PUBCRAWL

名称:デビル8 場所:神奈川県藤沢市(小田急六会)今はありません   予算:3000円
 私が会社の寮を出てこの藤沢に引っ越してきたのは,7年位まえのことです.当時は六会という駅名でしたが今は六会日大前と今年の8月20日から改名され駅前もずいぶん綺麗になりました.当時は駅前のロータリーと線路沿いに数軒商店と2つのスーパーがるだけで,まだ周囲にはキャベツ畑やいちごの農園なども残るところです.この駅前に意外にもショットバーが一軒ありました.

 ここは自宅から一番近いショットバーになるなと思い,階段を上がり扉をあけました.中はブラックライトでマスターはオレンジ色のスーツに黒のワイシャツ,はさみの形のネクタイピンをしていました.テレビが4台積み重ねられてなにやらビデオが流れています.実に怪しげなお店でした.おまけにお店の名前が「デビル8」というまたちょっと意味の分からない怪しい名前,すっかり不安になってしまいました.普段なら迷わずカウンターに座るところ,思わずテーブルに座ってしまいました.

 ニコニコしながらマスターが注文を取りに来ました.その口調は女性的でもしかしてこのマスターは…かと思わされ更に不安になりました.何がお薦めかときくと,
「なんと言ってもお薦めはトイフェルスクロイター(正しい名前はトイフェルクロイター・フォイエル・リーケン:オーストリアのリキュール,50度)ですね,このお酒の名を訳すと『悪魔の媚薬』といいます.ウッヒヒヒ(怪しげな笑い)あとグレッチャーアイス(同じくオーストリアのリキュール,50度)『氷河の氷』などはいかかでしょう.」相変わらず,ニコニコしている.とりあえず飲んだことのないお酒を勧められたら飲んでみる主義なので順番に飲んでみることにした.
「このグレッチャーアイスというのはどうやって飲んだらいいんですか?」
「小さなグラスにいれて,火をつけて飲むのが一番です.」(笑っている)
「じゃ,それを」
と注文するとマスターは踊りながらグラスをテーブルの上に置き,お酒を注ぎました.そして.ポケットから大げさな動作でマッチを取り出し,片手で火をつけようとした直後,火のついたマッチが私の体めがけて飛んできました.危ないところ間一髪で身をかわしました.マスター
「ちょっと失敗しました.スイマセン.ではもう一度.」
私は,念のため席から立って火をつけるのを見ていました.今度は成功.そしたら手で蓋をして火を消せの指示.早くしないと熱くなっちゃうとのこと.マスターやってくれと頼むと,あわててマスター実施.火を消した後グラスが手にひっついて結構熱がってました.なかなか,話をしてみると面白いマスターでした.見かけほど怪しくないということが分かったので時々行くことにしました.

 カクテルを作る動作も独特です.使用するシェーカーは金色で,ボトルを開けたあとキャップを放り投げてから蓋したり,いちいちやることが大げさです.何回かに一回は天井にあてたり,取り損ねて床の上の蓋を探し回ったりして,結構ズッコケています.

 ある時,オリジナルのカクテルの話になったとき,いいのがあるとマスターが言い出しました.それはリゾラバ(リゾートラバー)というカクテルでブルーハワイのようなトロピカル系カクテルをもとにカルピスを入れたものです.つまり,これはカルピスのキャッチコピーに「カルピスは初恋の味」というのがありましたが,リゾート地での初恋の味ということで,リゾラバと名付けたそうです.なかなか,面白いことを考えるものです.

 ちょうどそのころはJリーグが発足したころでしたので,マスターは各チームカクテルを考案中でした.まず最初にできたのがマリノス(地域がら)で,青,白.赤のトリコロールをプースカフェ風に重ねたカクテルでした.次がベルディ,これはグリーンバナナ(グリーンはベルディのチームカラー,バナナで南米ブラジルをあらわしているとのことです.)というリキュールをベースに最後にラモスをといってレッドチェリーを入れるものです.ある時,店にいくと,
「ついに浦和レッズが完成しましたよ,飲んでみて下さい.」
ここのオリジナルのカクテルは説明を聞くと面白いのですが,結構飲み干すのがつらい場合が多いのが難点です.極めつけがこのカクテル.カンパリを牛乳で割ったものの中にキュービックアイスが3つ,この三つのキュービックアイスの位置を入念に調整して私の手元に.このアイス三つは三菱のマークを表しているとのこと,味最悪,クレームを付けると,
「でしょ,そこがいまいち弱いレッズ.人気のでないレッズを表しているんですよ.」
と本人は得意げでした.これにつきあう私も私です.

 実はこのマスターの本職は美容師で,はさみのネクタイピンは美容師の証.彼は昼間は3店舗の美容院を構えているなかなかのやり手で,夜は遊び半分にショットバーを経営していたものです.つまり,怪しげな雰囲気も本人が半分楽しんでいたのです.ただ,昼夜の過労がたたり体調をくずし(顔から吹き出物が出たりしていた)夜の仕事はあきらめざるをえなくなりました.なかなか,面白いバーで場所によっては大うけしそうな内容だったのに残念です.マスター体に気をつけて…

予算:スタンダードなカクテル3杯とおつまみ一品程度で記載しているつもりです.

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