やって来た来た遊園地! 前編
そんなわけで俺達一行は遊園地にやって来た。
「うわぁ〜遊園地だ〜」
「見りゃわかるよ、あゆ」
園内を見渡して大きな目をきらきらさせて喜んでいやがる。
俺じゃなくても誰が見たって子供だよ、あゆは。
さっきまで機嫌が悪かったのに現金な奴。
「あゆ、おまえにとっては実にいいところだな」
「祐一くん、それどういう意味?」
「あゆは料金がすべて半額で良いなって思ったから」
「うぐぅ、ボク子供じゃないもん!」
「いやいや充分子供で通じるぞ、良かったなあゆ」
「うぐぅ、そんなの嬉しくないよ!」
やっぱりこいつって苛めちゃうんだよな〜俺、なんでかな?
「わるかったごめん、あゆはりっぱな高校生の女の子だ」
「ほんと?」
「ああ、だからあそこにも入れるよな?」
と、指先の方には必ず遊園地にある怪しい建物が建っているんだよ、これがな。
「うぐぅ!? やっぱり祐一くんの意地悪〜!!」
何があるがはみなさんご存じのお化け屋敷である。
さて他の方々は……?
「また無視している〜、うぐぅ」
ま、後でちゃんとフォローするとして今はほっとこう。
「遊園地ったら遊園地〜♪」
まだいたよここにも、子供が一人。
「おまえはいくつだ? 名雪」
「祐一と同じ年だよ〜」
全く、あゆと同じ表情して言っても誰が信じるか。
「でも、本当に久しぶりだわ遊園地来るのは♪」
「そうなんですか秋子さん?」
「ええ、名雪がまだ小学生の時以来かしら」
「そうなんだよ〜」
きっと頭の中は止まっているんだな、小学生のままで。
「なんか酷いこと考えてる〜?」
「気のせいだって」
「う〜」
名雪、うなっても小学生は小学生だって。
「あんまり気にするな、忘れろ」
「やっぱり気になるよ〜」
ま、ほっとくか。
「あ〜、無視した〜」
しつこいぞ、名雪。
「あはは〜、佐祐理も久しぶりです〜」
「……私無い」
さすがどこに行っても変わん無い上級生ペアだな。
ぷぷっ、しかし佐祐理さんはともかく舞が遊園地で遊んでるところは想像できん。
ぽかっ。
「何にも言ってないだろうが、舞?」
「……すまない」
「駄目ですよ〜舞、本当は祐一さんと来たことが嬉しいのに♪」
ぽかぽかぽかぽかぽか。
「きゃあきゃあきゃあきゃあ」
どうやらそうらしい、ぷぷっ耳まで真っ赤だぞ舞。
どかっ。
「ぐはっ」
い、今のはチョップはちょっと効いたぞ、舞。
「あははは〜、大丈夫ですか祐一さん?」
笑ってないで助けて下さいよ、佐祐理さん。
「…………」
そっぽを向いているが、まだ顔は真っ赤に染まったままだ。
しかし時々思う、舞って俺の考えが読めるんじゃないか?
ふっ。
舞、な、なんだ今の笑いは、まさか!?
あーやめやめ、あんまり深く考えないことにしよう。
「前に来た時っていつだったかしら、姉さん?」
「そうね、栞が元気だった時は良く来てたわね」
ふむ、この姉妹は普通の会話だな。
「なあ、香里」
「何、相沢くん?」
「香里ってメリーゴーランドって好きか?」
「恥ずかしくてこの年で乗れる訳ないでしょ」
あのな〜まだ俺達高校生だぞ、香里。
「私好きです、一緒に乗ってくれますよね姉さん?」
「何であたしが? 乗りたければ一人で乗ってきなさい」
「そんなこと言う姉さん嫌いです」
ふむ、これは結構いけてるかもしれない、よし。
「ほら香里、大事な妹の頼みぐらい聞いてやったらどうだ?」
「くっ、狡いわよ相沢くん! 妹をだしに使うなんて!」
「何言ってるんだ、俺は栞のことを思ってだな……」
「それじゃ祐一さんも一緒に乗ってくれるんですね♪」
うへえ、やぶへび。
「ばか」
ううっ、ひらがなで突っ込むな香里。
「あぅ〜乗り物がいっぱい」
「そうですね」
こっちはまるで親子みたいな二人だ。
「相沢さん、私そんなに老けていません」
「何も言ってないぞ俺?」
「目がいってました」
いかん、こっちも舞に近い奴かもしれん。
「そうか、気のせいだろ?」
俺は天野の方を見ないようにした、あぶないあぶない。
「祐一! おなかすいたぁ〜」
「おい真琴! 朝飯あれだけ食ってまだ足りないのか?」
「だって空いたものはしょうがないでしょう!」
全く、こいつは別の意味でもっと子供だ。
「知らないぞ、そんなに食って自分が肉まんになってもな」
「あぅ〜……」
ふん、そんなことがあるわけないだろう。
「まあ、おまえが肉まんになったら俺が食ってやるから安心しろ」
「あぅ〜それだけは死んでもいや!」
「だったらお昼の時間まで待っていろ」
「あぅ〜祐一の意地悪〜」
涙目になってシュンとした真琴を天野が頭を撫でて慰めていた。
「相沢さん、あんまり苛めちゃ可哀想です」
「あのな、一般常識を言ってるだけだぞ俺は?」
「それでもです」
やっぱりお母さんだぞ…おおっ、睨んでると結構迫力あるな天野って。
ここは逃げるとするか。
「おいあゆ、どこに行こうか?」
「ええっ、ボクと一緒にいてくれるの?」
さっきまでいじけていたのにもう元気いっぱいだな、あゆ。
「無論だ、朝言っただろう今日は一日付き合うって」
「ホントにホント? 嘘じゃないよね?」
「あのな、俺だって男だ約束は守る」
「うん、信じるよ、だって祐一くんだもん!」
にこっ。
ぼーっ。
う、なんかめっちゃ可愛かったぞ、思わず見とれちまったぜ。
ホントにころころ表情が変わる奴だな、見ててあきないっていうか。
「じゃあね、あれ乗りに行こう!」
「よし、いくぞあゆ」
「うん! ってそっちはちがうよ〜」
「いや、間違ってないぞあゆ」
俺はあゆを引っ張ると目的地に着いた。
「いや〜! やっぱり祐一くんの意地悪〜」
「すいません、高校生一人小学生一人」
俺は買ったチケットを入り口の係員に渡すと、そのまま中に入っていった。
もちろんあゆの手をしっかりと握って。
予想を裏切らず中は真っ暗だった。
「うぐぅ、祐一くんそこにいるよね?」
俺は何もしゃべらない。
「うぐぅ、何かはなしてよ〜祐一くん」
よし、ここはひとつ手を離してみるか、俺って悪党♪
すっ。
「うぐぅ、祐一くん何処にいるの〜?」
ふふっ、思い切り手を振り回していやがるな、すぐ横に立っているのにな。
どかっ。
「ぐはぁ!?」
うぐぅ、俺の大事なところにあゆの振り回した拳がヒットしたぜ、ううっ。
「ああ、そこにいたんだ祐一くん!」
ううっ、見事なアッパーだったぞ、あゆ。
「どうしたの祐一くん?」
「な、なんでもない」
「今度は手を離さないでね、ボクすっごく怖かったんだからね!」
「解った、二度と放さないよあゆ」
放したらこっちの命が危ないって。
俺は真っ暗であることに感謝して妙なカッコでそのまま出口まで歩いて行くことになった。
もちろん最後まであゆの手を握ったままで。
「あ〜あ怖かった、もう二度とはいんないからね!」
「ああ、俺も入りたくなくなったよあゆ」
「?」
もう少しで別の世界に行くことを考えるところだったぜ。
「今度こそボクの乗りたいものに乗ろうね!」
「わかった、約束は守らないといけないからな」
「うん、じゃあいこう」
しかたがない、またパニックになって殴られたらたまらんからな。
ここはおとなしくあゆに付き合うとするか。
てなわけで俺はそれから退屈というか背中が痒くなると言うか男にはつらいものだった。
まあ、あゆの笑顔を見ているとそれもいいかなんて思ってしまった。
いかん、今日はなんだかあゆが凄く可愛く見えるぞ。
もしかして俺って……。
い、いかん! 怖いことを考えてしまったな、俺。
俺はロ○コンじゃないはず、絶対、たぶん、一応、きっと大丈夫なはずだ。
待てよ、あゆって一応は高校生だから問題はないか……。
だからそうじゃないって! うぐぅ。
「どうしたの祐一くん? ぼーっとして」
「何でもない、気にするな」
「そう、それならあれ乗ろう」
「おう、何でも来い!」
しまった、簡単に安請け合いなんてするもんじゃない。
今、あゆと一緒に乗っているのはお馬さんがぐるぐる回る奴だ。
「相沢くん月宮さん、お似合いよ」
五月蠅いぞ香里、名前を呼ぶんじゃない。
しかもニヤリと笑ってやがる、うおっ、写真なんて撮るんじゃねぇ!
うん? 栞の奴なんか口をぱくぱくさせているぞ、なになに。
う・そ・つ・き・は・き・ら・い・で・すって、うぐぅ。
しかもジト目になって睨んでるよ、勘弁してくれ。
一応、あゆとの約束が先だからな。
「ねえ祐一くん、ボク凄く楽しいよ♪」
「ああ、そうかよかったな」
「うん!」
なんか幸せいっぱいの顔で喜んでいるあゆを見てると、俺もまんざらでもない気がする。
ま、いっかぁ〜。
そして午前中はそれぞれ楽しんだところでお昼にすることにした。
さすがに俺もつかれたので、黙ってお弁当を食べることにした。
しかし秋子さんて良く短い時間でこれだけのものを作れたよな。
そんな沢山の料理をみんなで食べて、俺は少し休むことにした。
ふあぁ〜眠い、寝よう。
ぐうぅ〜。
「祐一くん?」
「zzz……」
「ねちゃったの?」
「zzz……」
「う〜ん、本当に寝てるみたい」
「zzz……」
「ねえ祐一くん、ボク今日はとっても楽しいよ」
「zzz……」
「だから、ありがとう」
「ぐうっ」
後編に続く!