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MrBar

名称:Mr.Bar 場所:藤沢市(JR藤沢駅)   予算:4000円
 会社に入社して一年目のころ,“帰りのロッカーで同期の新入社員と会うと飲みに行く”というのが暗黙のルールになっていたことがありました.あるとき,ロッカーで同期のひとりに会うと,
「この前藤沢に,カウンターの中が全員女性のショットバーを見つけたんだよ.それが,外から見たんだけどみんな綺麗なんだ.ただ,お店の名前が怪しいんだよネ.Mr.Barっていうんだ.もしかしたら,ニューハーフのお店かもしれない….」
と言い出しました.話をきくと二十歳代の女性らしき人が5,6人で接客してくれるカウンターだけのショットバーらしいのです.
「それじゃ,本物の女性かどうか調べに行こう.」
ということになり,お店に乗り込みました.

 お店につくと先ず看板のチェック,金額的には,チャージが700円,カクテルが一杯700円から,と一般的な価格設定になっています.全面ガラス張りの窓から中を覗くと確かに綺麗な女性が4,5人カウンターの中で仕事をしています.そして,覚悟を決めて中に入りました.みんな可愛くてどう見ても女性にしか見えません.とりあえずお酒を注文することにしました.そのころは,ショットバーにはまだ慣れていないなかったため,ちょっと勝手がわからずビールかなにかを注文したと思います.そのときの店員さんの声は女性そのものでした.
「どうみても,本物の女性だよね.」
「ニューハーフだったら,もっと化粧濃くないかな〜.」
「ちょっと,男か女かきいて見なよ.」
「そんな,『あなた女性ですか?』なんてきけるかよ.」
そんな,こそこそ話が二人の間で始まりました.そのうちお酒の力をかりてか,じゃんけんで負けたほうが,質問することになりました.
「すいません,ここの店員さんは,みんな女性ですか?」
「はァ〜」
「いや,ここMr.Barっていうお店の名前なんですけど.もしかしてニューハーフのお店かなとか思って…」
カウンター内爆笑,すると女性店長が
「ときどき,そういう心配をされる方がいらっしゃいますよ.でも,全員正真正銘の女性です.」
二人,顔を見合わせて,
「みんな本物か〜.よかった,よかった.」
一気に力がぬけた,二人はすっかり飲み過ぎて,酔っぱらって寮に帰りました.

 それから,一時期,ロッカーで会うとこのお店に通う時期が続きました.このころから,カクテルを飲み出すようになったのかもしれません.そのころ,よく私の相手をしてくれたのがアキ(仮称)さんで,映画の話などでよく盛り上がっていました.そうしているうちに,今度,映画にでも行こうという話になりました.アキさんの希望は今月中にということだったのですが,入社して2年目のころでちょうど面白い仕事が任されていたときだったので,そのときは断ってしまいました.次の月行ってみると,アキさんは退職していました.話をきくと,横浜の某デパートの下着売場に就職したとのことでした.それで,先月中と言っていたということが分かりました.一度,その下着売場にいってみましたが,下着売場はどうも歩くのが照れくさくて結局,会うことはできませんでした.なんとも残念な出来事でした.

 その後,しばらくMr.Barには行かなくなってしまいました.現在は移転してカウンターだけのお店からテーブル席も増えています.数年前,久しぶりによってみると店長は2代目になっておりスタッフもすっかり変わっていました.でも,お店の雰囲気はそのままです.
「なにか,適当なカクテルを作って下さい.」
とお願いしたときに出されたカクテルがブルームーンです.私の好きなタイプを2代目店長は見事にあててくれました.それ以来,また時々よせて頂いています.現在,ここではその月に合わせてお薦めカクテルを用意しています.ある月,ドライカクテルの特集でした.知らないものばかりでしたので順番に飲んでみました.その中で,気に入ったカクテルがリーワードというもので,ラム,カルバドス,ベルモットのロッソを用いたものでロックグラスにシェイクして注がれます.
 今年の誕生日には,「バイオリン頑張って下さい」の店長のメッセージ付きでバースデーカードが届きました.

予算:スタンダードなカクテル3杯とおつまみ一品程度で記載しているつもりです.

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