かおりんの恋は止まらない♪






 「祐一……」

 「ん、 どうした香里?」

 祐一の名前を口に出すと胸の動機が激しくなり頬も赤く染まっていくのが解る。

 「祐一……あたし、あたしもう駄目、自分の気持ちが抑えられないの!」

 そう言ってあたしは祐一の胸に飛び込んだ。

 戸惑いながらも祐一はあたしをしっかりと支えてくれる。

 顔を上げ、祐一の顔を見つめるとあたしは自分の気持ちを告白した。

 「あたし、祐一のこと……好きよ」

 「香里……」

 祐一の顔がゆっくりと近づいて来るのに会わせて、あたしも瞼を静かに閉じていく。

 何も聞こえない……何も見えない……でも祐一の鼓動が感じられる。

 あたしの唇に祐一の息が掛かる。

 そして……。






 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜!!」






 「はぁはぁはぁはぁはぁ……」

 な、な、なんて夢なのよ!?

 よりにもよって……何であたしがあいつに告白しなきゃなんないのよ!?

 あまつさえ、あいつとキスなんて……。

 無意識に自分の唇に指を当てていることに気がつくと、慌てて離す。

 「どうしたんですか姉さん? 朝から大きな声を出して」

 「な、なんでもないのよ栞」

 「姉さん顔が赤いですけど……」

 「だ、大丈夫よ心配しないで」

 栞が出ていった後、私は側にあった手鏡を見ると自分の顔を映した。

 うっ、これじゃまるでリンゴだわ。

 とにかくベッドから降りると洗面所に行って顔を洗うと元に戻ったので

 朝食を食べて学校に行くことにした。






 いつも通り登校している途中で、ばったり相沢くんと名雪と出会った。

 「よう、香里」

 「おはよう香里〜」

 「お、おはよう」

 相沢くんの顔を見た瞬間、夢のことを思い出して顔が赤くなっていくのが解る。

 あ、あれは夢なのよ……そう、夢なのよ! なのに何でドキドキするのよ?

 「あれ? 香里顔が赤いよ〜」

 「どうした香里、風邪でも引いたか?」

 言いながら祐一があたしの顔を覗き込む……これって夢の時の感じに似てる。

 目が勝手にあいつの唇を見つめてしまう。

 「い」

 「い?」

 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」

 ばしっ!

 思わず平手で相沢くんの顔をひっぱたいてしまった。

 「いててて……いきなり何すんだ香里!?」

 「スケベ! エッチ! 近寄らないで〜!!」

 そのまま、あたしは相沢くんの前から逃げるように学校へ駆けだした。

 「祐一」

 「な、何だ名雪? その目は」

 「そうだったんだ、私ちっとも知らなかったよ〜」

 「俺は何もしてないって!」

 「……うそつき」

 「何でそうなるんだ!」





 がたん。

 教室に入って自分の席について胸を押さえる。

 「あ〜あ、叩いちゃったわ」

 どうしよう?

 相沢くん、怒っているわよね。

 「はぁ……」

 机に肘を突いてため息をついてると、相沢くんと名雪が教室に入ってきた。

 あ、こっちに来る……。

 「おい香里!」

 「あっ」

 「何でいきなり叩くんだよ?」

 頬に手形をつけて怒った顔してあたしを睨んでる、当たり前よね・・・。

 「何で黙ってるんだ、香里?」

 気がついたら相沢くんの顔があたしのすぐ目の前にある。

 ぼっ!

 たちまち自分の顔が熱くなる、きっと真っ赤になっている。

 ぴた。

 するといきなり相沢くんがあたしの額に手を当てる、その手がちょっと冷たくて気持ちがいい。

 「香里……お前熱があるじゃないか!?」

 あ、もう駄目……気が遠くなってきた……何にも考えられない……。

 ばたっ。

 「おい香里? 大丈夫か、おい!」

 あたしを呼ぶ相沢くんの声だけがいつまでも耳に残っていた。






 「う〜ん……」

 目を開けると見知らぬ天井だった。

 「目が覚めたか?」

 「あ、相沢くんっ!? な、なんでっ?」

 相沢くんが見ているところに視線を動かすと……、ええっ!?

 あたし、相沢くんの手をしっかりと握っている、ど、どうして?

 「一応言っておくけど、香里が離さなかったんだからな」

 「う、うそ?」

 「嘘じゃないって、教室のみんなも見てたぞ」

 そ、そんな……みんなに見られたなんて恥ずかしくって教室に戻れないわ。

 シーツで顔を隠そうとした時、相沢くんが話し掛けてきた。

 「なあ香里……」

 「な、なに?」

 相沢くんが笑いながらあたしの顔を覗き込むように見つめている。

 「この手、まだこのまま?」

 あっ!

 離そうとしたら相沢くんがぎゅって力を入れて握ってきた。

 「ちょ、ちょっと相沢くんっ!?」

 「そうか、香里はそんなに俺と手を繋ぎたかったのか……」

 「な、何言って……」

 「しょうがないなぁ〜このままにしとこうか」

 なんで、なんでなんでそうなるの〜?

 あたしが何も言えなくなっているとさらに顔を近づけてくる。

 「さてと、朝の事でいろいろ香里に聞きたいことが有るんだけどなぁ?」

 「え、そ、それは……あの……」

 「それに時間はたっぷりと有るしな……」

 「あっ」

 「香里」

 相沢くんの顔がゆっくりと近づいて来るのに会わせて、あたしも瞼を静かに閉じていく。

 こ、これって夢と同じだわ……。

 何も聞こえない……何も見えない……でも祐一の鼓動が感じられる。

 ああっ、もうだめ……。

 私の唇に祐一の息が掛かる。

 栞、名雪……ごめんね……。

 そして……。






 KISS。






 つづく。