入れるなど、その場の目的を達
成するために大人を動かすことができた。しかし、誰一人として、大人の注意を自分自身やあ
る対象へ引きつけたり、向けさせたりすることはしなかったのである。どの自閉症児も、さか
んに大人に要求したり、抵抗を示したりするのだが、物を見せびらかす、事物について述べた
り命令する、自分と相互交渉している大人の存在を認める、といったことを示す者はいなかっ
たのである。これは、同等の言語能力をもつ健常児とは明らかに違う点である。(P93)
[2001年4月15日 22時42分54秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

そこで、一つの課題となるのは、自閉症児でも失われずにいるように見える対人的なやりとり
と、明らかに障害を受けていると思われる対人的な機能を識別することである。―中略―ただ
実際には、たいていの人は、目標を達成することにのみ価値を置くのではなく、ある社会的活
動そのものに何らかの価値があると思って行動しているということも事実である。とりわけ、
経験を共有することによって得られる喜びそれ自体が重要な動機づけとなっていることもある。
だとすると、私たちの検討課題は、人と事物の関わりあいのうち、自閉症児はどんなものに価
値を置いているのかを、明らかにしていくことであろう。「経験を共有する」ということは、
特に重要な検討対象の一つなのである。(P91)
[2001年4月15日 22時33分14秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性:自閉症の場合〕

また、人に近づいたと思ったら、またすぐに離れるといったことを何度も繰り返していた。そ
れゆえ、自閉症児が人に対して注意を向けて関わっていく仕組みに、何らかの異常があること
は確かであろう。そしてそれは、単に対人関係が欠如しているというような問題ではなさそう
だ。(P88)
[2001年4月15日 12時0分5秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性1:通常の乳児の場合〕

だかしかし、はにかみ、困惑、自己賞賛を特徴づける"自己意識"には、もっと別のものが多く
含まれている。私たちがこうした感情や意識をもつ際、身体を持つ自分は、他者から評価的な
態度を向けられ得る対象だということを認識している。また、それだけではなく、そうした他
者の態度の重要性を示すことにもなっている。各個人は、他者からはどう見えたり感じるのだ
ろうかということに関わらせて、自分自身を見たり感じているのである。私たちは、たとえそ
の場に自分一人しかいない場合でも、鏡や絵の中の自分自身を見ている際、常に私たちの意識
には他者の視点が入り込んでいるのである。(P84)
[2001年4月14日 18時57分27秒]

お名前: ペンギン   
〔対人関係性1:通常の乳児の場合〕

こうした事例が暗示しているのは、社会的文脈の中で、次のようにいくつかのタイプの発達が
同時的に進んでいるということである。
1、他者への気づきの発達。それは、他者のことを、共有関係がもてる意識主体として気づく
  ことにとどまらず、苦痛や願望を感じたり、慰められたり怒ったりもし、ある対象がその
  人にとって個人的な意味をもつ、そういう個人としての他者に子どもは気づいていく。
2、子どもが自分自身を一人の個人として感じる、自己感の発達。
3、自他の"自己"の特徴と心理的状態を内省し、適切な行動をとれる能力の発達。
[2001年4月14日 15時24分59秒]

お名前: ペンギン   
モウズレー病院の患者の半数については、年をとるにつれ、対人関係が多少とも改善してくる
傾向があった。その中には、「情緒的な希薄さが残り、共感性が欠けている」が、いくぶん社
交的な性格になった者も少しはいた。しかしたいていの場合は、社会的場面での"実際的な知
識"を持たず、他者の感情など気にもかけないという点では、あまり変化がなかった。(P49)
[2001年4月14日 14時57分11秒]

お名前: ペンギン   
ウイングとグールドが試みた、次のような社会的相互交渉のタイプ分け。(P43〜45)
1、社会的孤立。
2、受動的関係。
3、積極的ではあるが奇異な相互関係。

その後、ウイングは、対人関係障害群にさらにもう一つカテゴリーを加えている。そして、彼
女は、このグループに属する子どもは、最も改善した者でも、かなりやっかいな問題を残して
いると指摘する。
・・・このカテゴリーに属する子どもたちは、社会的相互交渉の中でも最も微妙なルールにつ
いて、貧弱な理解の仕方しかできていないとか、他者を敏感に受けとめることがないと言って
よかろう。このタイプの障害をもつ人は、直感的というよりはむしろ知的な学習を重ねること
によって、社会的行動を表面的に理解しているのではないか、という印象を受けるのである。
[2001年4月14日 14時34分17秒]

お名前: ペンギン   
自閉症児は「通常生物学的に準備されている、人との情動的接触を形づくる生得的な能力を持
たずに生まれてきた」とするカナーの説に、十分説得力があるかのように思えてくる。(P11)

この母親が強く求めていた、子どもの「気持ちや心」(hearts and minds)との出会いは、
どこにあったのだろうか。チャールズの態度や話ぶりからは、彼の思いや考えていることが何
も伝わってこなかった。その意味で、彼自身の「私−性」(me-ness)の感覚がどこか欠けて
いるようにさえ思われた。(P12)

自閉症者は、"人"という存在に気づくのが遅れるということがよくわかる。ようやく人の存在
に気づきはじめた場合でさえも、人とそれなりの関係をどうやって作っていったらいいのかが
なかなか理解できないままなのである。(P14)

この若者は、多くのこだわりをもっていたが、なかでも、"友だち"とはどんなものかを理解で
きないことが、彼にとって大きな悩みの種となっていた。そのため彼は、さかんに「あなたは
友だちか?」、「彼は友だちか?」などと問いかけるのであった。(P15)

ウイングによる、2〜5歳の自閉症児に見られる異常。(P34)
1、"物"や"人"に対する視覚的注意の異常。
2、指さしなどの身ぶりを使ったり、身ぶりを理解することがあまり得意でない。
3、動きがぎこちないことが多い。
4、人への関わり方の異常。
5、まわりの状況に対する情動的反応の異常。
6、照れくささの表し方の異常。
7、遊びの欠如。

ダーグレンとギルバーグの、生後2年の自閉症児の特徴。(P35)
1、周囲からの孤立。
2、遊びの欠如。
3、音に対する特異的な反応。
4、自分のしていることに他人の注意を向けさせられないこと。
5、笑うべきときに笑わないこと。
6、視点の定まらない目つき。

DSM−3−Rによる、自閉症についての記述。(P46)
1、自閉症者は、他者の存在や感情を意識しないことが著しい。
2、つらい時に、慰めをほとんど求めないか、求めても通常とは異なる求め方をする。
3、他者の模倣をすることがあっても、機械的な模倣になる傾向がある。
4、他者との簡単なゲームに積極的に加わろうとしない。
5、同輩と友だちになる能力に欠陥がある。
6、コミュニケーションに重篤な問題がある。

「本来あるべき社会性が欠如しているのを埋め合わせるための方法を、何とか探し出したいと
する切なる要求を、私たちは再三にわたって目の当たりにする」(カナー、1972)のである。
社会的関係を敏感に感じ取ったり理解できないと、その自閉症者には、次のような特徴があわ
せて見られることが多い。
1、あまり表情を変えない、自発的な動きが少ない。
2、身ぶりで何かを表すことが少ない。
3、感情的な反応がない。
4、発する音声の抑揚がない。
5、感情の平板化が全般にわたって見られる。(P51)

ニューソンは、ドーソンとエヴァラードと共同して、正常か正常に近い知能をもった93人の
生育史の研究を行った。ニューソンらによると、たいていの自閉症児が、最終的には社会的に
まわりを理解するようになっている。そのことは、社会的な接触や、場合によっては身体的接
触までもが、彼らにとっての励みとなり始め、よく知っている人から親愛の情を示されたり、
人前で認めてもらうと喜ぶようになったことからもわかる。ただ依然として、「社会的共感性」
には困難を抱えている。また、この若者のほとんどが、通常の社会的意識というものをもって
いなかった。せいぜい反復的な会話に関わる程度であり、他者の応答には気をかけないままで
あった。(P51)
[2001年4月14日 13時45分20秒]

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