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NoillyPrat

名称:NOILLY PRAT 場所:藤沢市(JR藤沢駅)   予算:4000円
 バイオリンの教室へ向かう道に新しいバーの看板を発見しました.藤沢駅のまわりには比較的バーが多く私にとっては嬉しいのですが,お店にとってはなかなか厳しいところだと思います.
 そこは,新しく建ったビルの2階で,道路に面した階段を上がると美容院の隣にあります.ガラスの扉の中のエントランス部分左にはクローク,中央には木の壁の長い廊下があり,バーの様子は見えません.なんか高級そうな感じで,一瞬躊躇してしまいましたが,とりあえず奥へ入ってみることにしました.中にはいると廊下のおくからはピアノのBGMが聞こえてきます.つきあたりのカウンタの中には,女性のマスタがひとりいるだけでした.まだ,開店したばかりのせいか,私の他にはお客さんもいません.
 落ち着いた雰囲気にほっとして,ラスティネールを注文しました.差し出されたグラスは,綺麗なもようが刻まれたものでした.飲んでみると,とてもドライなラスティネールでした.おそらく,今まで飲んだ中で一番辛口に仕上がっていました.ラスティネールは自分でも作るカクテルなので,滅多に外ではたのみません.自分もスコッチを多めにしてドライに作るのですが,お店によってはウイスキーとドランブイを1:1(NBAはこのレシピ)にするので甘すぎることがあり,ここなら大丈夫と思えるところでしか頼まないのです.何で初めて入ったお店でいきなりお願いしたのか今考えても不思議ですが,なんか予感させられたのでしょうか?
 BGMに耳をやると,かかっているのはバッハのピアノ曲,この癖のある演奏はグールドでした.バーのBGMは圧倒的にジャズが多いのですが,ここはクラシック音楽専門のようです.バロック音楽を中心に,フジ子ヘミング,ヨーヨーマの演奏でピアノ,チェロ,リュートの音色を聴きながらお酒を頂くというのはなかなか落ち着きます.

 さて,お店のNOILLY PRATというのは,ベルモットの銘柄をそのまま使ったものです.ベルモットというとイタリアのお酒という印象がありますが,NOILLYはフランス産のベルモットです.お店の名前にするぐらいですから,このベルモットにこだわりがあるのだろうと,最後の仕上げにベルモットを使用したカクテルのギブソンをお願いしました.ところが,そこで使用しされたのはCINZANOというイタリアンベルモットでした.
 「NOILLYは使わないのですか?」
ときくと,ここのお店ではマティーニを最高にドライなカクテルと考えており,普通はマティーニにしか使わないとのことでした.ギブソンも十分ドライでとてもおいしく仕上がっていましたが,マティーニは次回のお楽しみということになりました.
 あらためて,マティーニを目当てにお店に出かけてみました.ここでの作り方は,以下のとおりです.オリーブをカクテルピンに刺してリキュールグラスに入れておきます.氷をいれたミキシンググラスに水を入れて軽くステア(バースプーンでかき混ぜること)します.そこで冷やされた水は,美しい柄のはいったガラスの薄いタンブラに注がれチェイサ(お酒の合間に飲む水のこと)となります.そのあとNOILLYをミキシンググラスに注ぎ軽くステアし,先ほど準備していたリキュールグラスに注ぎオリーブを浸します.ジンはBEEFEATERを使い軽くステアした後NOILLYをほんの少し加えます.ステアしたあとカクテルグラスに注ぎ,NOILLY漬けのオリーブを添えてできあがりです.ドライでとてもおいしいマティーニです.「いい仕事している.」という感じでしょうか.
 学生時代の仲間が私の家に遊びに来たとき,おいしいマティーニを飲ませるお店で飲みたいということになり.男4人で押し掛けました.そして,ひとりがマティーニを頼むと,「僕も」「僕も」…と4杯のマティーニが注文されてしまいました.さあ,このレシピで4杯を作るのは大変です.
 「ちょっと時間がかかってしまいますけどよろしいですか…」
と順番に作られていきました.おいしいマティーニを飲みたいということで来たのですが,なんか意地悪をしにきたみたいになってしまいました.マスタも,
 「一度に4杯のマティーニを作ったのは初めて…」
と言っていました.一緒に言った3人は,ここのマティーニにとても満足していました.

 最近は,カウンタも埋まってすっかり繁盛しているようです.彼女のつくるしっかりしたお酒にお客さんが集まってくるのでしょう.ここのお店のカクテルはいずれも,ドライぎみに作られます.切れ味のよいお酒が飲みたい方におすすめです.

予算:スタンダードなカクテル3杯とおつまみ一品程度で記載しているつもりです.

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