「天の羊」-4-

「その民族特有の呼び名で知る人は殆ど有りません。…その民族は『生まれ変わり』と言うのを信じては居なかったそうです。その代わりに『人は死んでも再び帰って来る』と信じられ、その遺体はミイラと言う形で保存されたとか…。まっ、それは如何でも良い事なんですけどね」
誰かが玄関を開ける音を聞いたリーブは、静かに立ち上がった。
「欲しい物は有りますか?」
「………。…無い」
シャッと軽快な音を立て、リーブはカーテンを開けた。星空が広がって居る。
「本当に無いんですか?彼方の欲しい物を何でも差し上げる事が出来ますよ?」
「…本当に?」
「本当に」
深く頷きながら、リーブが何かを含んだ笑みを浮かべた。
「…あれ」
「はい」
「俺に取っての『・・・』が欲しい」
「良く星の別称を覚えてらっしゃいましたね」
子供を撫でる様に、リーブがルーファウスの髪を撫でる。
「はぐらかすなよ。何でも暮れるって言っただろ」
「はいはい。…レノ、中に…」
カチャッと開いた扉の向こうから、レノの赤い髪が見えた。その向こうに…。
「リーブさん。連れて来ました」
「ご苦労さん。ルーファウス様、御所望のものです」
流れる黒髪がルーファウスの瞳に飛び込んで来た。
レノとリーブに促される様にゆっくり、ゆっくりと部屋に足を踏み入れる男を、ルーファウスは見詰めた。
「ツォン!」
ぐっと肩を押さえ付けられ、ルーファウスはベッドに押し戻される。
「ルーファウス様。欲しい物を差し上げる絶対条件は、『安静』です。お忘れ無く…」
リーブがルーファウスとツォンの間を阻み、声を放つ。
「ツォン、お前もまだ傷は癒えていない。分かってるな?」
「ああ」
ツォンの返事に、リーブがすっと立ち上がる。ぽんっと肩を叩いてリーブはツォンに耳打ちした。
「限界は10分。それとお前、ルーファウス様に取っての『星』だと…」
笑いを噛み殺しながらレノと共に出て行ったリーブを、ツォンは一度振り返った。
「ツォン、本当にツォン?」
後ろからの声にツォンはすっとベッドに向き直る。
「そうです。私もあの意地悪な部長に助けられました。傷が深かったので、今迄ずっとレノのマンションに監禁状態だったんですよ」
動かし難い手を動かし、ルーファウスはツォンの髪を一束握った。
「助けられた時、夢を見ました」
「…俺も今、夢を見てた。ツォンに初めて合った時と…」
静かにツォンがルーファウスに近付く。
「彼方を初めて抱いた時の、星の話を…」
ツォンはルーファウスと深く唇を重ね合わせた。
「『天の羊』の話をした夜の事を…」
二人の声が蕩ける位に重なり合うと、夜空の満天の『天の羊』が瞬きもせず、優し気に二人を包み込んで行った。


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