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「対人関係や不適切行動の悩みにこたえて」  

「自閉症スペクトラム」の考え方・特徴と配慮   

 横浜市南部地域療育センター 臨床心理士 安倍陽子 氏


 

1)子どもの特徴を理解していきましょう。  

一人一人違います。

自閉症スペクトラム(連続体)は、行動に基き、

1.社会相互交渉の障害
2.コミュニケーションの障害
3.想像力の障害

そして反復的な行動・興味の限定・変化への抵抗などの特徴がある場合に診断されます。

ここで重要なのは、
その現れ方、症状は実に多様であることです。

私たちは、「自閉症」という言葉を聞くと、
視線が合わない、言葉がない、ひきこもる、積木やパズルが上手、こだわりが強い、など
狭い意味での子どもをイメージしがちではないでしょうか

視線が合ったり、笑いかけたり、しゃべったり、
簡単な質問応答ができる子どもを見ると、
違う障害を考えたり、「この程度では、自閉症とは言わない」と言う方がいるかもしれません。

 

大人と関係がとれ、コミュニケーションが一見良好な子どもでも、
友達関係ができにくい、日常場面で適切な行動がとれないなど、
上記の3つの特徴を含む場合には自閉症の連続体として 考えていきます。

同じ子どもであってもその 症状は、

環境や人によって異なったり、年齢とともに変化していくことがあります。

検査や個別指導場面では問題がなくても、
園や学校での集団、待ち時間や自由遊びでは行動が全く異なり愕然とすることがあります。

 発達レベルや発達パターンを知っておくことも大事です。

自閉症スペクトラムは、知的には最重度から平均、それ以上の高いレベルまで現れます。

将来は、手厚い援助を必要とされる方から自立して生活できる方まで様々なのです。

身体障害や発達障害、
例えば神経疾患、聴覚障害、視覚障害、特異的発達障害(LD)などを合わせ持つ子どもがおり 、
その場合、一つの診断名からだけでは適切な援助が組み立てられないでしょう。

その他、
運動が苦手、手先が不器用、感覚面でのアンバランスさが顕著、
興味のないことには注意が集中しない、特定のものを恐がる、などの行動特徴も子どもによりみられます。

 私たちは、診療や検査から知りうることだ けではなく、
家庭からの発達歴を含む様々な情報が大切で、親と双方の情報を共有して子どもを理解していくことが必要です。

2)家庭や学校での問題と配慮について     

 協力関係を持って支えましょう。

 普通学級では奇妙な印象を持たれたり、適応が困難なことがあるので子どもの特徴を理解した上で、
個別的な配慮が不可欠です。

自分勝手な行動をして周りの人達や自分自身にどれ程の影響を及ぼすかは理解していないようで、
思ったままを口にしたり、攻撃的になったり、同じ事や質問を繰り返し言う子どもがいます。

私たちは、その都度注意し言い聞かせようとしますが効果は期待できません。
曖昧な指示やほのめかしも理解できないでしょう。

家庭や学校で、基本的なルールを明確にしその子どもだけではなく誰もが守るようにしていきます。

いじめの対象となることもあるので周りは注意が必要です。


仲間にからかわれたり馬鹿にされて自己評価が低い子どもがいますが、
自己評価を高めるには、得意なことを強調して褒め子どもが自信を持つことです。

教育では、子どもの苦手・弱いところを引き上げることが目標になる事が多いですが、
不得意なことばかりに目を向けず、
むしろ興味・関心の強いものや得意なことを積極的に見つけて生かしていくことが大事です。

 

運動、特に集団で行う競技は苦手であったり、水泳や鉄棒などの指導にえられない子どももいます。

好きなことでサークルやグループに加わると友達が出来やすいでしょう。

学校の休み時間や昼食時間は、ストレスを感じる子どもがいます。

自由時間を建設的に過ごせず
、一人で砂や水の感覚遊びを繰り返したり不適切行動がでることがありますが、
何をしたらよいのかいけないのかを明確にし、具体的に選択できるとよいかもしれません。

 私たちは、子どもの特徴を理解して出来るだけ感情的にならないことです。

能力の高い子どもであっても見通しや予測が可能なように、
行動の仕方や振る舞いを具体的にどうしたら良いのかをわかりやすく工夫して伝える必要があります。

私たちはお互いに勉強し励まし合いながら子どもや家族の援助について考えていきましょう。

                                                                         〈了〉