「知ってたなら、もっと早くそう言え…!!」 がばっとベッドの上に跳ね起きたロイは、一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。 なんだここは。夢?どこまで夢?これも夢から覚めた夢か? 「…お前、何の夢見たんだ…?」 ふわあと隣で欠伸をもらしながら、迷惑そうにぼやくヒューズが寝返りを打った。このヒューズは悪くない、何も悪くないとは思うんだが、ついさっきまで好きに遊ばれていたロイはどうしてもじっとりと睨んでしまう。 朝はまだ浅くて、鳥の声は聞こえるけれど空は暗いまま。 寝直すつもりのヒューズは、シーツごとロイを後ろから抱き込んだ。どうもスッキリしないが、暢気な欠伸が背中をくすぐると、ロイも自然に眠くなる。どうしてあんな夢を見たんだろう。こいつの家庭に入り込みたいなんて、そんな馬鹿な願いはこれっぽっちもないのに。 「…お前って、猫とか好きか?」 ロイの問いは突然で、ヒューズはちょっと間を置いてから「そうだなあ、まあ…特に凄く好きってワケでもねえし、苦手でもねえ」とのんびりと答えた。それから「なんで?」と訊き返されるのに、ロイは「…いや、別に…」と眠そうに言葉を濁す。 ちゅ、と肩甲骨の隆起に、戯れのキスが触れていく。くすぐったい。温かい。気持ちがいい。大きな手が、ただ寝付かせるためだけに髪や肌を撫でていく。まるでそれは、眠りそのものの腕のようだ。 ヒューズの指先が、肩甲骨の下にあるちいさな引き攣れの形を撫でた。 ロイには見えない、爪をぎゅっと押し付けたような三日月の火傷。 「…おやすみ、クロ…」 そうっと呟いてみたが、ロイはもう深く眠りに手巻かれて、目蓋をぴくりと揺らしただけだった。シーツの上には、ほどけた赤いリボン。ヒューズはくっくっと喉で笑い、可愛い猫のうなじを噛んだ。 (2005.06.02) |