四面楚歌

そもそも、闘いの始まりは、長男の「自閉性障害(アスペルガー症候群)」を無視されてADHDの診断しか下らなかったことだった。

しかし、今や、ADHDに対する批判とも闘わなければならなくなった。何故なら、次男の方は完全なADHDの行動障害児だからだ。


なにしろ、コイツの行動は目に余るものがある。正々堂々と教室から出て行く、いても授業に加わるどころか完全無視、好きなことをやっている。いつもいつもふてくされた態度で、いかにも面白くないといった顔をして斜めに座っている。それに飽きると、床に寝っころがる。何か興味を引くものを見つけると、しゃしゃり出てはベラベラしゃべりまくる。「やりたくない!」となると、堂々と反抗する。物を大事にするどころか、片っ端から壊していく。当然、机の中はグチャグチャ。掃除の時間は遊んでいる。

まあ、今時の小学校の1年生は、全体的に、集中力がない・姿勢が悪い・落ち着きがない・人の話を聞かない・けじめがない・緊張感がない…、とナイナイづくしだから、それほど目立たないと言えなくもない。しかし、参観会の後の懇談会でそれとな〜く「何故、先生はあの子を野放しにしているのか!?」と非難されているのが、ウチの次男なのは見え見えなのだ。

正直言って、私も、「できない」ことでも「しなければ!」と思い込んでパニックになる「自閉性障害」児の心情はよ〜く解かる。長男は、本当にできないことが多かったから、同情の余地が大きかった。と言うより、長男の場合は、運動能力が大幅に遅れていて、すぐにフリーズしたり泣いたりするクチだったので、抵抗できなかったのだった。それに、よく教室を飛び出して校内を歩き回っていたU君は、全くと言って良いほどコミュニケーションが取れなかったので、誰も「普通」にしていることを要求しなかった。

しかし、純粋のADHDでLDの行動障害児は、どう見ても「ただの・悪い子」「シツケのなっていないガキ」「できるのに、反抗してやろうとしない子」でしかない。あの様子から、聴覚失認と視空間認知障害による読字障害・目と手の協応運動障害・ソーシャルキューの読み取りの悪さと指示の理解の困難という社会性の障害があるなんて判る人は、まずないだろう。

ましてや、注意の転動性・多動・衝動性といった「注意の欠陥」によって、思慮分別と秩序のなさという深刻な「障害」を引き起こしていることなど、知るよしもない。 ただの「わがまま」「自己チュウ」「不注意」「落ち着きがない」「考える前に行動する」なんていう次元の問題ではないのだ。

そもそも、注意力がない人に「注意しろ!」と言い、落ち着きがない人に「落ち着け!」と言い、できない人に「しなさい!」と言い、とりかかりの遅い人に「グズ!」と言うのは、とっても簡単。そんなのは、誰にだってできる。叱って直るものなら・教えてできるものなら、もうとっくに治っている。そんなのは、「障害」とは呼びません!

そんなに、子どもは大人の都合の良いようには育ちません!

ただの“教えやすい子ども”を作るのが、教育ではありません!

毎日ダラダラ「読み聞かせ」しても、読字障害は治りません!

そういう苦情を言う人は、「どうして、この子はこんなことをするんだろう?」「どうして、あの子はこんなこともできないんだろう?」って考えたことがあるんでしょうか!?

物事の理解ができないのは、積極的に取り組もうとしないのは、教える方法が「一人一人の子どもに合っていないからだ」と考えてみたことがないんでしょうか!?

どうして、子どもの方を「文部省認定」のカリキュラムにはめようとするんでしょうかねえ!?

それに合わせられない子どもが、何故「悪い子」にされてしまうんでしょうか!?

そうして、苦手意識と劣等感を植え付けておいて、「生きる力」なんかつくはずないでしょ!

子どもに合わせようとしない大人の方が、よっぽど「悪い人」だと思いますが!

そんなに、皆さん、自分の子どもを「良い子ロボット」にしたいんでしょうかねえ?

「心の理論」を五歳で獲得し、ソーシャルスキルを正常に習得できる子どもは、確実に、かげひなたのある子・表裏のある子になりますが…。それでいいんでしょうかねえ?

そんな子ども達より、あからさまに態度に表わして、正々堂々と「できない!」と言える子どもの方が、私は好きです。

どうせ、私は、「ここに生きていない」んですから、世界一「シツケのできない親」と呼ばれても、痛くもかゆくもありません。

それから、先生の名誉の為に付け加えておきますが、私は学校とカンペキに連携を取っています。全く集団活動をしようとしなかった子どもに、とりあえず「その場にいること」「役割はなくても、みんなの邪魔をしないこと」というように、少しずつステップアップして、今やっとここまで来たのは、先生方の努力のお陰です。

そして、[もじ→ことば→さくぶん→どくかい]という順序で学習障害に対応している真っ最中です。まだ、「人間」として正しいとかどうだという以前に、「人間」にしなければならない子どもを育てたことのない人に、とやかく言われる筋合いはありません!

なにしろ、こちらは、マイナスからのスタートなんですからね!


       

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