真実は時の娘1

とうぜう人物
  水分華穂(みくまり かほ):本編の主人公。何故、彼女が主人公なのか?
                   特に意味わなひ・・・・小説と云うよりストーリーおってるだけだから・・
  秋里馨織(あきさと かおり):華穂の友達。何故、友達なのか?とうぜうキャラを増やす為なのか?
  千曲なぎさ(ちくま なぎさ):華穂のボーイフレンド。黒宇佐セッションにも出てきた。美形の少年。
  大林勝(おおばやし まさる):数十年前に死去。一応、戦中と云ふことで。大西風富子の元婚約者。
  大西風軍(あまにし ぐん):大企業のオーナー。
  大西風富子(あまにし とみこ):軍の妻。半家庭内離婚状態で別居ちう。
  大西風正樹(あまにし まさき):軍の長男。数十年前に行方不明。
  来河佳子(くるみ よしこ):軍の長女。旧姓:大西風佳子。
  来河太一(くるみ たいち):佳子のだんな♪家族とともに富子も一緒なんで、婿養子状態。
  来河華一(くるみ かいち):20歳。太一の長男。狩猟が趣味。
  来河朱華(くるみ あけは):18歳。太一の長女。
  依羅誠(よりい まこと):数十年前に死去。
  依羅冬(よりい ふゆ):誠の妻。数十年前に死去。
  依羅初男(よりい はつお):誠の長男。最初の犠牲者?
  依羅恵(よりい めぐみ):誠の妻。十数年前に病死。
  依羅礼子(よりい れいこ):22歳。誠の長女。軍の会社の秘書。
  依羅美風穂(よりい みしほ):17歳。華穂の同級生。礼子の妹。
  三橋志穂(みつはし しほ):初男の妹。旧姓:依羅志穂。
  三橋広一(みつはし こういち):志穂のだんな♪
  三橋宇宙(みつはし そら):18歳。広一の長男。華穂の上級生。
  神堂トラ(しんどう とら):数十年前に死去。冬の友達だったらしい。
  神堂龍也(しんどう たつや):トラの長男。
  神堂美子(しんどう よしこ):龍也の妻。
  神堂龍子(しんどう りゅうこ):20歳。龍也の長女。礼子の友達。
  神堂龍男(しんどう たつお):17歳。龍也の長男。華穂の同級生。



 あたしはよく同じ夢を見る。今日も見た。
 決まって、起きると汗をかいている。

 丸で夢の続きにように。
  夢の中であたしはもがいている。
 口から声の変りに泡が上に登って行くところを
みると水の中のようだ。
 息が苦しい・・・・・

  でも、息が苦しいのは水中だから、と言うわけでなはない。
 水闇の中から、手が伸び、あたしの首をしめつけているからだ。

  其の日、私立黒宇佐学園の生徒は黒宇佐川に写生大会に来ていた。
 学校のそばの其の川にはまだ、汚染の2文字がなく、緑あふれる小山に囲ま
 れた景観は自然のあふれた、昔の名残を残している。
  「うーん。何処にしませうかねえ」と、水分華穂が川原で首をかしげた。
 芸術には興味がないが、やはり描くからには、まず良い素材を!と言うわけだ。
 「何処でもいいじゃん」と適当に言葉を返したのは隣にいた、華穂の友達の秋里
 馨織だった。ロングのヘアを今時珍しく、三つ網一本にした少女だ。
 当人曰く「シニョンの最高傑作」と言うが、端・・特に男子から見れば、只の三つ網
 だ。
 それに、めげず、「でも、川も絵の中にいれたいよなあ・・」とぶつぶつぶつぶつと
 華穂が続ける。
 「あ、俺達、神社の方に言って見るわ」と、言い残してすたこらさっさと去って行った
 のは、千曲なぎさと三橋宇宙である。
 多分、神社の方なら教師の監視の手も緩みサボれるだろうと、言う考えなのは、自
 明の理であった。
 大西風神社は、近くの小山にある、廃神社で、大西風家が昔奉っていた氏神の神社
 である。今は、神主もいなく廃神社になっているが。
 そばには、ここいらへんで、1つしかない家屋で大西風家の本家が見える。
 何でも、大企業の社長というか、創始者の実家とのことだった。
 依羅美風穂が「ねえ、あっちに行ってみない?」と提案した。
 あっちとは、くねくね曲がった川辺の現在いる位置の上流で死角にあたり、まだ、写生
 に来た生徒達が足を踏み入れてない場所だった。
 「うん♪いいねえ。そうしませう」と行って華穂が歩き出す。すたすたすたと言った感じで。
 「あ、ちょっち待ってよ」と言って、馨織が後を追い、美風穂も続いた。
  そのポイントは確かに死角だったようだ。最初にそれを発見したのは美風穂だった。
 「ねえ?あれ、何かしら?」
 と、前方を指さす。残り二人も「?」てな感じで見てみると、何やら黒い物体が横たわって
 いる。
 近づいて見ると中年男性がっぽいものがうつぶせで横たわっている。
 「おーい?おっさん。何こんなとこで寝てるねん?」と華穂が声をかける。
 「あれ?この背広・・・」と呟いたのは美風穂だった。
 横たわっている、黒い物体はうつぶせで、背広を着ていた人間だったのである。
 「まさか、死んでたりして」と馨織が冗談めかして言った。
 言ってから、華穂の方を向き、もしや・・・と二人で顔を見合わせる。
 「おーい。おっさん?」と華穂がしゃがんで、その人をあおむけに返すと。。。
 「ひゃ・・・・・もしかして、これほんまに???」と華穂が絶句する。
 脈を念の為、脈をとったが反応がない。大体、50歳前後と思われる男性であった。
 「お・・・お父さん・・・・」美風穂が呆然自失の状態で呟くのを聞いて、「え?」と二人が美風穂
 を見上げる。

  華穂は、黒宇佐川の川辺にある、唯一の家宅、大西風家に来ていた。
 あの死体を発見し、大騒ぎの最中である。まず、引率の教師に連絡し、携帯で110番通報し
 ようとしたが、繋がらなかった。全員のケータイがである。
 携帯をかけると、ヒスノイズに混じって「タスケテ・・」「クルシイ・・」とか言う声が聞こえるという
 話しも出て、もしや、その死体の怨念では?という噂まで一瞬のうちに広まっていた。
 華穂自身は聞いていないが。
 で、公衆電話もなく、近くの大西家に電話を借りに来たわけだ。
 華穂が、自分から進んで来たのは、勿論通報する為と言うのはあったが、もう1つは、やはり
 その死体は美風穂の父であり、美風穂をなだめるのに上手い言葉が思い付かないからだ。
 その状況から逃げてきた・・・わけではない・・・と自分を言い聞かしているのだが、実際はそうか
 もしれないなあ・・・と感じている。なだめ役は馨織にまかせている。
 どうも、こういうのは苦手だ、と思う。と言って慣れている人はそうは居ないだろう。
 古色蒼然とした家構えににあった旧態依然とした・・・金持ちの家とは思えない・・・・呼び鈴を鳴
 らすと、「はーい?どちら様」と言って出てきたのは自分と同じ歳位の少女であった。
 事情を説明し、電話を借りる。家に居たのは、少女の母と思われる人と、祖母と思われる人の3
 人であった。やはり、金持ちとか、大企業の社長宅には見えない。本当の金持ちとはこう言うもん
 かなあ、と華穂は何となく納得した。

  ほどなく、警察と、救急がやってきた。第1発見者と言うことで、3人は尋問っぽいものを受けた。
 死因は心臓発作とのことだったが。
 馨織の父は朝、死体で発見されたときと同じ服装で出勤したのだが、何故、川原に来ていたのか
 は謎である。
 
 今日、僕のおじさんが亡くなった。死因は心臓発作だそうだ。
 ただ、死んでいた場所が謎で、出社ルートからは外れている、黒宇佐川の川辺だった。
 黒宇佐川・・・子供の頃は良く遊んだが、この川を見る度に、奇妙な感覚にとらわれる。
 デジャブー?生まれる前から知っているような・・・・
 それとも、あの夢のイメージがこの川だからだろうか?
 それにしても、本当に心臓発作なのだろうか。
 水死・・・いや、窒息死と言う気がしてならない・・・・・

  その週の土曜日、依羅家の父の通夜が行われた。 美風穂の家は父子家庭だった。
 依羅初男・・・美風穂の父と、姉の礼子の3人である。母は数年前に病気で亡くなっていた。
 華穂が見たところ美風穂は少しおちつきを取り戻していた。
  参列者の中には、美風穂のクラスメートのほか、初男の妹一家夫婦と、初男のクラスの生徒
 も来ていた。初男は近くの中学の教師だったのだ。
 クラスの生徒の様子からみて、慕われていたことは確かだ。
 初男の妹・・三橋志穂の長男、宇宙は華穂達の先輩で黒宇佐学園の3年だった。
 志穂は、当然三橋家に嫁いだため、今は別のとこに住んでいる。
 華穂達と同学年でC組の神堂龍男もいたが、神堂家とは美風穂の祖母が龍男の祖母トラと親友
 だったと言う話しか礼子も美風穂も知らなかった。
  その他、参列者の中には他に、大西風家のものもいた。華穂は一瞬以外に思ったが、美風穂の
 姉が大西風カンパニーに勤めており、社長の大西風軍の秘書だとのことだった。
 大西風家の中には、電話を借りた時に出た少女、朱華と、兄の華一、母の佳子も居た。
 軍の実の娘にあたる人物で、朱華の父の太一は婿養子である。

  通夜が終り、皆が献杯している頃、華穂と、美風穂、馨織、三橋宇宙、千曲なぎさの面々は、
 美風穂の部屋に集まっていた。馨織の家には、親戚と言っても、初男の妹一家しかおらず、人手
 は必要なのだ。葬式の手配から費用からは何故か、大西風の社長が出したらしい。
 美風穂も大西風が何故それまで親切にしてくれるのか、不思議がっていた。
 姉の礼子が、社長の秘書だからか?
  美風穂が何やら思い詰めた顔で1冊のノートを取り出す。
 「父の日記です。」と切り出す。
 「?」と思いつつ、華穂が受け取った。父の形見であろうが、何故そんなものを見せようとするのか?
 ぱらぱらとめくり流し読みしてみる。殆どは普通の日記だが、中に繰り返し出てくるもので、興味深い
 内容があった。
 ”○月○日 大西風の社長から、自分のところに就業しないか?と誘いがあった。
         内容は破格の処遇だった。娘の礼子のこともあるし、何故我が家に親切なのか。
         私にはわからない」”
 ”○月△日 また、あの夢を見た。多分、水中であろうところで首をしめられ殺される夢だ・・・”
 この2点である。
 「ん?これは?そう言えば、葬式の手配は大西風がしたとか?」と華穂が聞いて見る。
 「うん。それはそうなんだけど、私にも大西風家とどんな繋がりがあるのか知らないの」
 と美風穂が答えた。
 そして、「それよりも、この夢のことなんだけど・・・私もびっくりしたけど」
 「あ、夢?私も、がけから落ちる夢とか見るけど・・・・」と冗談めかして馨織が言う。
 「うん。そうじゃないの。私も同じ夢見るの。」
 「同じ夢?水中でって言う?親子だからかな?それとも、物心つく前の記憶とか・・・あ、でもそれだと
 おかしいか。おやじさんが見るわけないもんなあ・・」あんまりそういう非科学的なことは信じていない
 華穂がのほほんと答える。
 「あ・・それ・・・」と宇宙が言いかけてやめる。「何だ?」となぎさが聞いたが、
 「いや・・・何でもない・・」と歯切れが悪い。
 暫くして、「ちょっと外の空気を吸って来る」と言って、部屋から出て行ってしまった。
 「それにしても、まあ、気にしすぎじゃない?偶然でしょ?まあ、おやじさんが死んでナーバスになって
 るのは分かるけど」と華穂が華穂なりの慰め方をしたが、美風穂の返答は以外な物だった。
 「もしからしたら、父は殺されたんじゃないかと思うの・・」
 「な?なんでいきなり?」さすがに慌てたように馨織が聞く。華穂も同感だった。さすがに筋が飛躍しす
 ぎてる。
 「父が出社途中にあの川に行ったのが不自然だし、心臓発作と言うのも・・・あんなに健康だったのに。
 それに、この夢の話し・・・何か、うちに纏わる過去の因縁があるような。」
 と言ってから、さすがに自分でも考えすぎと思ったのか、気を変えたように微笑んで、
 「やっぱり、考えすぎみたいね」と舌を出した。

 今日、父の通夜だった。私の家は父子家庭である。母は10年位前に病気でなくなった。
 父は真面目な人だったので、その後、再婚話しはおろか、浮いた話しの1つもなく、私達姉妹を男手1つ
 で育ててくれた。父の遺品を調べてた時、日記を発見した。
 それには大西風家に親切にされていること、そしてあの夢の話しが出てきた。
 父も見ていたのだ。私も同じ夢を良く見る。それを読んだ時の妹の表情からすると妹も見ているらしい。
  それに、大西風のこと。高校を卒業する時、父は進学を薦めたが、私の家は裕福ではなかったので、
 私は就職しようと決心した。妹には進学させてあげようと思う。
 その時、就職の紹介をしてくれたのが、大西風の社長で、自分の会社に誘われた。
 入社してみると、いきなり社長秘書で、回りからは色々噂されたけど、浮いた話し、色恋沙汰とかは無い。
 父の日記を読んでも思ったが、何故か私の一家全員に親切ならしい。
 父も、大西風家とどんな繋がりがあるのかしらなかった。祖父母の代に交流があったようだけど。
  それにしても、あの夢、不自然な父の死、そして・・・・・私の家には何があるのだろう・・・
 やはり、私も考えすぎなのかな。


   通夜の後片付けが終り、殆どの者は帰ったが、華穂達と、大西風家の子供たちは残っていた。
 庭で、延々と夜空を見ていた、宇宙に「そろそろ、寝るぜ。明日もあることだし」と、華穂が声をかけると、
 びくっとしたような顔で振り向いた。
 「な、なにだよ?あたしが何か?」と口を尖らせて利く。
 「い・・いや・・」と、美風穂の部屋の時と同じように、歯切れが悪い。
 「何だよ?何がどうした?美風穂のおやじさんの日記を読んでから変だぜ?」
 「実は・・・」と、意を決したように宇宙が口を開く。「僕も見るんだ・・・」
 「何を?見る?変なもんじゃないだろうな?」
 「ち・違うよ!」何を勘違いしたか、慌てて否定し、それから、「夢をだよ。あの・・・」
 「ん?溺れ死ぬとか何とか?」、華穂が聞く。
 宇宙は頷いた。「僕だけかなあと気にとめてなかったけど、美風穂もおじさんも、見てたのか・・・と不思議
 な気持ちになってね」と、また、顔を夜空に向ける。
 「何だろうね。そういえば、美風穂といとこだっけ?遺伝かな?」と場をなごまそうと、冗談めかして言ったが
 宇宙の反応はなかった。間をおいて、
 「遺伝か・・・・というより、うちの家系に何かあるのかな・・・」と呟く。
  「あらあら、早く、入りなさい。もう戸締りするわよ。」
 と、縁側から声をかけたのは、大西風軍の孫娘、朱華だった。確か、華穂達とは、別の高校の3年のはずだが
 大人びてるのは、家柄のせいか。
 「あ~今戻る~」とあんまり、そう言うことに無頓着な華穂がタメ口で返答する。
 「さ、行こうぜ!」と宇宙に声をかけ、宇宙が苦笑した時・・・・
 「カアアアアア」烏の鳴き声が。
 「ん?烏?こんな時間に・・」華穂が振り向いた時、いきなり、1羽の烏が宇宙に襲いかかってきた。
 「何だ?いていていてて」と、烏につつかれながら、宇宙が悲鳴をあげる。
 「なんだああ?いきなり、こりゃ」と声をあげ、考えるより先に行動するタイプの華穂が、すぐさま、烏にとび蹴りを
 食らわす。烏は蹴りをかわし、「カアア」と一声鳴いて、また、夜空の闇に消えた。
 「大丈夫?」と朱華が声をかけ、「一体何なのかしら?」と首をかしげる。
 「おう!平気か?」と華穂も声をかける。
 「な・・何とか・・」ほうほうの態で宇宙が何とか返事をする。
 「なんだかなあ。とりあえず、戻ろうぜ」と、華穂が手を引っ張り、「うん。」と宇宙も頷いた。
 「手当てしないと。救急箱どこか聞いてくるわ」と朱華が言って去った後、宇宙が思い出したように
 「そういえば、あの烏・・・・」
 間髪入れず華穂が、「いぢめたのか?烏を?烏は頭良いからな。リベンジ・ザ・クロウ」
 「ち、違うよ!大西風神社で見たような・・・」
 何を言い出すのか?!といった感じで、宇宙が慌てて反論する。
 「は?烏なんて何処にでも居るだろ?見分けつくのか?」
 「い、いや、つかないけど、何となく。。。」
 華穂、ふはああ~と大げさに肩で溜息をついて、
 「なあんか、お前らの一族、今日変だぜ?おじさん亡くなって動揺してるのも分かるけど」
 「そうかも・・」
 と言って、二人は家の中に入った。
 廊下を歩きながら、華穂が後ろからひょこひょこついてくる、宇宙を振り向き、
 「何で、大西風神社って出てきたんだ?インスピレーションか?」と聞いた。
 「い・いや。わからないけど、何となく。。。。本当に何で出てきたんだろ?」
 と宇宙が首をかしげた。

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