最新の自閉症診断基準と自閉症スペクトル障害

(2000.11.21リンクを追加)

「自閉症」という概念ができて50年が経ち、「自閉症」の理解の深まりとともに、その全体像も変わってきました。その主なものは、以下の二点でしょう。

半世紀という短い期間に、あまりにも目まぐるしく変わってきているので、数多くの混乱を生んでいるのではないでしょうか。その概念の変遷と、自分が「自閉症」に出会った年代を併せて見て、一度整理してみると、判りやすいと思います。

 

自閉症の歴史と、最新の自閉症診断基準

1943年 カナー 社会的孤立・同一性の保持・異常な言語という特徴を持ち、

精神分裂病とは異なる、一群の症候群についての報告。

「早期小児自閉症」と名づける。

1950年代 精神分析理論 冷淡な両親の養育態度による情緒障害であり、心因性の

病気と考えられた。

1960年代 生物学的研究 心因論や、親の養育態度によるものという考えは否定され、

遺伝学・神経学的な研究が進み、行動療法が主流になる。

DSM−V

(1980年)

「小児自閉症」 社会的相互作用・コミュニケーション・局限した興味と行動

という、三つの障害に基づく診断基準が作られる。

DSM‐V‐R

(1987年)

「自閉性障害」 「自閉症」が、小児に限られた障害ではなく、成長に伴って

改善はするものの、生涯にわたる障害であると認められる。

DSM−W

(1994年)

「広汎性発達障害」

が追加される

小児性崩壊性障害・レット症候群・アスペルガー症候群

が含まれる  [詳細は下の表]

DSM−Wの診断基準

項目 内容

対人的相互反応

(社会的障害)

非言語性行動の使用の障害

仲間関係を作ることの障害

楽しみ・興味・成し遂げたものを他人と共有することを自発的に求めることの欠如

対人的または情緒的相互作用の欠如

言語・非言語的コミュニケーション

(コミュニケーションの障害)

言語発達の遅れまたは欠如

他人と会話を開始し継続する能力の障害

常同的で反復的な言語の使用、または独特な言語

変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性を持った物まね遊びの欠如

限局した興味と行動

異常なほど強くかつ狭い興味

習慣や儀式へのこだわり

常同的で反復的な数奇的運動

物体の一部に持続的に熱中する

『自閉症の理解』G.B.メジボブ,L.W.アダムズ,L.G.クリンガー著より

 

 

自閉的連続体(最も多く診断に用いられている特徴)

1〜4の番号は、1が障害・遅滞の最も重い人の傾向、4が障害・遅滞の最も軽い人の傾向を示す。

項目
社会的相互作用 孤立と無関心 物的要求の働きかけのみ行う 働きかけの受動的受け入れ 異様な一方的働きかけを行う
対人コミュニケーシヨン(言語・非言語) コミュニケーシヨンの欠如 要求のみ行う 働きかけがあれば応答する 自発的に行うが、反復的で一方的、奇妙
対人的イマジネーション イマジネーションの欠如 機械的に人をまねる 人形、玩具等を正しく用いるが限定的、非創造的で反復的 ひとつのテーマを繰り返し演じる。他児を「機械的補助具」にすることがある。
自分が選んだ活動の反復的パターン 単純で、身体に向けた 単純で、物に向けた 複雑な決まり、物の操作や動作 言語的、抽象的
形式的言語のシステム 言語の欠如 限定的、多くはエコラリア 代名詞、前置詞の誤まった用法、語句の自己流用法、奇妙な構文 文法に適うが、回りくどく反復的、語義そのままの解釈
感覚刺激への反応 非常に目立つ 目立つ ときには ごくまれにか、まったくなし
身体運動 非常に目立つ 目立つ ときには ごくまれにか、なし
突出的技能 突出的技能なし 一つの技能は比較的優れているが、それも暦年齢水準より劣る 一つの技能は暦年齢に相当するが、それ以外は暦年齢水準よりかなり劣る 一つの技能が暦年齢を超えた高いレベルにあり、ほかの能力とは際立つ

ウタ・フリス編著『自閉症とアスペルガー症候群』/ローナ・ウィングの論文「3.アスペルガー症候群とカナーの古典的自閉症」より

 

ド・マイヤーの分類(1973年)

高機能自閉症 普通の子どもの年齢に近い水準の知能をもち、ある程度コミュニケーション可能な言語をもつ
中機能自閉症 少なくともひとつは年齢水準に近い知的活動ないし感覚運動性の活動はあるが、コミュニケーション可能な言語を持たない
低機能自閉症 年齢水準に近い知的活動ないし感覚運動性の活動はみられず、コミュニケーション可能な言語を持たない

 

参考リンク

参考文献(発行年は、いずれも日本語第一刷発行年)


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