欧州で大ブレイク!
本格スポーツスクーターの10周年記念モデルです!

 

基本スペック

全長×全幅×全高
シート高
軸間距離
車両重量
原動機種類
気筒数配列
総排気量
内径×行程
最高出力
最大トルク
始動方式
燃料タンク容量
燃料供給方式
タイヤサイズ(前/後)
2,195mm×775mm×1,445mm
800mm
1,580mm
222kg
水冷・4サイクル・DOHC・4バルブ
並列2気筒
499cm3
66.0×73.0mm
38PS /7,000rpm
4.6kgf・m/5,500rpm
セル式
15L
FI
120/70-15/160/60-15

 

■世界的に認められた、オートマチックスポーツ
  2000年秋、突如としてデビューしたヤマハ「TMAX」。それまでのスクーターの概念を覆し、スポーツ性能を第一・
 快適性能を二の次とした、YZFシリーズに倣った同社らしいコンセプトを引っ提げて登場したそのバイクは、外観こそ
 スクーターでありながら、エンジンやフレーム・サスペンションなど、一般のスポーツバイクに準じた設計が盛り込まれ
 た意欲作。「何もスクーターにそこまでスポーツ性能を追求しなくても…」と、当時はマスコミで騒がれはしましたが、
 市場(特に祖国・日本)の反応はイマイチだったと記憶しています。
  しかし!欧州で販売が開始されると、その走行性能は正しく「ホンモノ」であることが次々と報告されます。
 それまでの大型スクーターで当たり前だった「グニャグニャ」とした走行感覚はなく、ストリートスポーツバイクと
 比べても遜色ないコーナリング性能は世界中で高評価を受け、一躍人気モデルとなります。
  元々輸出車であり、日本では逆輸入モデルとしてデリバリーされていましたが、2003年のから国内仕様が販売
 され、「タンデムツーリングも可能なイージースポーツ」として、TMAX人気は不動のものになります。

  2004年では大掛かりなマイナーチェンジが実施され、二代目となります。全車FI化され、タイヤサイズの変更や
 ラジアルタイヤの採用など、外観こそ小変更でしたが中身は大幅グレードアップ。環境にも優しいスポーツスクーター
 として進化を遂げます。

  2008年には初のフルモデルチェンジを実施。フレームをCFアルミダイキャスト製とし、シャシー性能を向上させ
 るとともにエンジン特性を変更。スタイルを一新して、次世代TMAXの歴史が始まりました。

  そして、2009年。
  TMAXが生誕して10周年となる2010年モデルとして、全身ホワイトボディの10周年記念モデル「WhiteMax」が
 発売となります。2010年6月の限定受注生産で、数々のスペシャルパーツが装着されている、ファン垂涎のモデル
 に仕上がっています。

  ここではこの「WhiteMax」を紹介しつつ、3代目TMAXを徹底レポートしたいと思います。
 なお、先代モデルについてはこちらをご参照ください。

 
写真は2008年モデルとしてデビューした、3代目TMAXの標準仕様。
先代に比べてシャープなデザインになり、軽快なイメージを与えてくれます。

 

ディテール チェック


  シャープになったサイドビュー。
 ややマジェスティのテイストが感じられますが、
 ウィング形状のサイドパネルやウィンカーなど
 TMAXを印象付けるフューチャーはしっかり継承
 されており、従来からのファンも納得のスタイル
 となっています。
  ボディカラーは「ブルーイッシュホワイトカクテル」
 という、ヤマハ車定番の青味がかった白色。
 10周年記念車専用色で、標準車にはない独自
 カラーとなっています。


  ヘッドライトは従来型に比べて大型化。テール
 ランプ形状もイメージを残しつつ、よりシャープな
 デザインとなっています。が、テール周りだけは
 先代モデルのほうが好き!と思うのは私だけ?
 (何だか昨今の原付に見えてしまうんですが…)
  撮影車のリアキャリアはオプションパーツで、
 通常は装着されていません。

  ヘッドライトはマルチリフレクター・ハロゲンと
 なっていますが、ワイズギアから販売されている
 HIDキットを装着すれば、ヘッドランプまで真っ白
 になります。
  ウィンカーも大型化され、クリアタイプレンズを
 採用しています。北米仕様は法規上の関係で
 R1のような別体式となっていますが…う〜ん。
 

  リアのウィンカーもクリアタイプになってますが
 先代同様、テールランプと一体化したデザイン。
 形状自体も大きくなり、被視認性が向上したの
 は言うまでもありませんね。
  ナンバー灯はテールランプと別体になってい
 るのもトピック。バイクのそれはコスト低減の為
 テールランプと兼用となる場合が多く、ブレーキ
 を掛けるとナンバーも明るく照射…と、安っぽく
 感じることがありました。しかしTMAXは問題
 ありませんね!

  シートはゆったりサイズですが、スポーティな
 操縦性を確保するため、一般のスクーターより
 着座位置が高め。これは先代も同じでしたが、
 新型はシート形状が見直され、若干ではありま
 すが足付き性が向上しています。
 (先代は身長170cm未満の人は辛かった…)
 シート前方はフレームが通っているため、乗り
 込む際は跨ぐのに一苦労です。スポーツバイク
 のように後ろ回しで跨ぐとカッコいいかも(爆)。

  新型はステップ部分にステンレス製のヒール
 ガードが装着されており、高級感の演出に一役
 買っています。随所に施されたカーボン調装飾
 は、10周年記念車専用アイテムです。
  因みにTMAXの燃料タンクはシート前のこの
 位置にあり、跨ぐ際には大きな壁になります。
 しかしこれも重量配分を最適化するための処置。
 普通のスクーターではないのです。

  光の映り込みの影響(ヘッポコカメラマンで
 申し訳ない…)で見辛いですが、インパネ周り。
 中央にスピードメーターが鎮座し、その下の
 液晶部分にはデジタル式のタコメーターとオド
 /トリップ/時計が表示されます。
  左側は水温計、右側は燃料計を装備。 光って
 いるランプは、イモビライザー動作確認ランプ。

  イグニッションキーをONにした状態で、写真の
 ように液晶画面が表示されます。タコメーターが
 やや見づらいですが、スクーターですのであまり
 重要視することもない!という見解でしょう。
 個人的にはタコをアナログ、スピードをデジタル
 表示にしてもらいたかったなぁ…。
 

  ナイトビューはこんな感じです。
 10周年記念車は名前の通り、メーター照明も
 白色で高級感を演出しています。
 標準車は下のようなアンバー色で、指針は白。
 こちらも決して悪くないですけどね。
 

  ハンドル左側のスイッチ類。
 普通のバイクと同様に、ディマー・ウィンカー・
 パッシング(ディマーの奥)スイッチが鎮座。
 ヤマハスクーター定番のパーキングブレーキも
 しっかり装備。スクーターの使い勝手の良さは
 失われていません。

  ハンドル右側は、キル・ハザード・ホーン
 スイッチを装備。ヤマハ車のスイッチ形状は
 人間工学に基づいて良く考えられており、
 とても使いやすいと思います。

  ハンドル右下の収納スペース。高速のチケット
 を入れるのに便利な、カードスロット付き。
 因みに蓋をあけるオープナーも、サテンメッキ
 処理が施されて高級感抜群です。

  ハンドル左下にも収納ボックスがあります。
 こちらはカードスロットがないのですが、容量
 的には左側と大差ありません。
 どちらも施錠はできませんので、バイクから離
 れる際は貴重品の取り忘れに注意しましょう!

  燃料タンクが前方にあるため、給油口もシート
 前に装備されています。スタンドのオニーサンが
 入れづらいので、給油時はバイクから降りたほう
 が良さそうですね。

  ヘッドライトは先代同様、ロービーム時は右側
 が点灯し、ハイビーム時に両側が点灯する仕様。
 ライトユニット上部にポジションランプが内蔵され
 ていて、個性の演出に一役買っています。
  「ロービーム時の片側点灯がイヤ!」という方
 は、DIYで両側点灯することも可能だとか。


  足回りも本格的。
 フロントは15インチラジアルタイヤが装着され
 (先代モデルは14インチでした)、ブレーキも
 ダブルディスク。スーパースポーツに倣って
 軽量ホイール&キャリパーも惜しみなく投入。
 普通のスクーターでは考えられないほどの
 充実ぶりですね。


  リア周りは基本的に先代のキャリーオーバー。
 通常のスクーターはスイングアームとエンジン
 ユニットが一体化されるのが通例ですが、TMAX
 はエンジン別体として、バネ下荷重の軽減に
 注力しています。サス本体はスイングアームの
 前方に横置きにマウントされ、低重心化が図られ
 ているのが凄い!

  年々厳しくなる騒音&排ガス規制に合わせて
 マフラーも大型化する傾向が見られます。
  TMAXも例にもれず、ややアンバランスに感じ
 られるほどデカいサイレンサー(爆)。ただし
 メッキパーツやデザインを工夫することにより、
 見事デザインにマッチしています。
  ノーマル状態でのエンジンサウンドは、先代と
 ほとんど同じで静かですので、朝早くエンジンを
 始動しても近所迷惑にはならないでしょう。

  スクーター「らしく」、シート下のトランクも装備。
 ただし運動性能を重視している関係で、容量は
 やや小さめで、フルフェイスタイプのヘルメット
 を入れると一杯…(爆)。まぁ、取り外し式の
 リアキャリアもオプションで用意されていますし、
 実用的には大きなハンデにはならないでしょう。
 (むしろ積載性を重視するなら、他のスクーター
 を選ぶべきですぞ!)
  先代までは前側ヒンジの前開きでしたが、
 写真のように後ろ開きに変更になり、使い勝手
 が向上しています。


  10周年記念モデルは、ベースモデルに対して
 高級感を演出する数々の特別パーツが装着され
 ているのが特徴です。
  ・専用ボディカラー&フロントパネル
  ・専用カーボン調パーツ
  ・専用MOSキャリパー
  ・専用エンブレム
  ・専用シート地
  ・専用メーターカラー
 …などなど。
 因みにエンジンスペックや足回りといった、性能
 面でのモディファイは行われていません。

 

■ライディング・インプレッション
  ぱっと見はコンパクトに見えますが、実車の横に立つとかなりのボリュームを感じます
 数値的にみるとあまり変わっていない車体サイズですが、新型デザインは先鋭的なものになった影響でそう感じるのかも
 知れません。しかしセンターにドーンと大きなトンネルがあるため、跨ぐ際にかなり気を使います。またシート高もあるため、
 足を後方から回して乗るにもかなり辛いです。まぁこの点はスポーツ性能を重視した結果ですので、オーナーとしては割り
 切る必要があるかも知れませんね。ただし降車しての取り回し性は秀逸で、幅広いハンドルやシート後方のグラブバーの
 お陰でとても楽ちん。一般的なバイクと違って左側レバーがブレーキとなっているのも、スクーターならではの美点ですね。

  イグニッションをオンにしてセルを回すと、エンジンはすぐに目覚めます。サウンドは控えめで、とても500ccとは思えない
 程の静寂性を保っています。エンジン本体はキャリーオーバーのため、その音質も先代と全く変わりません。今回の試乗
 は慣らし中のため、回転数リミットが4,000rpm。大きく空ぶかしはできませんでしたが、回せば先代同様のスポーティさを
 感じることができるのでは?と期待してしまいます。

  アクセルを開けて発進。先代と比べて下からパワーが出ている感じで、さほど大きくアクセルを捻らなくてもエンジン
 回転数は上がってくれます
。結果、発進はとてもスムーズに行えます。先代はやや高速域寄りの味付けがされており、
 高速道路などで追い越し加速をする場合は手を持ち変える必要があるほどアクセル操作が大変でした…。しかし新型は
 大丈夫。アクセルを抉らなくてもしっかりパワーがデリバリーされます。


  コーナリングは申し分なし。先代同様、接地感あふれるロードインフォメーションがライダーに伝わってくるため、重い
 車重を意識することなくコーナーに飛び込んでいくことができます
。ヤマハ車ならではの「リアステア」も健在で、同社の
 バイクに慣れている人は問題なく乗りこなすことができると思います。フロントタイヤがサイズアップしている関係か、
 リアが若干ねっとりとした感触を伝えますが、これはサスペンションのグレードアップを施せば解決できると思いますし、
 乗り手の好みの問題かもしれません。ただ先代と比べてピーキーさは影をひそめ、スクーターらしくなったと感じるのも
 事実です。
刺激が足りなくなった、と言えば語弊になりますが。先代よりもマイルドに、誰でもTMAXの良さを感じられる
 ようになった、と表現するのが適切でしょうか。10年の時を経て「大人になった」と納得すべきでしょう。

  以上、慣らし運転という条件下の中でのインプレッションですが、慣らしが終わって全開走行ができるようになったら、
 改めてレポートしたいと考えてます。

 

 

【おまけウンチク】 バイクの車重って…
  新型TMAXの車重は222kg。これを見て「先代より30kg近く増えてる〜!」とお嘆きの方もいらっしゃるのではないで
 しょうか。実はこれ、最近車重表記方法が「乾燥重量」から「車両重量」に変更になったことが起因しています。前者は
 バイク本体の車重であったのに対し、後者はオイルや冷却水などの走行に必要なものを装備した状態での表記と
 なり、より実際の重さをイメージしやすい点から、「車両重量」が標準化してきています。とは言えこれらの装備類は
 概ね20kgもないはずですから、TMAXの場合は約10kgは増えている、と言えますが…。
  そこでなんしぃが声を大にして言いたいのは、近年のビッグスクーターに見られる「重量増」の傾向。500ccである
 TMAXはまだ許容範囲内であるにしても、特に250ccクラス勢は目に余る状態です。

排気量クラス
車   名
車両重量(kg)
250cc ホンダ・フォルツァ
201
ホンダ・フェイズ(標準仕様)
180
ヤマハ・マジェスティ
188
ヤマハ・マグザム
201
スズキ・スカイウェイブTypeS
214
スズキ・ジェンマ
210
400cc ホンダ・シルバーウィングGT400
249
ヤマハ・グランドマジェスティ
221
スズキ・スカイウェイブTypeS ABS
223
401cc以上 ホンダ・シルバーウィングGT600
249
ホンダ・DN−01(680cc)
269
ヤマハ・TMAX(500cc)
222
スズキ・スカイウェイブ650LX
277

 比較的にヤマハ車は総じて軽量ですが、これはアルミ鋳造フレームを使用しているところが功を奏してると思われます。
 しかし…やはり250ccで200kgを超えてしまうのは、やはりユーザーの選択肢を狭めているのではないのでしょうか?
 往年の250ccネイキッドバイクでも乾燥重量で140〜160kgでしたから、フルカウルで覆われているスクーターという点を
 考慮したとしても…ちょっと重すぎます!因みに1990年代に存在した「ZZ-R400」は190kg後半で「重たいバイクだなぁ〜」
 と思ってましたが、装備重量を考慮して現代のスクーターと並べてみたら、スカイウェイブ250とほぼ同じ!?
  確かにボディ剛性や安全性を確保するとなると、ある程度の重量増はやむを得ないと思いますし、限られたコストの中で
 理想的なパッケージを設計するのも難しいと思います。しかしボディの軽量化は取り回し性の向上のみならず
 「走る・曲がる・停まる」に代表される「クルマの基本性能」を総じて向上させ、燃費性能など環境にも貢献できる重要な
 ファクターのはずです。市場の縮退化でメーカーにとってはなかなか難しい現状だと思いますが、だからこそ革新的な
 パッケージ開発が求められるのではないでしょうか。
 日本の二輪メーカーは、世界に誇れる技術と信頼を持っています。メーカーの奮起に期待したいと思います。

 −追記−
  実は上記の点に着目したバイクが、2009年に登場した「ホンダ・フェイズ」です。
  軽量化と装備の簡素化を行うことにより、環境性能を向上させようとした意欲的なバイクとして、ワタクシは非常に
  高く評価しているのですが…ニューフェイス+スタイルも革新的過ぎて、市場での反応はイマイチ…(涙)。
  モノづくりって、難しいですね。

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