■ ■ ■ ■ ■ ■ Wanton desires By-Toshimi.H ■ ■ ■ ■ ■ ■
「アラゴルン、ガンダルフ。私はしばらく別行動を取らせて貰いたい」
金の髪の美しいエルフの王子は、ある日突然、こんな事を言い出した。
しかし、ここ二・三日、普段以上に仲間と会話をする事も目を合わせる少なく、態度も何となくよそよそしかったので、皆、レゴラスがこう切り出してもおかしくない様に思った。
現に仲間の絆については、いつも重きを置いているガンダルフは、あっさりとその申し出を受け入れ、アラゴルンは眉根を寄せたが、諦めた様に承諾した。
「大丈夫。何かあればすぐに駆け付けますし、万が一、はぐれるなんて事もありませんから、安心して下さい」
そう言って、ニッコリ笑うと、彼は森の中へ消えて行った。
「ねえねえ、レゴラスはどうしちゃったの? 確かにここ最近、おかしかったけど」
口を尖らせながら、ガンダルフの袖を引いたのはメリーだった。
「ほほほ、大丈夫じゃよ」
ガンダルフは彼の頭を、ポンポンとあやす様に叩く。
「エルフ特有の習性さ」
パイプを吹かしながら、アラゴルンは苦渋の表情を浮かべている。
「別行動とる事の、どこが習性なの?」
と、アラゴルンに尋ねたのはピピンだった。
本当にホビットという種族、特にこの二人は好奇心旺盛で困る、とアラゴルンは一人ごちる。
「エルフってのは、いつでもああなのさ」
ギムリも明ら様に、不快感を露わにした。
「まぁ、二週間もすれば、戻ってくるじゃろう。アラゴルンもそう、目鯨を立てる事もあるまい」
「あなたはアイツを知らないから、何とでも言えるんですよ」
アラゴルンは大きな溜め息を吐いた。それから三日後。
アラゴルンはパイプを吹かし、月を見上げながら不寝番を務めていた。
仲間から離れたレゴラス以外は、皆、思い思いに横になり、寝息を立てている。
不意に背後から気配を感じる。
「レゴラスか」
「やはりバレちゃいましたね」
レゴラスは悪びれた様子もなく、いつもの飄々とした様子で、アラゴルンの横に立つ。
「何の用だ。治まるまで俺たちから離れているんじゃないのか?」
アラゴルンは上目遣いに、エルフの王子をめねつける。
「用って…。今の私がどういう状態で、何故あなたが不寝番の時に現れたかを考えれば、答えは明白でしょう?」
レゴラスは形の良い唇の端を上げて、意地悪く笑う。
そしてアラゴルンの胸倉を掴むと、思い切り押し倒し馬乗りになった。
「そうでしょう? エステル」
お互いの鼻先が触れる程に顔を近付け、そう言うと、噛み付く様にアラゴルンの唇を塞いだ。
抵抗されるが、強引に歯列を割り、舌を絡める。
「…っつ!」
レゴラスが突然、頭を上げ、口に手をやる。
「思い知ったか!」
馬乗りにされたままアラゴルンは、思わず声を荒げる。
それでもレゴラスは、噛まれた舌で唇を舐め、余裕の笑みを浮かべている。
「判っていないのはあなたの方だ。そんな大声を出すと、純朴なホビットさん達が起きちゃうじゃないですか」
チラリと左手の方へ目をやる。その先には、大木の下で背中を丸めて眠る、フロドがいた。
アラゴルンが敵意を剥き出しにして睨み付けて来るも、一向に構う様子はない。
そしてアラゴルンに再び顔を寄せると、こう囁いた。
「でも、二人は起きちゃってますがね」
一瞬の内にレゴラスの透き通る様な碧い瞳が、左右に動く。
左手には、フロドの横で座ったまま眠る、灰色の魔法使いがおり、右手にはこちらに背を向けて横になっているボロミアがいた。
アラゴルンの表情が、凍り付いて行く。
「ホント、あなたは可愛いですね。意地でも私のものにしたくなってしまう」
レゴラスはさも愉快そうに笑いながら立ち上がる。
同じようにアラゴルンも起き上がる。
「レゴラス」
いくらか厳しい声音で、エルフの名を呼ぶ。
「さて、今日はこれ位で我慢しておきますよ。おやすみ、エステル」
そう言うと、ボロミアに歩み寄り、「交替の時間ですよ」と声を掛け、再び森の中へ消えて行った。
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初めのイメージは全然違ったのにー。, |