■butterfly-4-■
羽に瞳を持つ蝶は、敵から身を守ると言うが、この蝶の瞳は獲物を捕らえて放さない。
何度見ても、吸い込まれそうになる。
「…アラゴルン」
レゴラスは首筋に触れている指先を、頬へと滑らせる。
肩を抱くアラゴルンの腕に力が籠る。近付く唇を享受する為、僅かに顎を上げ、薄らと唇を開く。
啄む様な口付けを交わしながら身体を抱き締められ、体重を掛けられると、アラゴルンの背中に回す腕に力を込める。
そして身体を横たえられた。
「レゴラス、暖めてくれ」
「えぇ、喜んで」
アラゴルンはレゴラスの首筋に顔を埋め、レゴラスは与えられる快感に、甘い声を上げた。
こうなったのは、成り行き上の偶然なのか。それとも、全て彼の思惑通りなのか。
腕の中で声を上げ、行為を受け止める姿からは窺い知る事は出来なかったが、ただ言える事は、この美しき蝶は、アラゴルンの心の一部に入り込んだのだ。
純朴さや従順とは違う、この甘美で切ない誘惑で。
「アラゴルン…もっと、もっ…と下さい…」アラゴルンが目を覚ますと、麗しのエルフの姿はそこには無かった。
服が掛けてあった木の枝にも、彼の服は無くなっている。
体温はすっかり戻っていたから、風邪をひく心配は無くなったが、あれだけ愛し合った後で、人が眠っている間にさっさと一人で戻って行かなくても、と少し彼の気ままさに怒りを覚える。
レゴラスが改めて火を焚いたのだろう。焚き火にはまだ火種が残っていた。
いつまでも裸のままでいる訳にはいかないので、行為の痕跡を落として身支度を整える。
そこへレゴラスが戻って来た。
その右手には兎が二羽。左手に自分のではなく、アラゴルンの弓矢が握られている。
「あぁ、起きましたか」
「それは?」
アラゴルンはベルトを締めながら、顎で兎を指す。
「これですか? 食料兼裏工作ですよ。あなたの手柄にしてあげますから」
アンドゥイルの横に、手にしているものを全て置く。
前屈みになった為、まだ結ってない金糸の様な髪が顔に掛かり、レゴラスはそれを気だるそう掻き揚げた。
その何気ない仕種でさえも、舞の一つなのか。
「髪は結わないのか?」
「結いますよ。ただ、一人ではやれないので、いつもサムに手伝って貰っているのですよ」
レゴラスは自分の弓矢を拾い上げると、それを背負う。
「サムに? それは知らなかった」
「彼は手先が器用ですからね。それに彼にちょっとした相談事があるんですよ」
企みを隠した笑みをアラゴルンに向けると、「お先に」と野営地へ戻って行った。
――間もなく夜が明ける。
昨夜、殆ど寝てません。朝5時近くまで、こいつを携帯に打ち込んでいたからです。時間を忘れて、打ちまくっていました。 |