「ちょ、ちょっと待って!」
 今にも大木に切りかかりそうなホークを、君は慌てて押し止める。
 「やっぱり、森林破壊は良くないよ」
 ホークは不可解そうに君を見たけれど、それ以上強く反発はせずに剣を納めた。
 そのまま無言で身を翻す彼に、怒らせてしまっただろうかと君は少し心配になる。
 そんな君の視線を背に大木の幹を見上げていたホークは、ややあって手近な瘤に手をかけるとひょいと器用に木に登り始めた。
 ややあって、最初に大きく枝分かれしている場所まで来たところで、地上でぽかんとしている君を振り返って口を開く。
 「こちら側ならいくらか足がかりになりそうな凹凸がある。森に不慣れな者でも何とか登れるだろう」
 どうやら、彼は君の為に少しでも楽な道を探してくれていたらしい。
 ――どうせなら、もう少し解りやすく態度で示してくれると助かるんだけど。
 他意もなく差し伸べられる腕をまじまじと見つめて、君は深々と溜息をついた。
 何て言うか、この男は感動的なまでに不器用な優しさの持ち主らしい。
 いつまでたっても動こうとしない君に焦れたのか、ホークが訝しげに呼びかけてくる。
 「どうした?」
 「ううん、何でもない」
 明るい声でそれに応えて、君はホークの手をとった。



 そうして木登りを続ける事半刻余り、ようやく開けた視界に小さな広場が見えた。
 

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