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クトゥルフの呼び声~クトゥルフ・ハイパーボレア~
番外:乙女に映しておぼろげに
真相:水面の月、闇に浮かぶ
「御先祖様が盗んだ本物を、本来の持ち主に返すのなら、すりかえた
後、アンダーソン家に残るのは贋作になりますね。」
シンシアが丁寧にリーヴィに説明した。
「う・・・ん。そうなる・・のか。そうなるね?」
まだ、良くわからないなーと言う表情のリーヴィにさらにつづける。
「じゃ、ニールがベスの仲介で作らせた贋作はどこへ?と、言いますか
それ以前に贋作を作るが必要ありませんわ。」
「あ・・・。」みなまで説明されて、リーヴィにようやく分かった。
そう思うと、リジーがメアリーからもらった”贋作”の花瓶を手に必要以上
ににこにこしているような気がするのだから不思議だ。勿論、皆の視線は
リジーに集中している。
「あたしには、芸術品の鑑定眼はないけど、それって、本当に贋作?」
ジト目でトリシアが言った。
「勿論、”本物”ですわ。1000Gは下らないでしょう!。メアリーただ一人
は知りませんが。」
にこにこ、にこにこ・・と、リジーがまさに満面の笑みで答える。
「どういうこと?。」トリシアが代表して聞いた。
数日後、孤児院。メアリーがニールにつめよっていた。サーもいる。
「なんで、家のものをここで作らせた偽物におきかえているのよ!。」
メアリーに贋作の受け渡しの現場を見られてしまったのだ。
「あ・あ・あれは・・・」柄にもなくニールがうろたえていた。
「違うんだ、メアリー・・実は・・・」サーが白状してそれですんだが・・・。
暫くして、孤児院は閉鎖し、ベスとサーがよりを戻し、全員がアンダーソ
ン家に引越しした。
まあ、リズも他の子供たちも、言ってはいけないが、元の孤児院よりも
広いし、食べ物は美味しいし、多分食いっぱぐれもないので、過去の孤児
院がなくなるのは寂しいけど、新しい故郷を大変気に入っている。
ただ、子供が多くなったので”贋作”を良く壊す。
メアリーは「1Gの価値もないのだから、別にかまわないわ」と笑っている
が、サーやニールは、かすかに顔が青くなっている。
それを横目にリズがベスに聞いた。ネスがリズに訊ねたように・・・。
「気になることがあるんだけど・・・。」
「なあに?リズ。」
「ニールがベスに作らせた贋作って何?必要ないじゃない?ここにあった
本物を偽物をすりかえるんなら。」
「ふふふ。あなたも将来、私並の・・・・になるんなら、もっと修行つまなく
っちゃね。」
「私並の・・・って何よ?・・・・」ぶつぶつとリズが言う。
「すり替えた後のこの家にあるものは全て本物よ。サーもメアリーに辻褄
の合う言い訳をしたわね~~。」
「わねー。じゃないでしょ?サーは、本当の泥棒だったの?じゃ、先祖が
盗んだものって何よ?。まさか先祖の先祖が盗んだ品を返して、サーの代
になってまた取り替えてたわけじゃないでしょうね?」
「まさかでしょ。先祖が盗賊だったのは、本当。ただ、相手も盗賊対策して
たところもあったみたいで、本物そっくりの贋作を目立つ所においていたの
ね。」
つまり、御先祖様の仕事の何割かは贋作をつかまされていたというわけ
だ。そこでサーは、贋作をベスに作らせ本物と贋作すりかえていたのだ。そ
して先祖が盗んできた、傷物の贋作は修復して裏市場に流す。こうすると、
本物は自分の手に残り、年代物の贋作は修復して古物市場に流せる。
まさに一石二鳥なわけだ。
「・・・・・・・・・・。」リズが黙りこむと。
「前、言ったでしょ?私が普通の男に惚れるわけないって。」
今、18歳になったリズと同じ笑顔でベスが笑った。いや、ベスの笑顔をリ
ズが引き継いだ・・・と言うべきか。
「あ~また、壊したな。こうなったら、どんどん壊しちゃえ!」
遠くから、何も知らないメアリーの無邪気な声が聞こえてきた。
「・・・・・・・つまり、今のあんたの性格はベスから引き継いだものなのね。」
トリシアがため息をついた。
「私の今の性格?失礼な!」リズは憤慨したが、全員、内心ため息をつい
ていることに違いない!とリーヴィは思った。
終わり。
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