PUBCRAWL

名称:B♭ 場所:藤沢市(JR藤沢駅)   予算:3500円
 バイオリン教室の近くにショットバーがあり,機会があったら行ってみようと思っていました.近くだといつでも行けると思うせいか,そう思ってから3年くらい経ってしまいました.ある時,思い出したようにそのお店に行ってみると,そこは思った通りのところでした.落ち着いた雰囲気のお店では,バーでの楽しみを分かっているお客さんが一日の羽を休めに止まり木にとまっています.広めのカウンターには止まり木に最適な位置に真鍮のバーが取り付けてあります.
 お店にはいると,まず小さめのカップに一杯のコンソメスープがサービスされます.最近,ショットバーでチャージを取るところは少なくなってきましたが,このお店も例外ではありません.それでも,スープが一杯サービスされます.これは,正真正銘のサービスで,胃に負担をかけないようにというマスターの心使いによるものなのです.なんともにくいサービスから始まりました.
 はじめて,隣の席でご一緒したお客さんは,おしゃれなワイシャツを着た髭の似合う中年の男性でした.隣の女性と楽しそうに話をしていましたが,私が一人でいるのに気づくと話を振ってきてくれました.どうも,サックスを演奏されるそうでアマチュアのジャズバンドで活躍されているようです.仕事のある私たちにとって趣味の楽器練習に時間がとれないことを悔しがっていました.その点についてはバイオリン(かなりわたしのほうはレベルは低いのですが)で私も同様の悩みを抱えているので,話が盛り上がり,
「演奏で足をひっぱっちゃうと,バンドのメンバーに迷惑かけちゃうんだ.」
「全然進歩しなくて,バイオリンの先生に申し訳ないんですよ〜.」
といった調子で会話が進みます.そうしているうちに,自分が飲んでいたLAPHROIG(スコッチ・ウイスキー)を勧められました.ついつい,自分の好きなお酒は相手に勧めたくなるのもお酒のみの人情です.
「こいつは是非ストレートで飲んでください.」
言われたとおりに,私も一杯頂くことにしました.このお酒を別のお店で飲んだときにピート炭のサンプルをもらった話や,そのサンプルをポケットに入れて忘れていてあるときポケットに手を突っ込んだときに驚いた話,15年ものを飲んだときの感激など,このお酒にまつわるエピソードを聞かせて頂きました.このお客さんも私と同類のようで,実に楽しい時間を過ごすことができました.実は,このとき隣にいた女性も奥さんではなく,この時初対面で話が盛り上がっていたのです.
 B♭はお酒好きのご夫婦の絶妙なコンビで経営されています.正統派のバーでありながら,なんとなく家族的な雰囲気もかもし出しています.新しいお酒が入ったときに試飲する二人の様子はなんともほのぼのとしたもので,印象にのこる光景でした.ある時,マスターに
「最後の一杯に,それを飲んだら気持ちよく寝られるやつを…」
とお願いすると,フランシス・アルバータというカクテルを作ってもらえました.このカクテルは以前,ロックスタイルで飲んだことなどを話すと,このカクテルはバー・ラジオというお店で創作されたものであることなどを教えて頂けました.バーのマスターは決しておしゃべりであってはいけません.そこのお客さんの好きそうな話題を必要最小限の言葉で表現してくれる,そんな会話が楽しめるお店です.
 ところで,ここでサービスされるスープ,それだけ飲んで帰ってしまうお客さんがいたらどうするのだろう…なんて野暮なことを考えてはいけません.

予算:スタンダードなカクテル3杯とおつまみ一品程度で記載しているつもりです.

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