栄光の2スト(50cc編)

2003/08/27 (Wed)

 

2スト…。その言葉が聴かれなくなって来ている。原付スクーターでは未だ現役であるが、ことスポーツバイクになるとその存在は
希少。新車で購入できるのは今ではヤマハRZ50のみという寂しい現実。しかし中古市場ともなるとそれなりにタマ数があり、
ものによってはプレミアが付いているのもありますが、良心的なショップでは意外と安く買えたりしますね。
ということで、2スト初心者というヤングな方を対象にして、2ストマシンについてうんちくをたれてみたいと思います。

■「2スト」って何?
「ツースト」と読みますが、人によっては「2サイクル」などと呼ばれます。「2スト」は「2ストローク・エンジン」の略。一般的なエンジン
は「4スト」(4ストローク・エンジン)と呼ばれ、内燃エンジンの基本行程「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」を4クランクのサイクル(行程)
で行うものを指します。対して「2スト」はこれらを2クランクで行うため、こう呼ばれています。「4スト」は出力を得る(爆発させる)ため
に2回クランクが回転しますが、「2スト」は1回で済みます。つまり同排気量・同回転数であれば「2スト」の方が高出力を得られる
訳ですね。

■「2スト」の利点・欠点
上記の説明でもありましたが、「2スト」は「4スト」エンジンに比べて高出力を得る事が出来ます。また「4スト」のような複雑なバルブ
機構が必要なく、構造上シンプルにまとめられるため軽量です。数年前までレース車と言えば「2スト」だったのは、これらの利点が
あったためですね。
逆に欠点は、ランニングコストがかかることです。「2スト」は「4スト」のようにシリンダー内をオイルで潤滑しないため、ガソリンと同時
にオイルを噴射しなければなりません。さらにその構造上オイルが燃焼しますので、ガソリン代とオイル代が必要になるわけです。
また燃費も悪く、「4スト」に比べると2割〜4割は悪化します。まあその分パワーが出ているので仕方がないのですが…。
さらに有害な排気ガスが出てしまい、首都圏や住宅街では迷惑な存在になってしまいます。「2スト」が消えてしまったのは「排ガス
規制をクリア出来なくなってしまった」というのが最大の原因です。もちろん電子燃料噴射制御や触媒技術を応用すればこの問題も
クリアできますが、これによる重量増・コスト肥大(=車両価格の上昇)化を考えたら、継続生産を断念せざるを得なかったそうです。
今日「2スト」のスクーターが生き残っているのは、重量増加やパワー削減を無視できる存在だったからです。
(まあスクーターは需要が高く、コストをかけて開発しても元が取れるという前提がありましたから…)

■2ストバイク・インプレション
「2スト」バイクは主に50cc〜250ccの排気量で、各メーカーから沢山販売されていました。

メーカー
モデル
コメント
ホンダ
NS50F
NSR50
NS-1
NSR80
NSR250R/SE/SP
RS125R(市販レーサー)
RS250R(市販レーサー)
NSR250(ワークス)
NSR500(ワークス)
意外とラインナップが少なめ。2ストより4ストのほうがラインナップが多い
のはやはりホンダ=DOHCというイメージが強く出ていると思いますね。

王者NSR250Rは1987年に登場し、1997年まで生産されました。
'88〜'90まで毎年モデルチェンジを繰り返し、'94で最終形となりました。
SPはSportProduction、SEはSpecialEditionの略で、前者はレース対応を
前提にマグホイールや乾式クラッチ、フルアジャスタブルサスが奢られてました。後者はマグホイールを外されている以外は前者と同装備。
ヤマハ
YSR50
TZR50
TZM50
YSR80
TDR50
TDR80
TZR125
TZR250/R/RS/SP/SPR
TDR250
SDR200
TZ125(市販レーサー)
TZ250(市販レーサー)
YZR250(ワークス)
TZ250M(ワークス)
YZR500(ワークス)
豊富なラインナップから判るとおり、「2ストのヤマハ」と呼ばれていました。
レーサーレプリカの歴史は浅いですが、素直なハンドリングは同社の持ち
味で現在も変わりません。なおここのラインナップから外れていますが、
往年の名車「RZ250」は「ナナハンキラー」と呼ばれ、親しまれました。

TZR250は1986年に登場し、名車RZの後継車&市販レーサーTZのリアル
レプリカとしてデビュー。独創の後方排気レイアウトを経て、最終型である
'95年式(TZR250SPR)で幕を閉じました。特にSP仕様は「公道走行可能
なTZ」と評され、王者NSRに肉薄するパフォーマンスを見せてくれました。
スズキ
RG50ガンマ
Wolf50
RG125ガンマ
RGV250ガンマ
Wolf
RGVガンマ250(ワークス)
RGVガンマ500(ワークス)
レプリカの元祖とも言えるメーカー。2ストのガンマは勿論、4ストのGSX
も他メーカーに先立ってレプリカモデルを販売。
ということでラインアップも豊富…ではありませんが、これは派生モデルが
発生していないということの証。つまり生粋のレプリカ道を進んでいると
いうことですね。最終型の250ガンマはかなり速い!
カワサキ
KSR50
KSR80
KR-1S/R
KR250(ワークス)
2スト系レプリカは超少な目。というのもワークスがあまり積極的に2スト
GPに参戦しなかった?ただし4ストはZXR−7やZX−7Rが猛威をふる
いました。

唯一のレプリカ・KR−1は、独創的な「タンデムツイン」レイアウトを採用。
重心を低く出来るなどのメリットがありましたが、実際のレースでは成績を
残せなかったようですね。

■マシンインプレッション
それではここで、主な50ccスポーツバイク二台のインプレッションをば。

・NSR50(A−AC10)

  左:89年式 右:95年式
 ホンダがレーサー「RS」の技術をフィードバックして誕生させた「NSR」は、1987年に登場して大ヒットマシンとなりました。
 そのワークスマインドを手軽な原付クラスで…ということで登場したのが「NSR50」です。
 エンジンは兄弟車NS50Fの水冷エンジンで、50cc上限の7.2psを発生。スチール製のダイアモンドフレームは本格的なもので
 優れた剛性を確保しています。デビューから1年後のマイナーチェンジでフロントカウル形状を変更、スラントノーズ化されました。
 更にその4年後のマイナーチェンジではホイール形状を3本スポークからNSR250R譲りの6本スポークに変更しました。
 そしてその2年後の1995年でシートカウル形状を一新。シャープ&スリム化されてスタイルも精悍なものになりました。またこの
 ときにメーター意匠も変更し、よりレーシーに進化しました。
 乗り味は、小さなボディからくるタイト感がレーサーイメージを引き立て、軽量ボディと相まって元気に走ります。コーナリングは
 シャープ…とは言えませんが、振り回して曲がると言った感じでしょうか。サスのストロークが少なめなためちょっと路面が悪い
 場所だとぴょこぴょこして走りにくいですが、幸いにもアフターパーツが豊富なので自分好みのマシンに仕上げやすいですね。
 「ミニバイクレース」というカテゴリを確立したNSR50。絶版になった今でも数多くのファンに愛されています。

・TZR50/R(A−3TU)

  ※写真は欧州で販売中のTZR50。
 クラス初のフルサイズ・レプリカで1990年に登場したTZR50。基本コンポーネントはRZ50とTDR50を流用してますが、従来
 の50ccにはない風格を持ち合わせていました。エンジンはNSRほど高回転型ではありませんが、車重がやや重いため低速域
 ではやや扱いづらさ(特に発進時は特に気を使う…)があります。また初期型のTZR50は振動が多く、アイドリング時はもとより
 走行中はバックミラーがブレて見えないほど…(爆)。
 しかし一旦速度に乗ってしまうとその走りは軽快で、ミニバイクにありがちな寝かしこみにくさが無くコーナリングは秀逸。特に
 重心が既存の50ccスポーツバイクより高くてライダー寄りに設定しているため、マシンとの一体感が感じられます。
 後継モデルのTZR50Rは、シート形状を変更してよりスポーティ度を高めた上でエンジンをケースリードバルブに変更。従来型
 以上のスムーズな吹け上がりと低振動化を実現しました。またセルスターターを装着する事により実用性も向上しています。

以上、2ストマシンについてうんちくをたれてみました。
まだ中古車として入手する事が可能ですが、もう5年もしたら…。そう考えると、欲しくなっちゃいますね。
排気デバイスの進化が進んで、再び市場に2スト旋風が巻き起こる事を期待!