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クトゥルフの呼び声~クトゥルフ・ハイパーボレア~

番外:乙女に映しておぼろげに
 

3.乙女に映しておぼろげに

 その夜、すりかえ作戦に成功して意気揚々と孤児院に帰ってくると、ベスとニールが待ち構えて
いた。
 「あなたたち!どこ行ってたの?!」
 ベスはおかんむりだ。
 「なんで、ニールがいるんだよ」レイフはひるまない。
 「仕事の話をしていたのよ。それより、その重そうな袋は何?!」
 「これはですね・・・」
 リズが全てを話すと「はあ・・・あなたたち仕事の邪魔をしないで頂戴。」
 「邪魔って・・・」ジェスが不服そうにいう。
 「それは、私から話そう・・」ニールが言った。「アンダーソン家が泥棒で財をなした・・と言う噂は
知っているだろう?」
 「ええ。まあ・・・知ってます」リズが答える。
 「それは事実だ・・・」
 「えええ?!」一同が声をあげる。
 そこで、サー・シンプソンは、祖父の罪を償う為、本物を元に戻そうと考え、ニールに実行させて
いたそうだ。しかし、2代も昔のこと、どこの家から盗んだものかわからず、比較的裕福な家を訪問
して、調べていたそうなのだ。
 そして、今回、リズたちがもってきたのは、ニールがすりかえた後のもの・・・つまり本物をもって
きてしまったらしい。
 「もう一度、忍びこまなくてはならんな・・・。」ニールは苦笑したが、
 「あ、でもなんで、サーは、ベスが贋作作りの仲介をしてるなんて、知ってるのさ?」
レイフが問う。
 ベスは髪をかきあげ、余裕の表情でこう言い放った。
 「そりゃ知ってるわよ。なんせ、元妻だもん」
 「えええええ~~~?!。」これにはリズも驚いた。
 「私が、普通の男で満足すると思う?。ま、それはともかく、今、この孤児院立ち退き要求されて
てね。お金も必要だったのよ。」
 「そうでしたか・・・」リズが気がぬけたように言った。
 「あ、念の為言っておくけど、このことはメアリーには内緒で頼む。」
 「もちろんですわ。」ニールにリズが答えた。

 その後、孤児院は取り壊しが決まってしまったが、ベスとサーがよりを戻し、孤児院の子供たち
は、アンダーソン邸が第2の故郷となった。
 そして、ニールとメアリーがはれて夫婦となり、サーは孫の生誕を楽しみにしているらしい。
 レイフは独立して、同じ孤児院の娘と結婚し、今は子煩悩なパパだ。時たま、”弟”や”妹”たちの
様子を見にきているらしい。ベスがまだ早いが隠居し・・・・・実は、結局メアリーにもばれてしまい
サー、ベス、ニール、メアリーの4人ですりかえ作戦をこつこつとやっているらしい・・・・ジェスが院長
として孤児院をとりしきっているらしい。リズは、リーヴィたちの知っての通り。

 翌朝、「また来るね~」とリズが言い残し、アンダーソン邸を後にした。
 リズは、メアリーに貰った、贋作の小さい花瓶を手ににこにこしている。贋作とはいえ、かなりの腕
の贋作職人の作ったものだろうと分かる品だった。ベスも、女手1つで孤児院を経営していただけ
あって、中途半端な仕事はしていなかったわけだ。
 「ところでさ・・・・・。」てくてくと歩きながら、ネスがリズに言った。
 「なあに?」
 「昨夜の話、おかしくない?」
 「おや?気づきましたか・・・」にやにやと笑う。みんな、そう思っていたらしい。
 「え?どこが?」リーヴィひとり、きょとーん、状態だ。
 「おばかね~」リズに笑いとばされて、
 「悪かったな・・・どうせ、僕は頭悪いよ・・」むくれるリーヴィに
 「まあまあ・・・。」リタがなぐさめた・・・。

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