*以下の記載内容は2023年10月時点の情報に基づいています。
私(縫田)は数学と暗号学の研究をしており、両分野にまたがる境界領域的な研究を志向しています(が、純粋に数学的な、または暗号学的な研究も行っています)。
どちらの分野の学生も歓迎します。
数学では、組合せ論的群論に特に興味があり、より広く群論や組合せ論一般にも興味があります。
なお、他に「興味のある分野を専門とする教員が見当たらない」という方の相談も受け付けます(ただし、受け入れの可否は具体的な分野などの詳細によります)。
暗号学では、秘密計算や関連する題材(準同型暗号など)、公開鍵暗号(耐量子計算機暗号を含む)、数学的安全性解析、暗号学基礎論(という言葉は一般的ではありませんが、例えば「安全性の概念に対する適切な定式化を探究する」のようなテーマ)に特に興味があります。
上記と同様に、他のテーマについても相談には応じますが受け入れの可否は状況によります。
一般的な数学科のセミナーと同じく、専門書の輪読を行います。
3年次後期のセミナーは基本的に数学分野と暗号分野で一つずつ設けます(が、現時点では暗号分野の学生しかいませんのでセミナーは一つだけです)。
4年次のセミナーの詳細は3年次のセミナーの状況を踏まえて調整します。
各セミナーは毎週1回、標準で1時間半程度(長くても2時間以内)を想定しています。
日程や発表順は参加者間で相談して決めます。
数学科では「本やノートなどを何も見ずに発表を行う」ことを推奨する教員が少なくありません(し、私自身も学生時代にはそのように修行してきました)が、私のセミナーではそこまでの要求はしません(そうしたい学生が自主的にそうすることは止めませんが)。
ただし、数学におけるセミナーの一番の機能は、本の内容を他者に説明する過程を通じて発表者自身が「自分は本の内容をきちんと理解できているのか」と自問し、理解不足な点(があれば)を認識してより良い理解に努める機会を得ることにあると私は考えています。
それは発表者が本に書かれた文字や数式の列を表面的になぞるだけでは実現せず、ありふれた言い方ではありますが発表者が「本の内容を咀嚼して、自分の言葉で説明を行う」ことが必要です。
その観点から、私のセミナーでは「発表中には原則として、自作のノート類のみ参照可」としています。
(その「ノート」は紙のノートであっても電子的なノートであっても構いません。
ノートを作成する過程で発表者の理解が育まれることが重要です。)
以上を踏まえて、セミナーの発表者は、本の内容をできるだけ深く理解して、自身の理解に対して誠実な態度で発表を行ってください。
(数学の理解についての私の考えはこちらのページにも書いています。)
その際、本の内容について頑張って理解に努めたけれども理解できなかった箇所があれば、そのことを発表中に率直に申告してください。
そのように本の内容について理解できない箇所が出てくるのは決して珍しいことではありません。
その場合には、理解に至れるように教員(私)や他の参加者(がいれば)を交えてセミナーの場で議論をすればよいですし、そのような議論ができることもセミナーの重要な機能の一つです。
組合せ論的群論では「あらゆる群は自由群を正規部分群で割った剰余群として表示できる」という事実を基盤として群の性質を調べます。 ここで自由群とは(やや雑な言い方をすると)文字列の連結と簡約によって定まる群であり、組合せ論やアルゴリズム的な観点からの解析に適しています。 このテーマでの3年次後期のセミナーでは下記の本を輪読します。
組合せ論的群論に限らない群論や組合せ論をテーマとする場合には、輪読に用いる本は個別に相談して決めますが、例として下記の本を挙げます。
暗号分野での3年次後期のセミナーでは下記の本を輪読します。
この本の直接の主題は「耐量子計算機暗号」と呼ばれる特別な種類の公開鍵暗号技術ですが、第1章は耐量子計算機暗号に限らずより一般の公開鍵暗号分野への入門的な内容です。
また、第2章以降では耐量子計算機暗号の説明に加えて、そこで用いられる数学(線型符号、Gröbner基底、整数格子、楕円曲線、など)についても解説していますので、必要な数学についても同時に学んでもらえればと思います。
今後(いわゆる純粋数学ではなく)暗号学を修めるとしても、数学科を卒業するからには、基礎的な数学の素養に加えて「数学としての本の読み方」をぜひ身に着けてもらいたいと考えます。
なお、上記の本だけでは知識が偏りますので、より幅広い暗号学の本にも(セミナーでは扱いませんが)同時に目を通すことをお勧めします。
例えば下記を挙げます。
セミナーの日程や頻度については上記の学部生対象のセミナーと同様です。
既に私とセミナーをしていた学生についてはその内容を踏まえてセミナーの内容を調整します。
それ以外の場合には、本人のこれまでの学習内容に関する面談をした上で内容を調整しますが、当該分野の予備知識がほとんどない場合(例えば、学部までは数学を勉強していて大学院から暗号分野に移った場合)には上記の学部3年次セミナーと同様の方針になる可能性が高いです。
修士課程では最終的に修士論文を書く必要がありますので、どこかの時点で「勉強」から「研究」に進みます(ただし、「研究」に進んでからも適宜「勉強」が必要です)。
どの時点で「研究」に進むかは各自の状況次第ですが、目安としては修士2年次からは「研究」を見据えた活動ができると望ましいと考えます(もちろん、より早く「研究」に進んでも何も問題はありません)。
また、修士課程では「勉強」の段階であったとしても学部時代よりも専門的な内容を学ぶことになりますので、セミナーの素材も徐々に「本」から「論文」に移行していきます。
さらに「研究」の段階になると、毎回のセミナーではその時点での研究の進展状況(前回のセミナー以降にどのようなことを考えて、どのような活動をして、どのような成果を得たのか、またはどのような問題に直面しているのか、など)を報告してもらうことになります。
博士課程生の指導方針は、内部進学にせよ外部進学にせよ、個々の学生の研究テーマや能力や状況に大きく左右されます。 興味のある方は私に直接問い合わせてください。
「*」印の学生については、縫田の異動に伴い、2021年度前期より正式な指導教員が変更となりましたが、指導委託の形で縫田が研究指導を続けていました。